タイトルは比喩ではなく。

 

いえ、先日、近所の森で

小火(ぼや)騒ぎがありまして。

 

木立から白い煙がもくもくと

沸き上がっていた光景は

壮観といえば壮観でしたけど。

 

森林管理団体の人が

消火作業をしているところを

大犬アーシーの散歩中に

通りかかったんですけど、

どうもその日の前日か前々日に

どこかのアウトドア初心者が

松林の中で焚火を

したみたいなんです。

 

どうしてその人、あるいは人々が

『初心者』ってわかるんですか?と

首を傾げたそこのアナタ、

それはですね、

私の偏見も入りますけどね、

英国のアウトドア経験者は

空気が乾燥しきった

晴天続きの夏の最中に

針葉樹林の中で焚火をしようとか

まず第一に思わないものなんです。

 

英国の夏の乾燥を

甘く考えてはいけない。

 

そして松が群生した場所の

地面というものは

すべて美しい茶色の

松の葉で覆われている。

 

松の葉の燃えやすさは

もうそれだけでただ事ではない・・・!

 

問題の初心者はそこらの石で

地面に丸く囲いを作って

そこに火を起こし、

ご丁寧にどこかから

手ごろな丸太を持ってきて

それを火のそばに置いて

ベンチ代わりにした様子。

 

で、『静かな森の奥で火を眺め

自然を満喫する自分』に

満足したところで

この初心者はたぶん

「焚火の火も弱くなっているし

このまま勝手に消火するだろう」

みたいな考えで

その場を立ち去ったのでしょう。

 

もしかしたらその時点で

石の囲いの中には

ほとんど火の色は見えず

灰色の燃えカスを見て

「これでよし」と

思ったのかもしれません。

 

水筒の水を適当に

上からかけた可能性さえございます。

 

でもね・・・君の作ったその焚火、

工事現場でいうところの

『基礎』がすべて松葉という

可燃物、何だったら

着火物なんですよ・・・!

 

 

「たぶん石の囲いの隙間から

火がじわじわ周囲に

広がっちゃったんだろう」というのが

私の推測だったのですが

私からこの話を聞いた

わが夫(英国人)

(アウトドア中上級者)は

「さらにあそこ、地面が

ピートで出来ていますものね」

 

ピート(Peat)、すなわち

泥炭について皆様

どれほどご存じでしょうか。

 

私もスコットランドに来るまでは

良く知らなかったのでございますが

ピートとはいうなれば

『泥の顔をした石炭』。

 

つまり純粋可燃物。

 

見た目は普通の泥・土なのに

火がつけば燃えるし

燃えればなかなか消えないし、

結果的に大規模な森林火災をさえ

招く力があるという恐ろしさ。

 

今回小火が起きた林は

そんなピートの

上に広がっていたそうで。

 

連日雨が降り高湿度が続く

冬のスコットランドでならば

ピートの上で焚火をしても

たぶん問題は何も起きない。

 

しかし今は夏!

 

(英国の夏は低湿度)

 

しかも珍しい晴天続き!

 

(地上のすべてが

パリパリに

ひび割れている感じ)

 

わが夫の考えとしては

「地表の泥炭が乾燥し

非常に燃えやすい状態に

なっていた上に

さらに乾燥した松葉という

やはり非常に

燃えやすいものが重なっていて、

たぶん小火で燃えたのは

松葉だけでなく地面もでしょうね」

 

・・・そういえば管理局の人は

周囲の土を掘り返すようにして

消火活動を行っていた!

 

「じゃあ小火の発見が遅れていたら

もしかして本当に危険だったのか」

 

「かなり危険だったと思いますよ」

 

焚火の囲いはそれこそ

子供が腕を抱えたくらいの

小さな円形だったのですが

私が覗いた時点で火はその

周囲3メートルくらいに

燃え広がっておりました。

 

サイズとしては

子供用プール(大)くらい。

 

 

そんなわけで皆さん、

スコットランドで

焚火を楽しみたい場合は

まず冬に楽しみましょう。

 

どうしても夏に!という方は

周囲に可燃物のない場所

(例:河原の砂利場)を

お愉しみ場に選びましょう。

 

スコットランドの

大地(の一部)は燃えるのです!

 

 

翌日鎮火現場を見に行きましたら

(世界よこれが野次馬だ)

子供用プール(大)サイズに

地面が丸焦げている中に

周囲の木の根っこが

焼け焦げていてですね・・・

 

もちろんベンチ代わりの

丸太なんて真っ黒でしたよ

 

対処が遅れていたらが本当に

危険なことになっていたのでは

 

通報者は犬の早朝散歩中に

現場を発見したんですって

 

その人が気づいてよかったです、

私がその人なら

林の外から白い煙を見ても

「誰か焚火をしているな」くらいで

林の中まで確認しなかった

揺るぎなき自信があります

 

今年の2月に某日産の宣伝記事で

『落ち葉の上で焚火を楽しむ』

写真が使われて問題になりました

・・・そういうことを現実に

しでかしちゃう人って

本当にいるんだな、という・・・

 

これは知識の欠如なのか

常識の欠落なのか・・・

 

私も気をつけたいと思います

 

火の用心!

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