父(イメージ武将:石田三成)と

昼ご飯を食べに出かけました。

 

 

とある住宅街にある

エスニック料理屋さんは

噂では知る人ぞ知る人気店らしく、

昼の11時半にお店に入ったら

小さな店内のテーブルは

埋まっているか『予約席』の

カードが置かれているかで

「・・・出直します」

 

「何名様ですか?2名?

なら大丈夫ですよ、このお席

予約は1時からなので

それまでに

食べ終えていただければ!」

 

ありがとうございます、と

席に座って注文をして

趣ある店内の

装飾を眺めていると

私の背中側に座っていた

一人客の席に

ランチプレートが運ばれてきて

「はいこちらお待たせしました」

 

「ありがとうございます」

 

そう言ってお客のお兄さんは

嬉しそうに

携帯でお皿の写真を撮り

いそいそと食事を開始。

 

このお兄さん、我々が

店内に入った時に

父の杖に気が付くとすぐ

荷物をわきに寄せてくれたり

食べ始める前に小声で

「いただきます」と

言っていたりで

私は勝手に好印象を持ちました。

 

少しして我々の席にも

料理が運ばれてきて

成程これは人気店になるだけの

理由がちゃんとあるお味。

 

お店の人のサービスもよく

テーブルに置いてある

スパイスの使い方など

店員さんがいちいち

親切に説明してくれて

ああ、これはこのお店の

贔屓になる人は多いだろうな、と

思っているところに

私の背後の席の例のお兄さんが

「あの、お会計をお願いします」

 

「はいかしこまりました」

 

「それでこの・・・テーブルに

置いてあるこの特製スパイス、

これ、販売もしているって

聞いたんですけど」

 

「はい、しております。あ!

でも今ちょうど新しいのが

入ってきたところで

お持ち帰り用の瓶にまだ

移していないんです。

次回ご来店時までに

用意しておきますので!」

 

「・・・僕、遠方から

来ていて・・・次の来店が

いつになるか・・・

じゃあいいです、

ランチのぶんだけ

お会計お願いします、

すごく美味しかったです」

 

「・・・少々お待ちください」

 

店員さんが厨房に引っ込むと

そちらから何やら声がして

数分後、オーナーらしき女性が

ビニール袋(小)を片手に

小走りに出てきまして。

 

「あのね!いつもの瓶のね、

準備が出来ていないの!

だからね、申し訳ないけど

ビニールで小分けさせて

もらうんでいい?

瓶じゃなくて

申し訳ないけど!

でもこれね、調合したてで

出来立てで、すごく

香りとかいいから!

瓶じゃなくて本当にごめんね?

ビニールでいい?いいなら

これをね・・・あ、ビニールに

スパイスの名前、

書いておきましょうか?」

 

「いえ、いいですいいです!」

 

「瓶じゃなくて

本当に本当にごめんね!

遠くからいらして

くださったんですってね、

よければまたいつか

ご来店くださいね!」

 

ちらりと横目で見ると

お客のお兄さんは

このお店側のサービスに

すっかり感動したのか

幸せにポヤポヤした

表情をしていて

・・・あ、これ、私、

「人が贔屓のお店に巡り合った

瞬間に立ち会った」な、と。

 

お兄さんはこのお店に

近いうちにきっとまた来るな、と。

 

その後、お兄さんが

会計を済ませる際に

最初の店員さんが嬉しそうに

「・・・スパイス、

お渡し出来てよかったです」

 

「・・・無理を・・・

お願いしちゃって・・・」

 

「いえ、こちらこそ

ビニール渡しですみません。

そのスパイス、僕もすごく

美味しいと思いますし、

何にでも合って

効能もたくさんあって・・・

これから

暑くなるじゃないですか。

夏バテで食欲が

なくなった時とか、それ、

食欲増進に最高ですよ!」

 

するとお客のお兄さんは

それまで割とおどおどというか

遠慮がちな声の出し方だったのが

ここで突然きっぱりとした口調

「僕はこれまでの人生で

食欲がなくなったことって

一度もありません!」

 

・・・ああ!

 

振り返りたい!

 

振り返ってこれを言われた

店員さんの表情と

お兄さんの体型を確認したい!

 

・・・大人として我慢しました。

 

後から父にこの話をすると

「うむ、そういえばあの

お客のお兄さんは

大柄で体型が良かった」

 

「やはりそうか。でも

それを含めて彼は

いいお兄さんだったね」

 

「おとーさんはお兄さんと

店員さんの会話とか

気にしていなかったけど、

そういえばあのお客は

終始ニコニコしていた」

 

暑い中遠方からお店に来て

(たぶんお店目当てで

外出したと思われる)

ご飯を食べたら美味しくて

それであのサービス、

うん、お兄さんは

幸せであったと思う!

 

美味しい食べ物とか

親切心とかが持つ

特別な力ってありますよね。

 

次回一時帰国の際には

私もまた食事に行きたいお店です。

 

 

お店に追加サービスを

強要するお客とか

過剰なサービスを

押し付けてくるお店とか

私は見苦しいなって

思うんですけど、

今回はお客もお店も

非常にそこらへん

立ち居振る舞いが

キレイというか

 

・・・この人たちに

幸あれ、みたいな

気持ちになりました

 

この私の気持ちもまた

どこから目線なんでしょうね?

 

贔屓のお店があるあなたも

まだ運命のお店に

巡り合っていないアナタも

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