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群雄割拠の戦国時代、当時の武家は家柄で評価される時代でした。なので、中世・戦国社会を生き抜くための政治的な戦略として、家系図を意図的に書き換えるということは家格が上がれば上がるほど、家柄に箔をつけるためにしらッと行われてきました。
天下人だった、豊臣秀吉や徳川家康も経歴詐称をしていたのは有名な話。
これまで、我らが伊達政宗様は「藤原氏の末裔」であるということが伝えられてきました。
その根拠とされるのは、おそらく次の出来事があったからなのでしょう。
大正13年に広瀬川の下流(現在の若林区南小泉付近)の畑から擬宝珠が発掘され、現在は仙台市博物館に保管されている本物の擬宝珠(市指定文化財)には、政宗の師である虎哉宗乙(こさいそういつ)和尚が選んだ格調高い漢詩とともに、はっきりとこう刻まれています。
慶長六年 辛丑臘月吉辰 藤原政宗
門士川嶋豊前守奉造
(慶長6年12月の縁起の良い日に、藤原政宗の家臣である川嶋豊前守がこれを奉り造った)
慶長6年(1601年)といえば、関ヶ原の戦いが終わった翌年で、政宗様が岩出山から仙台へと本拠地を移し、ゼロから新しい城下町を作り始めたばかりの時期です。
これから新しい国造りを始めるにあたり、領民や他国からの来訪者に対し、
「この街の主である伊達政宗は、単なる地方の戦国大名ではなく、都の高貴な藤原氏の血を引く名門中の名門である」ということを、城の玄関口である「大橋」で象徴的に示したかったのだと思われます。
大橋は仙台城の「大手門」へと直結する、領内で最も重要で、最も人通りの多いシンボルツリーならぬ「シンボルブリッジ」でした。そこに「藤原政宗」の名をゴールド(青銅)の輝きとともに掲げることの政治的効果は抜群だったことでしょう。
当時の日本において、朝廷から正式に官位をもらうような公的な場や、歴史に残るモニュメント(橋の擬宝珠など)に名前を刻む際は、名字(伊達)ではなく正式な「氏(うじ)」である「藤原」を名乗るのが最高級のステータスでした。
現代の歴史学では「伊達氏が藤原氏(藤原北家)の子孫であるという説は、後世に作られたフィクション(冒姓:ぼうせい)の可能性が極めて高い」と考えられています。
政宗様の生きた戦国時代や江戸時代には「伊達家は藤原氏の流れをくむ名門」と公式に主張されていましたが、これは当時の武将たちによくあった「家柄のハク付け(ブランディング)」の一環だったと推察されます。
伊達家の公式な系図(江戸時代にまとめられた『伊達世臣家譜』など)では、以下のようなストーリーになっています。
平安時代の公卿で、料理の神様としても知られる藤原山蔭(ふじわらのやまかげ)が遠い先祖。
その子孫の中村朝宗(なかむら ともむね)という武士が、源頼朝の奥州合戦(平泉の藤原氏を滅ぼす戦い)で手柄を立て、恩賞として陸奥国伊達郡(現在の福島県伊達市周辺)をもらった。
地名にちなんで「伊達」を名乗るようになり、これが伊達氏の始まり(朝宗が初代)となった。
では、なぜ「偽称(フィクション)」と言われるのか?
現代の歴史学者が当時のリアルタイムな記録を調べた結果、この系図にはいくつかの不自然な点や矛盾が見つかっています。
ポイントその1:初期の系図に「山蔭」の名がない
鎌倉時代や室町時代初期の古い系図や記録を見ると、伊達氏の先祖として「藤原山蔭」の名前は登場しません。時代が下るにつれて、後付けで山蔭の名前や、山蔭に繋がる不自然な家系図が書き足されていった形跡があります。
ポイントその2:そもそも「常陸(茨城県)の中村氏」の出自が謎
伊達氏のルーツは茨城県の中村(現在の筑西市付近)を本拠地とした武士団ですが、本来は藤原氏ではなく、その地域一帯を治めていた別の豪族(毛野氏や平氏など)の流れをくむ地元の在地勢力だったのではないか、という説が現在では有力です。
ポイントその3:京でのロビー活動が功を奏した
政宗様が生まれる100年ほど前(室町時代の中期)には、伊達氏は室町幕府への外交(巨額の献金など)を通じて、「奥州の伊達は藤原氏の末裔らしい」という噂を京都の公家たちに認めさせることに成功していました。政宗様はその恩恵をそのまま引き継いだ形になります。
まあ、でも結局のところ、我らが伊達政宗様が藤原姓であろうがなかろうが、残した功績や存在感、さらには今の時代の「キャラ立ち度」は文句のつけようがない事実なのですから。
伊達男は永遠に不滅です! !(^^)!
※昨今の歴史研究の進展は目覚ましいものがあり、過去の書物に記された史実や出来事などとは別の説が発表されたり、歴史認識が改められたりしている事も多く見受けられます。このブログで書かれたことは、諸説ある中でも多く語られることの多い部分を抽出して書かれたものであり、歴史認識や見解の確からしさを断定するものではありませんことをご理解頂きますようお願い申し上げます。