夫(英国人)を迎えに行こうと
車を出した時にラジオをつけたら
耳に飛び込んできたのがメイ首相の
EU(ヨーロッパ連合)
EU離脱後に英国は単一市場への
アクセス維持を目指すソフト路線で行くのか
それとも離脱するからには単一市場からも
身を引きます、のハード路線で行くのか
メイ首相の決断が注目されていたわけですが
発表されたのは堂々の
ハード・ブレクジット(Hard Brexit)、
「(英国は)単一市場に留まることはできない」
この宰相はハード・コアなお人やでえ!
私の聴いたラジオ番組では
この演説について『識者に聞く』
みたいなことをやっていてまして、
アナウンサーの質問に答えるその
『識者』の声が完全に上ずって動揺しており、
うん、これが生放送の醍醐味ですね。
とにかくこの『識者』は
メイ首相の今回の方針に大反対らしく
「財政的にも大間違いです、大打撃です、
英国経済はこのままでは潰れてしまいます!」
そこにアナウンサーが冷静な声で
「ではメイ首相は今回どのような方針を
発表すべきであったとお考えですか?」
「とにかく単一市場へのアクセスを
維持する姿勢を示すべきでした!」
「ですが移民数制限と
単一市場へのアクセス維持の2つを
同時に望むことは
出来なかったわけですよね」
「いいえ!出来ました!
・・・頑張れば出来たはずです!」
ちょうど車を右折させるところだったので
細かい点は間違って
記憶しているかもしれないのですが
・・・紳士よ、お待ちくだされ、メイ首相は
ずっと『移民流入規制』と同時に
『単一市場アクセス維持』をEU側に求めていて、
しかしEU側はそれを受け入れない姿勢を
明確に示していて、そうした流れを踏まえた上での
今回の方針演説ではございませんか。
ここでメイ首相が二兎を追おうとしたら
EU側の反応としては
1.英国は我々の意見を
理解する努力さえしないのか
2.時間稼ぎか、その手は食わん
3.ヘーイヘーイ、英国ビビッてるう、
よーしじゃあここが攻めどころだぜー!
みたいなことになる展開しか
予想できないんですけどこれは
私の想像力が貧困なせいでしょうか。
しかし私が思っていた以上に
今回のメイ首相の
ハード・ブリクジット決断は
英国の皆様に衝撃を与えているようなので
ここはわが家庭における
英国人代表・夫にも
少しは優しく接しなくては、と
私は車を下りつつ決断しました。
職場の前に立つわが背の君に近づくと
気持ち軽く膝を曲げ両手を腰に、
次に片手を高く宙にあげつつ膝を伸ばしながら
(つまり『エイエイオー』のポーズ)
「(『ジーク・ジオン!』の掛け声と
同じトーンで)ハード・ブリクジット!」
夫はしばらく私を見詰めた後に
「何ですか、それ」
「おや、ニュースを聞いていないのか。
メイ首相、ハード路線をご選択だぞ」
「いえ、それは聞いていますけど。
君はハード・ブリクジット派なんですか?」
「ううん、別に。ただラジオを聴いていたら
一部の人はずいぶん悲観的に
なっているみたいだからさ、
せめて君の気持ちだけでも
上向かせてあげようと思って」
「・・・そうですか、ありがとうございます。
でもね、それね、他の場所で、
他の人の前では
絶対にやらないでくださいね?
誤解されますからね?僕の職場でもすでに
何人かの同僚がこの方針表明に
深刻な懸念を示しているんですからね?」
「そうか。わかった。しかしだな、これ、
やってみて思ったが結構気持ちいいぞ。
全身を使うし背中も伸びるし、懸念を抱いて
暗い気持ちになっている人にこそ
お薦めしたい全身運動というか・・・」
「本当に誤解されますからね?」
わが健康体操はこうして封印されました。
春の訪れを前に気分が沈み込みがちな貴方、
騙されたと思ってやってみてください、
「ハード・ブリクジット」掛け声体操。
そんなわけでメイ首相、
彼女の政策に対する
世論の好き嫌いはともかく
政治家としてはかなり胆の据わった
御仁であられる模様です。
掛け声体操に興味はあれど
私はそもそも
英国のEU離脱に反対の立場なので
「ハード・ブリクジット!」とか
元気に口に出したくないんです!
というそこの貴方、お任せください、
その場合、片腕を宙にあげると同時に
片足も上げるようにし、そこから
大きく足踏みをしつつ腕を胸の前で
クロス、広げて、クロス、広げて
「ノー・サンキュー!」、これです
まあでもお試しの際は
周囲に人がいないことを確認してくださいませ
猫の前でこれをやるとかなり
軽蔑されることがわかっております(当社調べ)
ともあれメイ首相の今回の演説は
あくまでも「方針」の表明、
EU側との折衝を経て
最終的にどこが落としどころになるのか
非常に興味深いところです
メイ首相の方針演説に納得した貴方も
度肝を抜かれた貴方も
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