輪島塗「不安な明日」 被害10億円? 職人「生活が…」 | ニコ生観測所&その他の画像庫
能登半島地震の最大の被災地、石川県輪島市の地場産業「輪島塗」が壊滅的な打撃を受けている。輪島塗は製品になるまでに半年から1年かかる。店頭の商品だけでなく製造過程で傷がついて商品価値がなくなったものも多く、営業再開が困難な店舗も目立つ。現状では被害総額の算定もままならない状態だが、地元組合では、少なくとも10億円にのぼるとみている。

 「上塗り段階ではほこり一つ付いても商品にならず、すべて一からやり直さないといけない。まだ片付けの途中だが、生活がかかっている。2、3日中にも仕事を再開させたいが…」。輪島塗の工房や販売店が軒を連ねる輪島市河井町の上塗り職人、吉田宏之さん(45)はそう漏らす。

 吉田さんの工房では上塗りした作品数十個や、1桶(3.75キロ)30万円もする漆の入った桶が3つもこぼれ、大きな被害が出た。

 輪島塗は、椀(わん)や膳の硬さを増すため粉末状の黄土「地の粉」を漆に混ぜて何度も塗り重ねるのが特徴。江戸時代から全国の豪農や商家で使われるようになり、明治以降は蒔絵(まきえ)や沈金の装飾が施され、現在も最高級の漆器として名高い。

 同じく河井町の「稲忠漆芸堂」本店では、店舗にあった椀や一輪挿しなどの漆器1000個以上が倒れ、在庫品や製造途中の漆器も多くが破損した。同店常務、桐地孝助さん(56)は「建物の補修や傷ついた漆器の塗り直しなど、ざっと見積もっても2000万円以上。県や市から補助が出るような話も聞いていない。早く店を再開させたいが、今後の観光客の動向も心配だ」。

 土産物店「高華堂」でも、ガラスケースが割れて陳列中の漆器数十個が床に落ちて割れた。在庫置き場も割れた漆器が散らばっており、手がつけられない状態。経営者の土橋善弘さん(64)は「幹線道路が復旧しないと観光客も来てくれない。道路の復旧に合わせてぼちぼち片付けるしかない」と力なく話した。

 漆器の工房や販売店約160店が加盟する輪島漆器商工業協同組合事務局長の隅堅正さん(49)は「個々の工場で半製品にダメージがあると、次の商品が出来上がるのが半年先になる。目に見えないダメージが大きい」と指摘する。

 傷ついた品は修理や手直しが可能だが、新しい商品を作るのと同じ手間ひまがかかる。しかも、輪島塗の売り上げはピークだった平成3年の180億円と比べると、昨年は約70億円と半分以下に落ち込んでいるという。

 隅さんは「今回の地震は売り上げダウンの流れに追い打ちをかけるようなもの。市内の店の被害状況を取りまとめる余裕はまだないが、組合に加盟している店舗だけでも地震による被害額は10億円にのぼる」とみている。

(2007/03/27 16:02)