それで話が終わってしまうのもアレなのでもうちょっと書きます.長岡亮介さん(元駿台のトップ講師で大学教授,専門は数学史)の講演に行ったときに長岡さんは「数学の勉強で一番大事なのは定義を理解することだ」と仰っていました.これは長岡さんの著書などにも所々に書いてあります.
さて,世間一般の高校生には実は「定義が何か分からない」という人が結構います.何が定義で何が定義じゃないかの区別がつかないということではありませんよ.「定義(ていぎ)」という日本語を知らないのです.これを読んでいる人の中には定義がどういう意味かをまったく知らないなんていう人は一人足りともいらっしゃらないと思うので信じられないと思います.しかし実際に結構いるんですよ.高校生にもなって定義という日本語をそもそも知らない人達が.しかも数多く.
まず辞書の意味から見ましょう.
ていぎ13【定義】
(名)スル
① ある概念の内容やある言葉の意味を他の概念や言葉と区別できるように明確に限定すること。また,その限定。「用語を―する」
② 〘論〙ある概念の内包を構成する諸属性のうち,本質的な属性を挙げることによって,他の概念から区別しその内包を限定すること。普通,定義は当該概念(例えば「人間」)の最近類(この場合,人間の最近類は「動物」)と種差(この場合は人間を他の動物から区別する「理性的」という種差)を挙げることによって成り立つ(この場合「人間は理性的動物である」が定義)。〔西周(にしあまね)「百学連環」(1870~71年)に,英語 definition の訳語として載る〕
だそうです.2つ目の意味は小難しいので取り敢えずいいでしょう.1つ目の意味だけ知っていれば十分です.ようは定義っていうのは「それが一体何であるのかを,誰が見ても同じ認識が出来るようにしっかり決めておきましょうね」っていう『決め事』のことです.
数学ではこの「定義」が非常に重要です.何故なら数学は「演繹的な」学問であるからです.演繹と帰納の違いとかはさすがに長くなるので割愛します.
さて,ここまできてやっと高校数学のお話になります.僕より非常に賢い数学専門の人で「こいつなに間違ったこと言ってんだ」と思ったらコメントやTwitterで文句を言って下さい.
次のうちどれが定義でどれが定義じゃないか分かるでしょうか.
①余弦定理(a^2=b^2+c^2-2bc×cosA)
②ベクトルの内積(a・b=|a||b|cosθ 上の→は面倒なので省略)
③点(a,b)を通る傾きmの直線の方程式(y-b=m(x-a))
④三角形の内角の和は180°
①は名前が余弦「定理」ですから定義じゃないっていうのは分かりますね.これは教科書にも証明が載っています.証明が載っているものはすべてそれより下位の命題から数学的に導かれる結論ですので定義じゃありません.このような物の中で特に有用性の高いものを「定理」と言います.
②は定義です.(少なくとも高校数学においては)内積の等式は何かから導かれるものではありません.
③は定義ではありません.公式です.証明は数学2の教科書に載っています.
④は証明を見たことがあるかは分かりませんが定義ではありません.証明されるべき命題です.もっともちょっとむずかしい話もありますのでこれは深入りしないことにしましょう.
ということで定義,決まり事は②だけです.本当にこの区別がつかない人っていうのは結構いるんですよ.公式をただ暗記して解くような数学しかしてないとそうなるのでしょうか?
高校レベルでも問題を解くときに(少なくとも大学入試レベルの問題を解くときであれば)まず「定義はどうだったかな?」そして次に「定義から簡単に導ける性質はなんだろう?」そこから「現時点で言えることは何か?」という思考を経るはずです.
ですから,普段の勉強の中でも「何が決まり事で何が決まり事じゃないか」を常に意識するようにして下さい.そして定義でないものはどのようにして導かれるのかを確実に理解すること.
さらに定義には「心」があります.定義っていうのは勝手に決まったものではなくて「そう決めると物事が上手く行くから」定義するのです.このような定義の「心」まで理解出来るようになれると素晴らしいですね.
勉強頑張ってください.






