プラモ劇場版世界をかける少女 第9話
数々の修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、その世界には更なる強敵が控えていることも珍しくない。
エクスパンダー軍の猛攻に轟雷、鈴香、響子、ルミティアが次々と倒れ、翔子もアメインゴーストの手にかかろうとしていた。
そんな絶体絶命の状況の中、颯爽と現れたのは、ギアを纏いし剣道少女と高貴な美少女騎士が率いる少数精鋭の部隊だった。
レーヴェ「はあっ!!」
エクスパンダー「ふんっ!!」
トール「す、すげぇ…あの時と比べものにならない」
ネロ「お前もあいつの噂は聞いたことがあるだろ?」
トール「あ、ああ…それよりネロ。なんであんた」
ネロ「死んだのではないかって?ま、今でも生きているのが不思議なくらいだ」
エクスパンダー「はっ!なかなかやるな、お前」
レーヴェ「そっちこそ!久々に滾る戦いだぜ!」
エクスパンダー「…だが、ここまでだな。ある程度そっちの戦力を潰すことができたことだし、今回はこの辺にしておいてやるよ」
レーヴェ「おいおい、戦いはこれからだろ?」
エクスパンダー「次回に取っておいてやるって言ってるんだよ。じゃあな」
クイーンズガード「引くぞ」
ビアンコ「了解」
トール「隊長!」
クイーンズガード「…」
ネロ「隊長、ビアンコ、あんたらこのままエクスパンダーとして戦うつもりか?」
クイーンズガード「…今は、な」
トール「今はって…」
クイーンズガード「だが、忘れるな。いつか時は来る」
ネロ「そういうことにしておく」
ビアンコ「…」
橘花「…行くわよ、綾」
綾「あ、ああ」
ネロ「後ろから撃ったりはしない。行くなら早くいくといい」
橘花「…そうさせてもらうわ」
橘花「(もう会うこともないでしょう。さよなら)」
ネロ「さて、そちらの負傷者を連れて行かないと」
レーヴェ「ていうか、こいつら生きているのか?」
ネロ「どちらにせよ、ファクトリーアドバンスに…お、アーキテクトフレーム。いいところに」
ネロ「あちらのお嬢さん方は任せて…立てるか?トール」
トール「あ、あぁ…」
レーヴェ「けっ、ボロボロじゃねえか」
トール「…これくらいなんともない」
レーヴェ「強がるな。今のてめぇでは、エクスパンダーには敵わねぇよ。お前今度は殺されるぞ」
トール「…わかっている。そんなこと。そんなこと…!」
ネロ「あまりいじめないでくれよ、レーヴェ」
レーヴェ「現実を教えているだけだ」
ネロ「素直じゃないな、あんたも」
Ⅰ「さて、我が槍に貫かれたいのはどちらかな?」
Ⅱ「こちらの剣でも構わないぞ?」
ジェスター「…いや、やめておこう」
ジャッジヘッド「ジェスター、ボスから撤退命令だ」
ジェスター「こちらでも確認してる」
ヴェルルッタ「お、おい!帰るのか!?」
ジャッジヘッド「置いていくぞ」
ヴェルルッタ「ま、待って~!」
Ⅰ「撤退したか…」
ルミティア「…うっ」
Ⅱ「意識はあるようだな」
ルミティア「…あ、あなたたち…は?」
Ⅰ「少なくとも敵ではない。ファクトリーアドバンスまで送ろう」
フレズヴェルク「なんでボクの邪魔をするのさ!」
ドゥルガー「フレームアームズ・ガールが悪事に加担していると聞きまして。こうして私が馳せ参じたのですわ!」
フレズヴェルク「悪事?ボクはバトルをしているだけだ!」
ドゥルガー「悪事とバトルの区別がつかないほど、あなたはまだ幼稚なのですね」
フレズヴェルク「…なんだって?」
ドゥルガー「聞こえませんでしたの?まだまだ幼稚なのですわね」
フレズヴェルク「…誰が幼稚だって?」
ドゥルガー「あら、それは理解できますのね」
