この後の練習で、先生が現役時代に
KO勝利を量産したという
コンビネーションのハイキックを
教わって、練習が終わった。
そもそもハイキックが得意では無い
自分にはより一層ハードルの高い技
ではあったけれど、いつか
できるようになったら楽しいかな。
一年分をこの十数回に詰め込んで
練習したと帰り道で言われたが
とにかく必死になって取り組む事か
できた理由の一つに
当時の護真舎の黒帯の子達が
作った黒帯心得に
こんな言葉があったからだ。
護真舎の黒帯は
楽せず自分に厳しくする者である。
年が明けると
先生から電話が入った。
持病の再発でしばらく病院に通うため
練習はお預けになるとの事だった。
まさか、練習のせいで…
と息を飲んだ。
それは無いとのことだったけれど
身体が辛いのをおして
教えてくれていたのかも知れないと
思うと申し訳ない気持ちになった。
同時に感謝の気持ちとで複雑な
心境になった。
すみませんとありがとうございます
を拙い言葉でその時は伝えたけど
言葉は便利で難しい。
この体験で僕は武道と格闘技の
明確な違いを知識だけでなく
体験を通して理解することができた。
そして、人生を格闘技にかけている人の
凄味や懐の深さも。
僕にとって貴重な人生勉強だった。
これは一つの財産になり
護真舎の子達にもいろいろな形で
還元していけたらいいなぁと思っている。
あれからもうすぐ3年になる。
たまにA先生と顔を合わせる事がある。
病気とは上手く付き合っていると
聞くとどこかで安堵している。
ハイキックは得意になったかい
と聞かれる度に、笑って誤魔化す僕を
どう思っているのか聞く勇気は無い
けれど、多少は上手くなっているに
違いない。けっこう、コツコツ自主練は
続けていたりする。
あと、例のステップもこっそりとね。
いつか、みんなと練習してみたい。
最後に先生の言葉で
今回の猿真似を〆たいと思う。
苦手を得意にすれば
怖いものは無くなる。
だってさ。
格闘家らしい言葉だね。
猿真似伝
キックレジェンド編 完。
