2011年10月、

イングランドはエセックスの

『デール・ファーム』と

呼ばれる一帯に住んでいた

『アイリッシュ・

トラヴェラーズ』と

呼ばれる人たちが当局に

強制的に立ち退かされました。

 

正式な建築許可を得ず

不法に居住していたとして

立ち退きの対象と

なったのは約86世帯。

 

警察隊による立ち退き執行は

2日がかりで実施され、

立ち退き対象になった人々の

一部はその後水道も

トイレも使えない状態で

道路わきに駐車した

キャラバンの中で生活することを

余儀なくされました。

 

立ち退き強制執行を

後押ししたのは地元の人々でした。

 

これだけ聞くとまるで

デール・ファーム周辺の人々や

エセックスの人々や

イングランドの人々が

ジプシー/トラヴェラーズに

非常に冷淡であるように

思えるかもしれません。

 

ですが地元民の中でも

トラヴェラーズとの

共存をはかった人々は

存在しましたし、

エセックスは英国最大、

いえ欧州最大の

トラヴェラーズ用

居住地(サイト)を保有する

いわばトラヴェラーズ・

フレンドリーな行政区ですし、

それでイングランドというのが・・・

 

強制立ち退き実施当時

デール・ファームに

住んでいたのは

『アイリッシュ・

トラヴェラーズ』、

すなわちアイルランド系の

非定住集団でしたでしょう?

 

彼らが何故アイルランドを出て

イングランドで暮らしていたのか。

 

『No Place to Call Home』を

読み終えた私の理解としては

・・・彼らはアイルランドでの

迫害を避けてイングランドに

避難してきたんですよ。

 

イングランドにも勿論

ジプシー/

トラヴェラーズ差別はあった、

偏見もあった、迫害もあった、

でもイングランドのそれと

他地域のそれを比較すると

明らかにイングランドの状況は

格段にマシというか・・・

 

マシであるからこそ

彼らは住み慣れた祖国を捨て

イングランドにやって来た。

 

デール・ファームの問題が

顕在化してきた頃、2003年に

外で遊んでいた15歳の

『トラヴェラー』の男の子が

「ジプシーだから」という理由で

他の10代の少年たちに

襲われて蹴り殺される、という

事件がイングランドで起きました

 

当時の英国は

労働党が政権を握っていて、

一部の保守党議員は

ジプシー/トラヴェラーズに対し

厳しい発言をすることで

民衆の支持を得ようとする

傾向もあったとのこと。

 

でもそれでも

デール・ファームの

アイルランド系

トラヴェラーズたちは

イングランドに住み続けたかった。

 

というか、たとえば

イングランドに渡って来たのが

『自分のおばあちゃんが

子どもだった時代のことです』

みたいな一家・一族にとっては

もうイングランドが

『生まれ育った場所』なわけで・・・

 

 

つまりこれは現代の

移民問題にも通じる話なんです。

 

私としてはここで

デール・ファーム近辺住民や

エセックス行政や

イングランド社会を責めるのは

ちょっと違うんじゃ

ないかと思うんです。

 

「我々を責めるなら

この問題をあなたの地域に

引き受けてくれ」って話ですよ。

 

相手がジプシー/

トラヴェラーズじゃなくても、

自分の自宅の近くにある日突然

キャンピングカーが数台

停まっているなと思った

その数週間後に車数が

100台とかになっていていたら

「なんじゃこれは」と思うのが

素直な反応でございましょう?

 

それでその100台が

どうやらそこに今後ずっと

定住するらしい様子で、しかも

どんどん車の数は増えてきて、

ゴミ収集の手配を

誰もしないせいで周辺に

ゴミが散乱するようになって、

銀行屋さんや保険屋さんに

「いやあ、あの車のせいで

お客様のご自宅の不動産価値は

相当下がりましたね」とか

言われたらそれはもう

「誰か何とかしてくれ」って

気持ちになって

仕方なくないですか?

 

では誰が、どうやって

何とかすべきなのか。

 

ジプシー/

トラヴェラーズ側も別に

他の人に迷惑をかけたいと

願ってそうしている

わけでじゃないんです。

 

彼らは彼らで

「普通に、人間として、

虐げられずに生活したい」と

必死にその方法を

探しているのです。

 

まさに移民問題と同根の

難しさがあると思いませんか。

 

続く。

 

 

私が英国に住んでいるというと

「英国は非白人に対する

隠れた人種偏見が

ひどいでしょう」とか

時々言われるんですが

(それも悪意なく『大丈夫、

私はわかってますよ』

みたいな感じで)

 

そりゃ偏見とか蔑視は

どこの国でも地域でも

「絶対にない」なんてことは

有り得ないのが現状ですが、

でも本当に英国人が

そこまで白人至上主義なら

国民がスナク首相や

メーガン妃を受け入れたのは

何故なのかって話になりませんか

 

話はそれますが

英国は4つの『国』から

構成されております

 

イングランド

スコットランド

ウェールズ

北アイルランド

 

この4つの『国』の首相に

『白人男性』は現在

ひとりも就いておりません

 

英国は本当に一部の方が

想像するほど『白人男性が

牛耳っている国』なのか

一度考えていただきたい

現状であると思います

 

というかもう一歩踏み込めば

「英国人は人種偏見主義者」

という考え方がそもそも

偏見であるとも言えません?

 

ぐるぐる考えながらの

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