先日フランス人淑女と

話をする機会があり

「この夏はフランスに

帰るんですか」と訊ねたら

「帰りませんよ。

帰るわけありませんよ」

 

「祖国開催の夏季五輪を

観たいとは思いませんか」

 

「五輪、それも私が

帰国しない理由の一つです。

この夏のフランス行きの

航空券の値段、知っていますか」

 

「・・・知っています。

なんかもう夏だけじゃなくて

今の時期から

高騰していますよね」

 

(去年の年末の時点で

今年の5月のパリ経由

日本行きの便の価格は

昨年同時期比

1.5倍くらいになっていた)

 

「まさかNorizoさん、

五輪見物にのこのこパリに

出かけるつもりじゃ

ないでしょうね。それは

おすすめしませんよ」

 

「私は行かないですけど

この夏のパリは

大混雑でしょうね」

 

「パリってそもそも

そんなに大きい都市じゃ

ないんですよ。

インフラ自体が

十分じゃないんです」

 

「でもパリは世界中から

観光客が一年を通して

訪れる場所じゃないですか」

 

「この夏は五輪関係以外の

観光客を受け入れないと

してでもですね、

ご存知ですか、今うちの

五輪関係者は大会を

運営するための裏方、特に

ボランティアの学生の

宿舎の手配が出来なくて

大混乱しているんです」

 

「私はそういう話が

大好きです。

五輪とかW杯とか

招致・開催した側の

お約束的大混乱ですよね」

 

 

この間の東京五輪でも

開催前には(後も)色々あった、

こうなれば求ムお仲間、

一蓮托生、ひとりじゃないって

素敵なことね!

 

「日本基準で物を

考えられたら困ります。

たとえばですね、

日本って公共トイレが

各駅にあってしかも

きれいって話じゃないですか」

 

「最近はそうですね」

 

「フランスは、パリは、

そういうの、

ありませんからね?」

 

「ああ、なんかトイレが

必要になったらカフェに行って

コーヒーを頼んだうえで

トイレの鍵を借りる、とか

聞いたことがあります」

 

「そうです、それが

正しいやり方です。

でもその借りたトイレが

清潔とは限りませんからね?」

 

「そう来たか」

 

「使用料を取るトイレもあります。

1ユーロを払って中に入って

膀胱に余裕があれば管理者に

『1ユーロを返してさらに

お詫び料として1ユーロを

私に払え、なんてものを

見せてくれたんだ』って

言いたくなるようなトイレも

そうした中にはあります」

 

「わあお」

 

「世界中からトップアスリートと

その関係者を招いて、

その人たちのトイレを本当に

どうするつもりなんでしょう」

 

「そ、それは確かに」

 

「もうね、他の人は

どうだか知りませんけど

私は今回のオリンピック、

パリで開催する意味なんて

本当にないと思います」

 

「大丈夫、過去の大会でも

開催地の人は皆そう

言ったんですよ、

前々回の東京大会も

開催前は悪評ぷんぷんでした、

でも大会が終わってしまえば

いい思い出、それが

『パワー・オブ・スポーツ』。

この間の東京五輪は

観客の会場への入場が

制限されたからか

全体的な盛り上がりは

イマイチでしたけど

喉元を過ぎれば

人は基本的に

熱さを忘れるものです」

 

東京五輪の経費が

予算をはるかに上回る額に

膨れ上がっても

我々国民はなんとなく

「もういいや」気分になり

原因をそれほど真面目に

追求しておりませんでしょ?

 

これぞ関係者の思うツボ!

 

「でもね、現時点で

すでに滅茶苦茶費用が

かかっているし。当初予算を

はるかに上回るんです」

 

「わかるわかる」

 

東京五輪もそうでした!

 

「セーヌ川で水泳競技を実施、

とかいって水質は最悪だし」

 

「わかるわかる!」

 

東京五輪のトライアスロンも

水については

色々言われておりました!

 

「サーフィン競技は

タヒチで開催なんですけど

そのためにポリネシアの

サンゴ礁を破壊して

審判用のタワーを建てるとか

ほざいているんですよ連中は!」

 

「・・・あー・・・

パリの外にも問題を

持って行っちゃったか・・・」

 

ただほら東京五輪も

競技場建設で

熱帯林破壊木材を

使ったって話ですし。

 

「きわめつけにわが政府は

世界各国からいらっしゃる

選手団に配慮して、

路上生活を余儀なく

されている人々をパリから

追い払いましたからね」

 

「五輪でも国際イベントでも

世界各国でそれは

行われる施策ですよね・・・」

 

そんなわけでこちらの

フランス人淑女曰く

「この夏のパリは

おすすめしない」

とのことでございます。

 

・・・五輪開催地の

すったもんだ、

国は違えど皆同じ、で

ございますね。

 

 

家に帰ってこの話を

夫(英国人)にしたところ

「大型スポーツイベントを

今後どこの国・都市が

開催したいと思うのか、

という話ですよね」

 

「札幌はこの間まで

冬季五輪誘致に本気だったぞ」

 

・・・一部関係者には

非常にうまみのある

話なんでしょうね、結局

 

というわけで私は

馳浩石川県知事

「官房機密費を使って

五輪関係者に贈答品を

渡した」発言を

忘れておりませんぞ

 

つか五輪招致をめぐる

賄賂だの何だのは

東京五輪でもありましたけど

今回のパリ五輪でも

問題になっていて

これはもう根本的な

制度上の不備というか

根腐れの仕方なのではないかと

 

・・・一部関係者には

本当においしい

イベントなんでしょうねえ

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