スティレット「あのドゥルガー、すごく煽ってる」
バーゼラルド「でも、あのドゥルガーの装備を纏っている。実力は相当なものだと思うよ」
フレズヴェルク「…ふん。今日はもういい。帰る」
ドゥルガー「間に合ってよかった…と、言える状況ではありませんわね」
あお「あ、あの…ありがとう」
ドゥルガー「礼には及びませんわ。それより、轟雷を早く連れて行きなさい。私は他の場所を回ってきますわ」
楓「やあっ!!」
楓「これが報告にあったアメインゴースト。なるほど、なかなか手強い相手ですね」
翔子「気を付けなさい。そいつは戦いが長引くと、敵の行動パターンとかを学習していくわ」
楓「では、ここで決着を付けます」
ベル「撤退した?」
楓「分が悪いと判断したのでしょうか」
ドゥルガー「エクスパンダーは撤退していきましたわ」
楓「!」
翔子「あんたは…」
ドゥルガー「外の負傷者はあなたで最後ですわね。皆さんファクトリーアドバンスに収容しましたわ」
翔子「…た、助か」
ベル「お嬢様!?」
翔子「ごめん…もぅ…限、界…」
楓「大丈夫。気を失っただけです」
ドゥルガー「とにかく、運んで差し上げなさい。あなたのご主人でしょ?」
ベル「は、はい」
迅雷「戦闘は終わったのか?」
アーキテクト「敵勢力は撤退したようです」
スパルタン「お、いいところに」
迅雷「なにやつ!?」
スパルタン「待て待て。俺は戦いに来たのではない」
アーキテクト「では何用で?」
スパルタン「お使いだ。これをレーナ少佐に渡しておいてくれないか?」
迅雷「これは?」
スパルタン「多分この中に入ってることで、悩んでいるはず。それを開けてみればわかる、とだけ伝えておいてくれ」
アーキテクト「…爆発物とかではなさそうです」
スパルタン「確かに渡したぜ。それじゃ、俺はこれで」
ロイヤルナイツの介入により、エクスパンダーは撤退。
ファクトリーアドバンス側は大きな損害を受けることになった。
その日の夜、警戒態勢の中、建物の修復や負傷者の手当てなどが行われ、ベルも負傷者の手当てに参加していた。
まどかたちはマスコミたちが殺到しているから、ファクトリーアドバンスに引き続き避難することに。
楓は成子坂から緊急の案件が入ったということから先に帰還し、ロイヤルナイツのメンバーも今日の所は退散することになった。
~病室~
翔子「…」
まどか「気が付きましたか?翔子さん」
翔子「あんたたち…帰ってなかったの?」
暦「目の前で大変なことになっているのに、私達だけ帰るわけにはと思いまして」
リツカ「と言っても、今ファクトリーアドバンス周辺にマスコミとかが殺到していて、下手に出ていくと捕まってしまうから、今日はここに泊まっていってと、レーナさんから提案されて」
まどか「でも何もしないわけにはいかないから、翔子さんたちの看病を申し出て」
翔子「そぅ…ありがとう。ところで、鈴香と響子を見なかった?」
まどか「…それが」
暦「隣のベッドにいます。でも」
リツカ「…2人共、もう」
翔子「…2人の容態は?」
暦「先生が言うには…脈なしって…」
リツカ「運び込まれた時点で、もう」
翔子「あの2人のことだから、スペシャルカードを使っていたはずだけど…保険が働いていないっていうの?」
3人「保険?」
翔子「そう。こういうことになった場合の保険があるのよ。聞こえているんでしょ?2人共」
鈴香・響子「………」
まどか「鈴香さん!?響子さん!?」
翔子「どうやら生きているわね」
鈴香「なんとか、というところでしょうか」
響子「私、あの後どうなったの…?」
暦「え、どういうことですか?2人共」
