優雅なる英国運河を行く
ナローボートの旅。
水路が交差する三叉路で
違法係留をする他の船（複数）と
記録的大風に邪魔をされ
どうしても２時方向に
船を進められない義父
（白色あらため
赤色シュレック）の秘策とは！
本日も画像は
本文とは無関係な
のどかな英国運河風景を
お楽しみくださいませ：
悪夢の八艘飛びから
生還したわが夫（英国人）が
まだ青い顔をしているところへ
船尾から義父は大声で
「これは２時方向に
進むのは無理だな！」
「そうだね父さん！今は
あきらめたほうがいいと思う！」
しかし右折を諦めるにしても
三叉路の周囲に
船を停める余地はなく
（そもそも係留禁止区域）、
かといって横風のふく中
船を合流地点の真ん中に
漂わせておくのも危険、
これはもう万事休す状態、と
私が絶望しようとしたところへ
「作戦を変更する！
前進を目指すのではなく
ここまで通ってきた
水路に帰る！」
しかし我々がここまで来た水路、
つまり合流地点に６時の方向から
入り込んでいる水路には
すでに他の船が三叉路に
入るための順番待ちをしており
・・・後進（バック）で
あそこを通過するのは
危険というか不可能・・・！
他の船が水路縁に
停まっていなかったら
もやい綱を使って
引っ張り戻すことも
可能かもしれなかったのですが
水路の一番端っこに
『停泊禁止』の表示を無視した
ボートが係留されている、
その隣に三叉路侵入の
順番を待っている船がある、
みたいな状態でありまして。
船は後進できる物、
しかし後進では
速度は出ないし風はあるし
それは危険な
賭けと違いますか・・・？
しかしわが義父は
一歩先んじて
物を考えておりました。
「合流地点で右折ではなく
左折の動きを取り
そのままUターンする！」
・・・なるほど！
確かに合流地点には
９時の方向からも
水路が一つ入って来ていて
その周囲に大きく堀ができている、
あの空間を有効活用できれば
それは不可能な話ではない！
というわけで我らの船は
ここで栄光のT字戦法、
日本帝国海軍伝説の
東郷ターンの上を行く
まさかのU字戦法を
選択することにしたのです！
（・・・今冷静に振り返れば
我々はやはり全員精神的に
追い詰められていて
こういう思考に
至ったのかな、という・・・）
（でもあの時点では
合流地点からなんとか
出ないことには
話が始まらなかったの）
もう何度目になるのか
我々の船はまた最初の
６時方向の出発地点に戻り
（義父が赤黒くなっているのに対し
そこで順番待ちをしている
ナローボートの人たちは
青ざめた顔色をしておりました）
（彼らにとって我らの苦境は
明日のわが身なわけですよ）
「ではいくぞ！
全速で進み、取り舵！
船が左折を開始しても
舵はそのままで行く！」
船室から様子を伺っていた
わが父（イメージ武将：
石田三成）はこれを聞いて
「まあそれしかないものね」
わが母（イメージ武将：
豊臣秀吉）は台所前の
テーブル席に座って
この日の夕食に作った
カレー鍋を抱えていたのですが
「ねえNorizo。お母さん、
外を見たほうがいい？
見ないほうがいい？」
「・・・ちょっと
わからないですね」
「じゃあ見ないでおく。
怖いの嫌だから。ごめんね」
そんなわが母に同じく
テーブルに向かって
腰かけていたわが義母
（永遠の文学少女）は
そっと読みかけの新聞を差し出し
「こういう時は他のことに
神経を向けていたほうが
いいと私は思いますの。
よろしければ社会面どうぞ」
ともあれここにおいて
我らのナローボートのエンジンは
かつてないほど大きく震え始め
さあ、まずは全速前進！
Uターンできるだけの
水路を確保するため
ある程度は直進し、
ここはというところで
義父は思い切り舵を切る！
舵の動きが船に伝わるまでの
あの不安な一時を経て
船の舳先が左に向かい始める！
次の瞬間、強風が２時の方向から！
これは素晴らしい追い風だ！
吹いたか神風！
予想以上の速度で船首は
１２時方向から１１時方向へ、
１０時方向へ、そして
９時方向へ向きを変えていく！
よし、まだまだ余裕はある、
このまま船よ
６時方向に鼻を向けよ！
風はなおも強いままだ！
・・・しかし皆様
ご理解いただけますでしょうか、
２時方向から吹く風は
船を９時方向に
向けるあたりまでは
素敵な助力となるのですが
そこからさらに
船の向きを変えようとすると
それは抵抗力になるんです・・・！
船、そこから
びくとも向きを変えず・・・
風力に抵抗するには速力だ、と
義父は船のエンジンを
なおも最大限に稼働させ、
しかしやはり大自然の力には勝てず、
同時に風はわが船のお尻を
景気よく押し始め
・・・私はまさか
ナローボートが
あんな速度を
出せるものとは
思いませんでした・・・
そして我らはふと気が付いたのです、
このまま船が向きを変えることなく
この速度で進んでしまうと
そこには水路の壁、そして
やはり壁沿いにずらりと並んだ
他の船の群れがある・・・！
続く。
船は怖いですね・・・
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