落雷対策・建物の電気火災対策|太陽フレアと雷の共通リスクとSPD(解説) | 某社員?

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私的な考え

落雷対策や建物の電気火災対策を検討中の方向けに、
太陽フレアと雷サージの共通リスクとSPDの基礎を要点だけ整理します。

まずは全体像の理解から。

私たちの生活は、電気なしには成り立ちません。
ところが、空の上から突然やってくる「太陽フレア」や「雷(落雷)」によって、
パソコンや制御機器、通信設備などが一瞬で壊れてしまう可能性があることをご存じでしょうか?

 


これらの自然現象がどのように電気設備に被害を与えるのか
そしてそれを防ぐ「SPD(サージ保護デバイス)」という技術について、
できるだけわかりやすくご紹介します。
 

太陽フレアって、何が怖いの?

太陽フレアとは、太陽の表面で起きる巨大な爆発現象のこと。
フレアに伴って放出された電磁波や**コロナ質量放出(CME)**が地球に届くと、
地磁気が一時的に激しく乱れます

このとき、地球上では「地磁気誘導電流(GIC)」という電流が発生します。
このGICが長距離の送電線や変電設備を通じて、
発電所や通信施設、データセンターなどに
“ゆっくりとした”過電圧(直流成分を含む)として影響を及ぼします。


実際、1989年にはカナダ・ケベック州で、太陽フレアが原因とされるGICによって
「大規模停電(600万人規模)」が発生した事例もあります。
 

雷と何が違うの?

雷は一瞬(マイクロ秒〜ミリ秒)の超高エネルギーが流れ込む現象。
一方、太陽フレアによるGICは数秒〜数分間かけてゆっくり流れる、
低周波の“静かな雷”のようなもの

両者は性質こそ異なりますが、
「電気的な過剰エネルギーが電線などを通じて機器を壊す」
という点で共通
しています。

太陽フレアに本当に効くの? 最新の「コヒーラ型SPD」
SPDは、落雷や電力線から入る異常な電圧(=サージ)を検知して、
それをすばやく逃がしたり吸収することで、機器を守る装置です。
 

通常のSPDは、多くが「MOV(酸化亜鉛バリスタ)」や「GDT(ガス放電管)」を使っていますが、
これらは非常に急激な雷サージには反応できても、太陽フレアのような“ゆるやかな直流的な電流”には反応しにくい傾向があります。


そこで今、注目されているのが「コヒーラ型サージアブソーバ」という新方式のSPDです。

コヒーラ型SPDの特徴(なぜ太陽フレアにも効くのか?)

特徴

説明

1. 応答が非常に高速

1ナノ秒以下で電流を検知し、過電圧を抑制

2. 繰り返し使用に強い

2000回以上のサージに対応。劣化しにくい自己復帰型

3. 相間中和方式

電圧をアースではなく線間で相殺。アース工事が不要

4. 直流混在サージにも反応

太陽フレアによるゆるやかなGICにも応答しやすい設計

特に③の「相間中和方式」は、雷対策の常識を変える技術として、
またコヒーラ型SPDは特許取得済み(日本国内国内)であり、
既存の電源設備にも問題なく導入できる
点が大きな特徴です。

 

過電圧抑制装置のプラグインタイプならば、アース工事も不要です。

↑電気サージ抑制装置

 

 

太陽フレアも、雷も、私たちが完全に避けることはできません。
でも、「被害を受けるかどうか」は、対策しているかどうかで大きく変わります。

雷対策というと、なんとなく“自然相手だし仕方ない”と思いがちですが、
今のSPD技術は、ここまで進化しています。

特にコヒーラ型のように雷にも太陽フレアにも対応できる次世代型SPDは、
これからの「電気が止まると全部止まる時代」に欠かせない、安心の保険のような存在です。

 

※本記事の内容は、IEC 61643(SPD国際規格)およびJIS C 5381に準拠した技術解説、
ならびに太陽フレア(GIC)に関する学術報告・過去事例を元に、
一般向けに平易化してまとめています。

 

※「MOVやGDTは太陽フレアによる“ゆるやかな直流的な電流”には反応しにくい」という記述について、

MOVはdV/dt依存で、しきい値以上の急峻な電圧変化に応じて動作するため、
緩やかな地磁気誘導型の直流オフセットには不向き。
GDTも、立ち上がり時間が数ms以上のサージではイグニッションを起こさないため、
GICのような低速サージには反応が期待できない
そのため、GIC対策にはより広帯域で応答可能な電流依存型素子(例:コヒーラなど)のほうが適する。