リツカ「あ、あたし先生呼んでくる!」
響子「翔子、うっすら聞こえたけど、保険って?」
翔子「2人のスペシャルカードには、ある保険がかかっているのよ。リバースドールっていう保険がね」
鈴香「リバースドール?」
翔子「致命傷のダメージを受けた時、一度だけ発動する蘇生方法。カードが身代わりになってくれるのよ」
鈴香「…致命傷」
まどか「カードが身代わりって、もしかしてこれのこと?」
翔子「あっちゃー見事に割れちゃってるわね」
鈴香「ごめんなさい、翔子さん。せっかくもらったカードなのに」
翔子「ううん。それほど相手が強力だったんでしょ?あたしの方こそ、満足が行く力を作り出せなくてごめん」
響子「そんなことないわ。今回はこれがなかったら、私たちは確実に死んでいたってことだしね」
翔子「同じのは作れる。というか、こういうことも考えて量産はしてある。けど、リバースドール機能を搭載しようとすると、1か月はかかるって出たから、正直搭載できていない。だから、二度目はないって思って」
鈴香・響子「…」
翔子「(あたしの方は発動しかけたけど…正直あのままだと首がもぎ取られてたわね。想像するだけでゾッとするわ)」
翔子「で、誰と戦ってたの?」
鈴香「エクスパンダーです」
翔子「…まさか、ボス?」
響子「ええ。レーナさんからあらかじめ資料で見せてもらっていたからわかったわ。あいつがボスよ」
翔子「まさか、2人の所に来ていたなんてね。スペシャルカードでも歯が立たなかったのか」
響子「…いや、スペシャルカードで歯が立たなかったんじゃない。エクスパンダーの戦闘技術の前に、私たちは敗れたのよ」
鈴香「…はい。組織の頂点に立つだけあっての実力者でした」
翔子「そう…」
暦「と、とにかく、今は休んでください。皆さんボロボロなんですから」
??「そうそう。そうでないと、治るものも治らないわよ」
??「あら、お姉さま。あちらの2人は」
??「あらあら?さっきまで生命反応がなかったのに」
翔子「ちょっとした保険が適用できたのよ。で、あんたたちは医者なのかしら?フレームアームズ・ガールのマテリアシロクロ姉妹」
シロ「私たちのことを知っているなんて」
クロ「初対面のはずなのにね」
翔子「こう見えても、ある程度の事情は把握している方なもんでね」
シロ「まあそれはさておき」
クロ「大人しく寝ていなさい」
響子「今はそうさせてもらうしかないわね」
鈴香「…そうですね。すごく疲れました」
翔子「あたしももうひと眠りしておくか…の前に、ルミアはどうしてるの?」
まどか「ルミアさんも無事です。今ベルさんが側についています」
翔子「そう」
シロ「どういうわけかわからないけど、とりあえず3人共無事と」
クロ「あとは…轟雷ね」
まどか「ナルミ…轟雷ちゃんは大丈夫なんですか?」
シロ「…正直今はわからないわ」
クロ「徹底的に叩きのめされた、という感じだったしね」
翌日
ユウ「あお」
あお「…」
リカ「あお、寝てないの?ダメだよ、ちゃんと寝ないと」
あお「…だって」
ユウ「轟雷が起きたときに、あおが倒れていたら、今度は轟雷が心配するわ」
あお「…止められなかった。轟雷が不調だって知ってたのに」
リカ「ばーぜたちも、何もできなかった」
ユウ「今のあたしたちでは、フレズヴェルクには敵わない。ただ目の前で轟雷が一方的にやられるのを見てるしかできなかった…!」
あお「スティ子…バーゼ…」
リカ「…ねぇ、このままごーらいが起きなかったらどうしよう」
ユウ「ば、ばかなことを言わないでよ。そんなわけ…そんなわけ…」
あお「…大丈夫だって!轟雷はちゃんと戻ってくる!私たちが信じなくてどうするのよ」
