シャフトカットにまつわるお話しと問題・リベット編 | フラーのエレキメンテナンス note

シャフトカットにまつわるお話しと問題・リベット編

モーターガイドのエレキは現行はXシリーズですが

ずっとFW、TE・TRシリーズがありました。

今更スペックをご説明するほどではありませんね。

なのでFW・TRの基本的な構造のお話しとそれにまつわる問題です。

 

まずはシャフト(インナーコラム)は2種類あります。

こちらがFW及びTR後期型用シャフト。

純正ではFW、TR後期型も共通の長いネジのシャフトです。(左側)

弊社ではTR後期型のシャフトカットを行う場合ネジの長さは後期専用に短くしています。(右側)

短くなくても機能的には問題無いですけどね。

見た目の問題ですが取り付けるとこんな感じです。

組んだら見えませんけど(笑)

 

そしてもう1種、
TE及びTRの前期、中期、後期(前半)はネジではなくリベットで組み付けます。

純正はハンドコンと共通な為、

上の小さい穴がTE/TRのリベット用の穴です。

下の大きい穴はハンドコンのボルト用の穴です。

 

ドラムカップリングとシャフトを組み付ける際に使用する部品は

通常モーターガイド純正ステンレス製リベットです。

 

しかし、シャフトカットされたエレキを持ち込まれると

ほぼ確実にホームセンターで売っているようなこのタイプのリベットで組まれています。

余談ですが、分解する時にリベットの外し方をご存知ないのか?面倒なのか理由は分かりませんが

リベットを外す際にサンダーを使用しているためドラムカップリングが削られてしまっています。

組まれているのは、市販品のこのタイプ。

※こちらのリベットは素材(アルミ製)もサイズも違います。
写真用に手持ちのリベットを使用しましたが形状は同じタイプです。

お時間があればホームセンターで探してみてください。

このタイプはあってもモーターガイド純正タイプは売っていないと思います。

 

リベットの性質及び構造をご説明しますと

上が施工前、下が施工後(取り外した状態)

下側の外したリベットのフランジ部分(棒の様な物)を

上の新品と見比べていただくとフランジの右側(お尻側)が膨らんでいます。

シャフトエンドの玉が引っ張られ膨らむ事により皿までの距離が縮みカシメられます。
(外した状態なので皿は外れています。)

 

市販品とモーターガイド純正のリベット形状の大きな違いは、

市販品はフランジ側がフラットで

外(シャフト)側が円盤状に盛り上がっています。

市販のリベットは皿の面圧でとまります。

しかし、取り付ける穴の大きさとリベットの太さとの差があるとガタが出てしまいます。

その場合、リベットを止める皿の部分がフラットな為センターが出ず

そのままカシメてしまうとガタがある為センターからずれた位置で付いてしまいます。

 

かわって、モーターガイド純正のリベットは形状が逆です。

皿がフランジ側に向けて円錐状になっているので締めこむと、

フランジの皿よりも小さな穴に皿が引き寄せられるので

穴に対して皿の面で止まるのではなく

円錐状のため引っ張られるとにより穴との接点が均一になり

適性の位置で食い込み比較的センターが出ます。

すり鉢のような円錐状のものにボールを入れると

真ん中に行く原理の逆パターンのようなものです。

 

そして前記にも記した通り、

インナーシャフト側(内側)は玉が引っ張られフランジが丸く膨らむので

皿及びフランジの両側が穴のセンターに近い場所でカシメられます。

リベットのセンターが出ると言う事は両側が適正なトルクで引っ張られカシメられるので

しっかりと止まりリベットがゆるみずらくなります。

なので弊社ではモーターガイド純正リベットしか使用していません。

 

もし、市販品のリベットを使用する機械を得意とされない方や業者に尋ねられたら

穴の大きさが、「リベットとピッタリなのでセンターが出るから大丈夫」

とか言われるかもしれませんが

シャフトカットされたエレキの、このタイプのリベットで穴がピッタリだったのを見たことはありません。

そして、

「少しでも低価格でお客様にご提供したいから」と言う事もあるかもしれませんが

一度正確に施工したらリベットなんてそうそう打ち直ししません。

であれば多少金額が高くても、まともに機能する部品を初めから使用するのが適正であり

加工後に緩み、再度作業を行い結果リベット代より高額なお金を使って頂く必要は無いと考えます。

純正の1本の値段で市販品は十数本購入できると思います。

使用する側は何百本も使うかもしれないので安く仕入れられる方がお徳で都合が良いのかもしれませんが

使われる(ユーザー)側はわずか2本しか使いません。

ちなみに1本250円です(税抜き)、

シャフトカットの時は2本使用するので500円(税抜き)ですね。

安くて緩むか?少し高くても緩みづらい方か?判断するのは依頼するユーザーさんです。

 

ちなみにインジケーター(矢印)がずれてしまう原因の大半はこのリベット緩みです。

リベットが緩みドラムカップリングが首を振ってしまうからです。

 

たかがリベット。

でも、個々のリベットの特性を理解していれば簡単な事。

商売の考え方の違いはあると思いますが

純正品を買えないから、わざわざ取り寄せするのが面倒だから、

どこでも買えて仕入れ値段が安いから、とりあえずあったから、などなど

理由は様々あると思います。

個人で、ご自分のエレキの施工であれば良いと思いますが

お客様から代金を頂くのであれば、まともに機能しない物を使用するのは疑問です。

 

ドラムカップリングはもともと丸い為、

リベットを取り付ける場所が平ではありません。

市販品のリベットは平らな面でなければフランジ(皿部分)の面圧が適正に取れないため

施工直後は止まっていても使用していると緩む可能性が高いです。

穴の大きさ、位置が合っていなければ尚更の事です。

かわってモーターガイド純正は円錐状である為しっかりと止まります。

ここからはモーターガイドの設計者に確認した訳ではないので推測ですが、

アメリカ、エレクトリックモーターの2大メーカーの1つである

モーターガイドが設計しているものですから

自分も含め設計の素人が考えているほどチープな部品構成はしません。

所詮、個人レベルの知識で「あり物」を使用出来るのは機械の事、部品構成などを理解し

加工する物に対して適合するかどうか判断がついていないから出来る事だと思います。

「とりあえず形になっていれば良い」

そこには機械が正確に作動するための本質はありません。

今回のリベットの事もユーザーさんには判断材料の1つとして知っていただき

どう言う事が行なわれているのか?を

皆さんがご判断してくださいね。

 

シャフトカットしたTE・TRをご使用になられているユーザーさんは気になったら確認してみてください。

純正のリベットが付いていれば、リベットの特性を考えられて組まれていると思いますので

まずは一安心です。