友人が子供を連れて

我が家に遊びに来ました。

 

「とはいえ、家の中には

立ち入りませんから!

食べ物も飲み物もすべて

こっちの分は自分たちで

用意していきますから!

庭で旧交を温める感じで!」

 

「・・・じゃあせめて

お子さんたちには

スグリ摘みでもして

楽しんでもらおうか?」

 

 

 

 

「えっ、いいの?嬉しいわ、

子供の教育にもなるし!」

 

というわけでクロスグリ

(Blackcurrant)だの

セイヨウスグリ

(Gooseberry)だのを

せっせと摘んでもらっていたら

「NorizoさんNorizoさん、

畑の向こう側にある

赤い実のついた鉢、

あれってもしかしてイチゴ?」

 

「そうだよ。あ、イチゴ、好き?」

 

「うん、好き!」

 

「じゃあ摘んでいいよ、

遠慮なく摘んでおいで」

 

「うん!・・・あのさ、でもさ、

Norizoさんさ、あのイチゴの

前にガチョウがいるでしょ?」

 

 

「うん、いるね」

 

「ガチョウって・・・怖くない?」

 

「うーん、どうだろう、そうだな、

怖いか怖くないかで言えば

あれは怖いね、うん。

たとえばそこらの犬よりは

怖さで言えば上なんじゃないかな」

 

「・・・ガチョウは噛まないよね?」

 

「ガチョウは噛むよ!

すごく噛むよ!

でも犬に噛まれるよりは

怪我の程度は軽いんじゃないかな、

ほら、口があれクチバシでしょ?

あのクチバシの後ろ側には

ばっちり歯があって、それも

いちいち尖っていて、でも

犬みたいな『牙』はない。

だから噛まれても血が滲むくらい

 

「・・・血、出るの?」

 

「そうそう。でも切り傷にはならなくて

その後長いこと青アザになるだけ

 

「・・・」

 

「でね、噛まれてさらに運が悪いと

フックが来るよね。わかる?」

 

 

「フック?」

 

 

「翼をこう横から

一閃する感じでね、

あれを膝下に食らうと

痛いというか衝撃が深いね。

骨が痺れる感じ?

まあそれも青アザだね」

 

「・・・Norizoさん、僕たち、

イチゴは今日は要らないかも」

 

「何言ってるんだよ!

ガチョウに噛まれた青アザなんて

滅多に手に入らないぞ!

ガツンと噛まれておいで!

友達に自慢できること間違いなし!」

 

「・・・Norizoさん、

何を言っているの?

お母さん、Norizoさんが

変なんだけど!」

 

するとそれまで少し眉をひそめて

私と少年の会話を聞いていた

少年のご母堂(私と夫の友人)が

「でもアナタ、友達の怪我自慢を

よく羨ましがっていたじゃない。

今日ガチョウに噛まれれば

その青アザはきっと

夏休み明けまで『もつ』わ。

学期初日に友達が『夏休み中、

サッカーで足を挫いてさあ!』とか

『釣りで指を切っちゃって!』とか

言っているところに『僕のこの

青アザ、何で出来たと思う?

ガチョウに齧られてさあ!』

・・・間違いなく人気者よ!」

 

「そうだよ!ガチョウに

襲われるなんて

滅多にない経験だよ!

比類なくカッコイイよ!

さあ、ガブーともらっておいで!」

 

この時お子さんたちの父上は

わが夫と離れた場所で歓談中で、

後からこの話を私から聞いた夫は

「・・・君たちは・・・本当に

ひどい女性たちですね・・・」

 

なお私は別に子供がガチョウに

襲われる光景を見て喜ぶ気質は

持ち合わせておりませんため、

この後ちゃんと

『オトリ』役になって

ガチョウをひきつけ(るフリをし)、

子供たちに無事に

イチゴを摘んでもらいました。

 

熟れ過ぎて腐りかけたり

野鳥に齧られたイチゴは

「ガチョウに投げてあげたら

ガチョウが食べてくれるよ」

 

・・・5分後、そこには

ガチョウたちにイチゴだの

スグリだのを投げ与えて

大喜びする子供たちの姿が!

 

(襲われるのは怖いが

餌付けするのは楽しいらしい)

 

(その気持ちはよくわかる)

 

そんな週末でした。

 

青アザを自慢する気持ちが

わかるあなたも

わからぬあなたも

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