朝、洗面のために

水道の蛇口をひねったときに

すでに予感はあったのです。


水圧が弱い、と。


しかしそんなことを気にしていては

当地において快適な生活は営めない

(どうせ問題は生じるのだから

その問題を楽しむ方向で

暮らしていこうという

コペルニクス的発想の転換)。


「ちょっと水の出が不安な感じですね」

「まあ時々

こういうことがありますよね、この国は」

「隣人が朝から盛大に

お風呂でお湯を使っているんですかね」


そんな言葉を私と交わしてから

街に出かけた夫(英国人)が

10分後に電話をかけてきまして。


「妻、今すぐ鍋やバケツに

水を汲んで溜めておいてください。

これはもしかしたら

大変なことになりそうです」

「何だ、どうした」

「駅の裏手の交差点があるでしょう。

あそこの道路から

盛大に水が漏れています。

ものすごく見事な噴水状態です」


街での用事を済ませた夫は

すぐに家に帰ってきたのですが、

帰り道にもまだ噴水は

アスファルトの隙間から

湧き出していたそうな。


「数えてみたら噴水は全部で

4つ形成されていました。

周囲の道路は完全にびしょ濡れです、

というかあと少しであれはになります」


しかし何がすごいって

そんな状態なのに周囲に

水道局の作業員らしい人の姿は

まったく見えなかったらしいのです。


「・・・市民の義務だな、

水道局に連絡を取ろう」


「いや、妻、

いくらなんでも大丈夫ですよ。

この街でたぶん

もっとも交通量の多い交差点ですよ?

もうすでに誰かが通報していますよ


「そうか夫、君はまだ

自国への幻想を捨てられないんだなあ。

台所で蛇口をひねってご覧なさい、

一滴たりとも水がこぼれないだろう?

状況は悪化中だ。

君がどうしても嫌なら私が電話をかけてやる」


で、結局夫が水道局に電話をしまして。


何と驚いたことに水道局は

早朝の時点ですでに幾度か

この水漏れについての報告を

受けていたのだそうです。


ならば何故

事態に対処しなかったのか。


事故の現場を・・・

間違えていたらしいです・・・


「だから駅のところの交差点でしょう?

朝から何件も電話を受けているんですけどね、

係が見に行っても何もなかったんですよ」

「ですが現に我が家の水道は

止まったままですし、

つい10分前にも道路から

水は噴出し続けていましたよ」


「いや、ですけど

その噴出している水というのが

確認できないんですから。

駅のところの交差点ですよね?」

「そう、駅の裏手の交差点です。

つまり駅の正面玄関から線路を挟んで・・・」


「・・・えっ?正面玄関から線路を挟んで?」

「そう、線路を挟んで

逆側の広場があるでしょう、

そこに隣接する交差点です」

「・・・ああ・・・線路を挟んで・・・」


つまり、水道局は通報を受けて

すわ一大事と駅の正面に駆けつけ

周囲を見渡し何事も起きていないので

この件を『誤報』として

処理していた様子なのです。


何ですかその

新宿の西口と東口を

間違えるレベルのうっかりは。


さすが英国水道局だ!


ケアレスミスの勢いが

日本の比じゃないぜ!


水は昼前に

家の蛇口から出るようになりました、

やる気を出せば出来る子なんです。


頑張れ英国水道局!


皆様も漏水を発見したら

せっせと関係当局に連絡しましょう

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