ニワトリ奥さんの抱卵により
たまごから孵ったガチョウのヒナ。

僕、どーなるの?


巣から転げ落ちて
戻れなくなっていたのを幸いと
実の親の元に戻すことに。

実の親である
母ガチョウ(通称『妹姫』)と
父ガチョウ(通称『婿殿』)は
子供達5羽を連れて
散歩に出かける
準備をしていたところでした。

私と夫(英国人)の顔を見るなり
うちの子たちに近寄るんじゃない!
といつもの威嚇音を出す婿殿と
その後ろでヒナを足元に集める妹姫。

むう、あのヒナ5羽の集団に
そっと6羽目の子を紛れ込ませるのは
距離的に少し難しいような・・・

その瞬間、夫の手のひらの中で
ピープピープと鳴き声をあげたヒナ6号。

このピープピープはどうやら
大人ガチョウの本能スイッチを
むやみやたらに押すものらしく
「いつの間にうちの子を盗んだ
この二足歩行のケダモノめが!」
と婿殿は一直線に我々に詰め寄り、
そしてその隙を突いて夫は
婿殿と妹姫の間に体を滑り込ませ、
当然のごとく親ガチョウ2羽は
狂乱の金切り声をあげ、
それを聞いたヒナは怯えに怯え
・・・この混乱に乗じてヒナ6号を
他のヒナ5羽の中に押し込んだ夫!

素晴らしい早業だ!

私が称賛の声をあげようとしたその時、
間髪入れず夫に対して脳天から突っ込み
その右手に齧りついた婿殿!

・・・夫の右手の甲には
毒々しい紫色の
内出血の跡ができました・・・

皆さんも子育て中の
ガチョウにはお気をつけて。

ともあれ、ヒナ6号は無事
他の5羽と合流することに成功し、
しかし母ガチョウの妹姫が
何度も首を振って怪訝そうに
ヒナの数を確認しているらしい様子なのが
我々としては気になるところ。

婿殿の方は単純に
「うちの子の数?だから
1、2、3・・・たくさんだ!異常なしだ!」
という納得ぶりであるのですが
妹姫はああ見えて数字に強かったらしく
「昨日からどうも計算が合いませんよね?
総数がおかしなことになっていますよね?」

うん、まあ、初産で、1カ月巣にこもりきりで、
必死の思いでたまご4個の孵化に成功し、
体の調子もまだ本調子ではないのに
全力で育児に奮闘しているところに
『自分が産んだ(孵化させた)記憶のない子』が
ちょろちょろ家庭に紛れ込んで来たら
それは腹も立とうというものですよね、ええ。

でもね、その子達ね、根本的には
君たちの子、ということで間違ってはいないのよ。

その日は一日晴天が続き
ガチョウ夫婦は子供たちに
日光浴させることに
余念がなかったのですが
「妹姫なんですけど、どうもあの
ヒナ6号をことあるごとに
クチバシでつついていますねえ」

そうなんです、ヒナ6号はまだ
他のヒナたちほど足腰が
しっかりしていないせいか
どうしても集団行動から遅れがち。

遅れちゃうの


すると妹姫はその長く力強い首を
容赦なく振りおろしヒナの
首根っこを齧る素振りを見せる。

時には本気で齧っちゃう。

「まあでも・・・あれは意地悪心ではなく
千尋の谷からわが子を落とす母心というか・・・
実際集団行動に遅れがちなヒナは
いざという時(キツネや猛禽の襲来時など)に
命の危機に見舞われるだろうし・・・
母の愛としてあえてムチをふるってだね・・・」

でもね、お母さん、
アナタちょっと厳しすぎかも・・・

母ガチョウに脅されたヒナ6号は
時に完全に腰が抜け
(怖いのもあるかもしれませんが
物理的につつかれることにより
バランスを崩し、しばらく
立ち上がれなくなってしまう)、
するとますます
他のヒナから遅れることになり、
結果さらに母ガチョウの怒りを買う、
という、何なのかしらこの悪循環。

父ガチョウ婿殿がさりげなく
ヒナ6号をかばう素振りを
見せもするのですが、
母ガチョウの気持ちはなだめられず。

そんな時、そっとヒナ6号に寄り添うのが
母ガチョウに放棄されたたまごから
人間の手によって孵化した
ヒナ5号なのでありました。

人の欲目と思うでしょ?

違うんです、ヒナ5号は本当に
群れからはぐれた6号のことを
いつもいつも迎えに行き、体を寄せ、
6号が再び立ち上がるのを待ち、
ひょこひょこ一緒に
親ガチョウの後を追うのでした。

立てる?


最初に孵化した1号と6号とでは
ヒナになった時期に
1週間の差があるためか
その体格の差は歴然。

そんな中でのちびっこ同士の
連帯感だったのかもしれません。

しかしこんな『いじめられっ子』ポジションで、
しかも『いじめっ子』は実の母というこの状態で、
ヒナ6号は無事大きくなれるのかしらね?

我々のこの懸念は、この後
悲劇の現実となったのです・・・

続く。


うん、明日はちょっと悲しい話かもしれん

先に謝っておくね、ごめんね
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