ユウ・リカ「…あお」
あお「私たちが知ってる轟雷は、強いんだから。だから、信じて待とう?ね?」
ユウ・リカ「…」
楓「おはようございます。あおさん」
あお「楓さん」
リカ「あ、かえでだ」
ユウ「そういえば、昨日の戦いにも駆け付けてくれたって」
楓「はい。昨夜はそのまま帰還しいてしまい申し訳ありませんでした。緊急の用が入ってしまって」
あお「そんな、助けてもらったのはこっちだから、謝らないでください。むしろ、こっちが感謝しないと。で、今日はどうしてここに?」
楓「昨日の戦闘に介入してきた団体から話があるということから、成子坂製作所代表として来ました。そろそろ時間のようなので」
あお「そっか…じゃあ私も」
ユウ「アホっ子は寝ること」
リカ「うんうん」
あお「えっ」
ユウ「今の状態だと、どうせ途中で寝るでしょ?話はあたしたちが聞いてくるから」
リカ「あおはまず休んで。体壊しちゃうよ」
あお「…じゃぁ、お言葉に甘えようかな」
~会議室~
レーナ「翔子さん、身体の方は」
翔子「一晩寝たら完治したわ」
レーナ「はぁ…あと、報告に聞いていましたが、鈴香さんと響子さんは」
翔子「あの2人ならリバースドールで一命をとりとめたわ。動くのはまだ厳しそうだったから、そのまま寝かせてきた。ルミアも様子を見に行ったら、ぐっすり寝ていたから、ベルにそのまま任せてきた」
レーナ「そ、そうですか…」
翔子「それで、話っていうのは」
ドゥルガー「私からいたしますわ」
翔子「あんたは昨日の」
ドゥルガー「その様子だと、大事ないようですわね」
翔子「ええ、おかげさまで。連れもあんたたちに助けてもらったって聞いたわ。昨日は助かった。改めてありがとう」
ドゥルガー「礼には及びませんわ。当然のことをしたまでです」
レーナ「…まさか、あなただったとは」
ユウ「なに?知り合いなの?」
レーナ「サンマグノリア共和国の名家の方です」
ドゥルガー「元、ですわ。レーナ少佐。それと、管制官ならもっとシャキっとしなさいな」
レーナ「…面目ありません」
翔子「名家ねぇ…名のあるところのお嬢様ってところ?」
ジャンヌ「ええ。申し遅れました。私は、ジャンヌ・ルドガー。ルドガー家の長女ですわ。こちらは、私の従者」
Ⅰ「ドゥルガーⅠ」
Ⅱ「ドゥルガーⅡ」
ジャンヌ「ご存じの方もいるでしょうが、見てのとおりかつての大戦で猛威を振るったフレームアームズですが、それは過去の話。ここにいる2人は、私と共に戦う騎士ですわ。そこのところ何卒よろしくお願いいたしますわ。そしてこちらは協力者の」
レーヴェ「ゾアントロプス・レーヴェ。トールとは一度やりあってるから、それ以外は初めましてだな」
翔子「ヘキサグラム引っこ抜いて集めてる変態ね」
レーヴェ「おい!変なこと言うな!」
トール「実質そうだろ?」
レーヴェ「あぁん?バラバラにされてぇのか?」
ジャンヌ「レーヴェ。おやめなさい」
レーヴェ「へいへい」
ネロ「そして俺はネロ。サンマグノリア共和国の騎士団に入っていたガバナーだ。レーナ少佐、改めてお久しぶりです」
レーナ「生きていたのですね。報告を聞いたときは信じられませんでしたが」
ネロ「正直、半分死んでいたようなものですがね」
翔子「ロイヤルナイツのメンバーはこれで以上?」
ジャンヌ「他にもいますが、今は別任務に当たっていますので、機会があればご紹介しますわ」
リカ「…ねぇ、じゃんぬもフレームアームズ・ガールなの?」
ユウ「そうね。見たところ、なんかあたしたちと同じような感じなんだけど」
ジャンヌ「半分正解、と言ったところでしょうか」
リカ「半分?」
