3ラウンド目。

それにしても、こういうのは楽しい。
それは、自分も先生もお互いを否定して
いるのではなく、歩み寄っているのが
分かるから。

別物を受け入れる心と
別物を知ろうとする心が
純粋に人間同士の交わりとして
計算が働かず、尊重し合えている喜びを
生み出しているのだと思う。

僕側で言うなら、知らぬ事を
自分がこれまで体験したことに照らして
理解したり
相手の伝えたい事を汲んだり

相手が僕に歩み寄ってくれているのが
わかったり
大事なことを教えてくれている事を
感じられたり

とにかく、初めは【格闘技】対【自分】
だったスタンスが
気づくと【人】と【人】の関係にまで
成熟していた。


要らぬこだわりが消えて、初めて判る
事があるのだと思う。

先生は最初からそこにいたのかも
知れないし、必死についていこうと
していた僕に応えてくれたのかも
知れない。


この瞬間はそこまで考えが及んで
いなかったけれども
深いところではそこに反応していたはず。


不思議と時間が経っても
スパーリングのやり取りが
記憶の中に鮮明に残っているのは
そういう事なのだと思う。


先生の表情
技を貰った時の衝撃
危機感
自分の感情
自分が出した技
その感覚

色んなものが生々しく
今でも思い出すとアドレナリンが
出てくる感じかある。


さて、3ラウンド目も
終盤に近づいてきた。

接近戦でくる先生と
そこで出される技をいかに
想像してよけたり
もらった技を自分なりに
アレンジして返すかという
攻防になっていった。

というか、そのように導かれていた。
ベテランの指導力というのは
つくづく溜息ものの素晴らしさがある。

すげ〜っす!!


そんな気持ちで満たされていた。


ブザー音が鳴り、最終ラウンドが終わった。