今から書く手合せの様子は
自分を通した表現なので
主観的であるのはお許し願おう。
先生の動きの意図や狙いは
あくまでも自分の推測でしかない。  
記憶が定かではないものはカットする。


先生は前膝を曲げる前屈立ちの構えをとる。
流れの中で随所に見られたのは
四股立ちの構えだったのかもしれない。
前後に移動するステップから
一気に間合いをつめる空手の攻撃スタイルで
手の位置は胸と腹の間あたりの高さにあり
拳は固く握られている。
拳や蹴りは打ったスピードよりも速く
元の位置に引き戻される。

僕の本来の構えや動きとは大きく異なる。

自分の構えは後足にやや多く重心を置き
前足での攻撃や受けを効果的に使う。
手の位置は顔の辺りに置き相手に応じて
フットワークを使ったり、すり足を使い
基本、拳は握っていないのは投技に移行したり
相手の蹴り足を取りやすいからだ。
打ち方蹴り方はどちらかといえば
キックボクシング的だったり
フルコン空手的だったりするが状況で変わる。
そして右を前に構えるサウスポースタイル
を得意とするが、この日のは
あくまでも空手の世界を体験させて
もらうので、できるか限り空手に近い
構えで臨んだ。

と言っても自分の見ため同様
猿真似レベルだが 笑


先生は軽くステップを踏んでいる。
僕がどれだけやるのかを見ようして
いるようだ。 
この構えで一番警戒すべきで一番
見てみたいのは
遠間から一気に飛び込んできめる
上段または中段突きと
こちらの不用意な攻撃へのカウンター。
そして、先生自身が持つ何かだ。

僕は慣れない前屈立ちの構えから
上段突きを狙ってみる。

探りを入れるような技は
軽く下がられるだけで、全く届かなかった。

うーむ、全く当たる気がしない…


今度は右の中段突きを狙って前に踏み込む。
先生はそれまでのステップのリズムを
すっと変化させ、逆に突きを打ってきた。

上段突きだったが辛うじて
一本取られずに済んだ。

あ、あぶねぇぞ。。

技の質が道場生のものとは明らかに違う。
布に包んだ刀というイメージで
この一枚の布の下に確実に刀がある
そんな緊張感がある。

軽く繰り出される技にも切られるような感覚。
間合いは一気につめられる

楽しむとか言ってる場合じゃないなこりゃ。


間髪入れずに中段突きが襲ってきた。

反応が遅れてしまっている。
何かフェイントに引っかけられたか?
いや伝統派空手ならではの速さか?
気づくと一本取られてしまっていた。



先生の表情は静かだ。


左右に回り込んで、正面に正対せず
少し重心のバランスを後方にして
ディフェンスを重視に変えよう。

1分もしないうちに新・猿真似に
バージョンアップ 笑

前屈立ちも、先程より高めにして
フットワークを使いやすくした。
ギリギリ空手の構えだろうというライン。
自己判断だけれど。


これは作戦としては効果的だったが
これで先生の動きが変わった。

今までは突きばかりだったのが
蹴り技に加え、足払いのような投技も
仕掛けてきたのだ。

おっと、重心を後ろに移動させてあるため
問題はなかったが、空手にもこういった
足払いや大外刈りのような投技が
あっんだっけな。


今の足払い、または下段を
フェイントにしたこの後の
攻撃を警戒して損はない。
重心の位置はこれでバレたはずだし
突きに対するこちらの意識を
散らそうとしている可能性もある。
それに、、
どんな世界でも強いと言われる人は
瞬時に相手のウィークポイントを
見つけるものだ。

何かそれらしい仕掛けがあった気がする
が、記憶から削除されている。


こちらも猿真似 上段突きを放ったが浅かった。
更に追撃をしたいが、猿真似の構えが
不自由過ぎて体がついていかない。

ちなみに、
猿真似 上段突きなどという技はない笑

おっと、気を引き締めろ

打ち終わりは要注意だぞ。
これまでの流れだと
このタイミングで打ってくるんだ。

ほらきた!!

辛うじて、よける。
再びコンビネーションディフェンス
に救われた。

しかし、このままじゃ一本も取れず
追い込まれてやられる。

一か八か
少しでも飛び込んでくる動作があれば
構えた後ろの拳ではなく、前の拳、
つまりはジャブで突き込んでみよう。
これでいこう。


先生はすっと首を前に出すようなフェイントを
して僕の反応をみている。

どうだったんだろう。
僕はつられて何か情報を与えたのか。
まぁ、どうでもいい

その時
ドーンと床を蹴る音がした

今だ!!!!





気づくと目の前の先生が
気合いのかけ声と共に打ったので
あろう拳を引き戻していた。


ああ。。。




猿真似は
終わった。






一礼。

ありがとうございました。



空手云々ではなく
一人の人間が人生をかけて
続けてきた大切な何かを
見せてくださってありがとうございました。


そんな気持ちだった。