楓「フレームアームズ・ガールのようなアンドロイドでもない普通の人です。だけど、わたしのようなアクトレスと同じように、ギアを身に纏うことができる適性を持った人です。それがアリスギアかフレームアームズ・ガールのギアかの違いだけですが」
ジャンヌ「アクトレスと違う部分もありますが、まあ似たようなものですわね。あなたも随分と久しぶりですわね、楓」
楓「はい。昨日は挨拶もできずすみませんでした」
翔子「2人も知り合いなの?」
楓「わたしは椿経由で、ですが。椿に興味を持って、何度も挑んだけど、全敗中」
ジャンヌ「そ、それは言わないでくださいまし!」
一同「(全敗…)」
ジャンヌ「オホン!これでおわかりいただけたかしら?」
リカ「ばーぜたちとは違うんだね」
ユウ「そうね。けど、なんでドゥルガーなんて装備しているのよ」
ジャンヌ「…我がルドガー家の誇りだから」
Ⅰ「我らドゥルガーは、元々お嬢…ルドガー家が設計と開発を行ったフレームアームズ」
Ⅱ「だがそれが犯罪組織に悪用されてしまい、かつての大戦で猛威を振るうことになってしまった」
ジャンヌ「このままではルドガー家の悪名が広がるばかり。そこで、犯罪組織相手に私たちが活躍すれば、その悪名も消し去ることができるかもしれない。これは、ルドガー家の悪名を打ち消すためでもありますわ」
翔子「それで簡単に消せるかはわからないけど、行動しないことには始まらないからね」
ジャンヌ「そのとおり。まず行動を起こさないことには始まりませんわ」
翔子「まぁそれはわかったけど…どうしてこのタイミングで表舞台に出てきたの?今まで裏で活動してたんでしょ?」
ジャンヌ「あなたの言う通り、今までは裏で活動をしていましたが、エクスパンダーがファクトリーアドバンスを襲撃すると聞いたとき、そろそろ本格的に動く時だと思いまして」
翔子「ふ~ん。まぁエクスパンダーとやりあうには、もっと戦力があるに越したことはないからね」
ジャンヌ「これからはファクトリーアドバンスと共同戦線をさせてもらいますわ。よろしくて?レーナ少佐」
レーナ「はい。どちらかというと、こちらからお願いしたいことですし。よろしくお願いします」
レーナ「そういえばネロ。あの戦いの後、一体どこで何をしていたの?」
トール「そうだぜ。俺たちは国を脱出するのに精いっぱいだったが」
ネロ「あの時な…俺とビアンコは、エクスパンダーと戦っていたんだ。あいつは尋常じゃないほど強いガバナーだ」
あの時の戦いというのは、サンマグノリア共和国がエクスパンダーの大規模交戦に見舞われた時のことである。
エクスパンダーが共和国の首都を取り囲むように突如出現し、共和国を恐怖と混乱に陥れた。
レーナが管制官を務める中、ガバナーたちが応戦するも、この時戦力を整えていたエクスパンダー相手に、次第に防衛ラインが突破されていた。
王妃の盾であるクイーンズガード率いる騎士団もこの戦いに参加し、前線で奮起していた。
その中、ネロはビアンコと行動を共にしていたが、そこでエクスパンダーと遭遇した。
ネロ「くそ!なんだよ、あのガバナーは!」
ビアンコ「あいつは…エクスパンダーだ」
ネロ「ボスの登場ってことか。護衛なしで1人でか」
ビアンコ「だが、あいつ1人で防衛ラインも壊滅している。ここを通すわけにはいかん」
ネロ「何としてでも食い止める!」
エクスパンダー「こそこそ隠れてないで出て来いよ。それとも…ハチの巣になりたいか?」
ネロ「なめやがって!!」
ネロ「だが、俺はあの時、エクスパンダーにボコボコにされてな。そのまま川に転落したんだ。で、気づいたときは、お嬢が拠点にしている家にいたんだ。その時、サンマグノリア共和国がエクスパンダーに占拠されたって聞いてな」
