よくわからん企業その1:ローソン
今日の昼にローソンのドラマがやっていたので見た。
コンビニのドラマではない。ローソンのドラマだ。ローソンの店舗で撮影され、役者は皆ローソンの制服を着ていたので、ローソンのドラマだ。コンビニを舞台にしたドラマなら、普通は架空店舗を作って撮影するはずで、最初は撮影に全面協力しているのかな程度に見ていたが。
ローソンのドラマだった。
そのドラマは3本立て。
一本は地方のローソンの店舗に、その店舗のオーナーの息子が帰ってきた。彼は企業コンサルタントだったが、上司と折り合いがつかず、仕事を止めて親のコンビニで働くことにした。しかし、親が営むローソンは馴染み客が良く買う物ばかり置くなど、地域密着過ぎて、本来大きな利益になるはずの観光客向けの商品が貧弱。
店員はなじみ客とおしゃべりをして、棚の補充もほったらかし。その上、オーナーは電気ランタンなど私物をバックヤードに大量に保管していると公私混同。よって売り上げもよくない。
これはいかんと息子は、培ったマーケティングの知識で、赤字店舗だったそのローソンを盛り立てるが、馴染み客からは総スカン。息子のやり方に憤った親父は、突然倒れてしまう。
そんな中、息子が発注を取りやめたあんパンを買いに来たおばあちゃんが店に現れる。利益優先の為、利益にならないあんパンの発注を止めた息子は、申し訳なさから、業務そっちのけでおばあちゃんと向き合う。
そんな中、その店舗がある村を集中豪雨が襲い、土砂崩れで村が孤立してしまう。
しかし、この店のオーナーの親父は、こんな事もあろうかとランタンや自家発電機まで用意していた。その心ある経営に感動した息子は、集まってきた避難客に、売り上げなどかなぐり捨てて『店の商品は全部使ってもらって構わない。がんばりましょう』と声をかけた。
ローソンを通じ、利益以上に大切なことを知る息子であった。
はい一本終わり。
やっている最中、「こんなことあるわけねぇだろ!!」と何度も突っ込みを入れたが、このドラマを見た他の皆さんはどうだっただろうか?
2本目は、住宅地にあるローソン。2年ぶりにローソンのパートに復帰した主人公だったが、自分が来ていない間に、「大福おばさん」と他のアルバイトがあだ名するクレーマーが毎日来店していた。
商品が売り切れているだの、トイレットペーパーの替えが置いてある棚が高いだのめちゃくちゃいうおばさんだったが、主人公は何か原因があるはずだと、大福おばさんを気に掛ける。パートである主人公が、クレーマーと向き合うのは、あるお客様との出会いがあって…。
もうこれ以上書かなくていいか。
紆余曲折あり、大福おばさんはローソンの店員になりました。
3本目もあったようだが、私は見ていない。
このドラマには様々な突っ込みどころがある。
まずプロットが昭和的、あるいは黒田節的すぎる。つまりは「情けは味方で、仇は敵」という日本人が、その中で特におじいちゃんおばあちゃんが大好きなプロット。
かくいう私も、こういう山田洋二的な世界観は大好きなので、ちょっと古臭いのは正直許容できる。
しかしそれが、ローソンで展開されると、何とも言えない気分になる。
このようなドラマのプロットは人を優しさで酔わせる一種のファンタジーなのだ。
情けは味方と知りつつも、仇を味方につけてながら冷たいことをいい、また言われるのが現実である。
だからこそ、このファンタジーは人を引き付ける。
しかしローソンは、私からすればファンタジーの舞台とは言えない。
直ぐそこにある現実である。
これが架空店舗ならば、純粋にファンタジーとして楽しめるだけの温かさがある筋書きなのだが・・・。私の知っているローソン(いらっしゃ~せとか言う店員もいる。あのローソンでだ)で展開されていると、ファンタジーとしてみるべきか、現実としてみるべきか、脳みその中での処理に困る。
普通にドラマを楽しんでいるはずが、画面にローソンの制服とあの看板が写るたびに「これは現実だよ~」と後ろからぶん殴られたような気分になる。
だが、これはローソンが悪いわけではない。
そしてこのドラマの筋書きが悪いわけでもない。
単に相性が最悪なのだ。
現実を感じさせるローソンの中で、こういったファンタジーが展開されると、現実とファンタジーどちらにもよれない居心地の悪さだけが残った。
・・・と、真面目にドラマとして考えてみたが。
まぁ、どう考えてもローソンが金出して作った小1時間ほどのCMだよね。これ。
しかも、結構よくできている。役者も有名・無名ともに演技が上手い人を揃えていて、古臭いプロットを上手く盛り立てている。
特に松原千恵子さんのクレーマーっぷりが良かった。綺麗な女優さんなのだが、見ていてイラつきを覚えるほどの不安定な中高年を演じていた。怒りを感じる悪役はいい。
CMとしてみれば、さりげなくローソンの新商品であるドーナツを映してみたり。コーヒーは他のコンビニとは違い、店員が手渡しをするなど差別化もアピールしていおり、ちゃんとコマーシャルできている。
突っ込みどころとして違和感を私は挙げたが、ドラマとしてしっかり作られているからこそ、ファンタジーとしてのドラマ、現実としてのローソンという違和が出るのだ。最初からCMノリ全開で作っていたら、違和感すら感じず、単なるCMとして、ブログの記事にすらしなかっただろう。
つまり、ローソンがちゃんと金出して、作った本気のドラマなのだと私は思う。
どうしてこんな事を始めたかよくわからないが、話題性は抜群だろう。
コンビニのローソンが、自分の所のドラマを作った。
これだけで面白い。
ふたを開けてみれば、昭和的プロットでお茶の間のおじいちゃんおばあちゃんを狙い撃ち。
(今のコンビニのメインターゲットは若い人だけじゃなく、おじいちゃん、おばあちゃんだからね)
その魂胆を見抜いた若い世代も、「ローソンでそんなことあるかい!」とツイートするんじゃないだろうか。
思えばローソンは前にも変な事をしている。
たしか、景気の上昇を受けて、正社員の給料を上げると真っ先に発表したのはローソンだった。
気が早すぎるだろうとも思ったが、その後別に追従するわけでもないが、大手企業でもベースアップが相次いだ。変に思えても、ちゃんと正解だったということだ。
(うちの会社も早くそうなればいいなぁ。大金持ちがお客さんになってくれないかなぁ…。)
今回のドラマがそうなるかはわからないが、ブログの記事にしたくなるほどには面白い出来事だった。
しかし、この企業、わっかんね~な~。
ただやめてほしいのは、他の企業も真似して同じような事を始める事だ。
こういうのは1発目だから面白いのであって、次を追うようでは2匹目のどじょうだ。
所詮はCM、面白くもない。