トール「そうだったのか」
ネロ「隊長たちがなんであちら側にいるのかはわからん。だが、ある程度予想は付く」
レーナ「というと?」
ネロ「人質にされている。殿下を」
レーナ・トール「殿下を!?」
ネロ「それでやむを得ず軍門に下った、というのが、風の噂だ」
トール「殿下を人質に…なんて奴だ!」
レーナ「フレームアームズ・ガールのマガツキ姉妹も同じような境遇だと思われますし…そうやって戦力を増やしていっている」
トール「そしてどこかで殿下を監禁しているということか」
ネロ「今、別動隊がエクスパンダーに人質になったとされる人たちの監禁場所を探っている。それがわかれば」
トール「隊長やあのマガツキ姉妹たちも、エクスパンダーに手を貸す理由がなくなるはずだな」
ネロ「時間はかかるが、見つけたときは、隊長たちはエクスパンダーに反旗を翻すはず。今はまだその時ではない、ということだな」
トール「その別動隊の人たちに、殿下を任せるしかないか」
レーナ「今は私達にできることをやらないと」
迅雷「レーナ、ここにいたか」
レーナ「どうしたの?」
迅雷「昨日馬のヘキサギアに乗ったエクスパンダーのガバナーからこれを預かったんだが」
ネロ「馬のヘキサギア…あの場にいなかったということは、スパルタンからか」
トール「スパルタンもいるのか」
ネロ「ジーク・スプリンガーを扱えるガバナーは、そういないからな。で、そいつはなんだ?」
アーキテクト「データ保存のデバイスかと。爆発物は検知できませんでした」
迅雷「多分この中に入ってることで、悩んでいるはず。それを開けてみればわかる、とだけ伝えておいてくれ。とのことだ」
レーナ「なんだろう…とりあえず見てみましょう」
レーヴェ「おいトール!ネロ!ちょっと面貸せや!」
ネロ「なんだ?」
レーヴェ「訓練付けてやるよ!」
トール「いきなりだな。だが、あんたが相手してくれるなら」
レーヴェ「死ぬ気でこい」
トール「望むところだ!」
レーナ「スパルタンが持ってきた、か。一体何が入っているのか」
レーナ「これは…サンマグノリア共和国で設計開発が途中だったヘキサギアのデータ。あの時紛失したかと思ったけど、まさかスパルタンが持っていたなんて。開発部に回さないと」
~エクスパンダー格納庫~
エクスパンダー「…あいつが完成したのか」
ジャッジヘッド「試運転でもするのか?ボス」
エクスパンダー「そうだな。あいつ1機でどうなるか…こいつは楽しみだ。そうだ、マガツキも動かせれるようにしておけ。あいつらにも働いてもらうとするか」
ジェスター「これの運用には生体コアが必要と聞いていますが…」
エクスパンダー「生体コアか」
ヴェルルッタ「ん?なんだこれは」
エクスパンダー「…いいところにいるじゃないか」
ヴェルルッタ「何の話だ?」
エクスパンダー「こういうことだ」
ドスッ
ヴェルルッタ「っ!?」
エクスパンダー「少し寝てろ」
ジェスター「…ボス、ヴェルルッタを使うのですか?」
エクスパンダー「こいつには楽しいことをしてもらわないとな」
エクスパンダー「あの組織もテストだとかで、こんなものを寄越してきやがって」
エクスパンダー「ま、精々楽しませてもらうぜ」
山中の地下、巨大な天使が今か今かと出撃を待つ。
生体コアと呼ばれるものは、そこに縛られるだけの部品でしかなかった。
第10話へ続く
次回予告
ある日曜、突如現れた巨大飛行物体が襲来。リバティー・アライアンスが総力を挙げてこれを撃破するため、防衛戦を貼る。
次回、プラモ劇場版 世界をかける少女 KOTOBUKIYAの世界編
第10話「殺戮の天使」