夫(英国人)は時々

ランニングに出かけます。


ウォームアップを兼ねて

近くの森までの道を軽く走った後に

森林地帯に突入し

木々の間を

全力疾走しているという話です。


思う存分心肺機能を鍛えたら

全身汗まみれになって

太い息を吐きながら帰宅。


ここまで有酸素運動をして・・・

どうして体重が

増加傾向にあるんでしょうね・・・


それはともかく。


たいていの場合1時間ほどで

家に帰ってきてくれるのですが、

時々夫はそのような状況で

2時間近く

姿をくらますことがあるのです。


「何をしていたんだ、

心配しちゃうじゃないか」

「すみません、ちょっと森で

木に見惚れていたんですよ」


うーん・・・いや、そのね・・・

木って・・・木ってそんなに

見惚れたりするものでしたっけ


「道端に突っ立って

通りすがりの女の子達を眺め回すよりは

品のある趣味だとは思うが・・・

それは一歩間違えれば

マニアックを通り越して

完全にアレな性癖なのでは・・・」

「だってとてもきれいな木々なんですよ?

枝も幹もよく成長して、

太陽の光を受けた葉っぱは

きらきらと緑色に輝いていたし!

思わず足を止めて

深呼吸をしたくなるのが人情でしょう?」


すみません、私は

人情が薄い女なのかもしれません。


さて、先日『風の谷のナウシカ』を

心行くまで堪能したわが夫。


以来、夫は走りに行く準備を整えると

見送りに出る私に向かって

「1時間くらいで帰る予定です。

でも、森の状態によっては

僕は『ナウシカ』ごっこをするつもりなので

帰宅は1時間半後くらいに

なるかもしれません。

帰りが遅くなっても心配しないでください」


帰りが遅くなることは心配しませんが、

三十過ぎた大の男が

『ナウシカごっこ』とか言い放つところに

私は深い懸念を抱いてしまいます。


ちなみに夫のいう『ナウシカごっこ』とは

森の真ん中で木の根元などに座り込み

じっと周囲を見渡すことなのだそうです。


ごめん・・・私は本当に

君の趣味がわからないよ・・・


ところで9月は

わが義父、つまり夫の父の誕生月。


「父はこの間、庭にイチイの木が欲しい、

とぽろりと口にしたのですよ」

「ほほう」

「だから森でイチイの実を

摘んできてあげようと思います。

種が苗になるまで畑で育てて、

それを将来庭に植えてあげましょうよ」

「・・・素直にイチイの苗を

お店で購入する、という案はどうだ」

「僕は贈り物に心を込めたいんですよ」


その日、夫は森から

袋いっぱいのイチイの実を持って

帰宅しました。


「へえ、イチイの実って

真っ赤できれいなものなんだね」

「ええ、でもその種、有毒ですから

間違っても飲み込んだりしちゃ駄目ですよ。

昔は暗殺に使われたのだそうです」


そんな危険物

家に持ち込まないでください。


姫様の腐海遊びにも困ったもんじゃ。


なおイチイの種には毒があっても

イチイの実は甘くて美味しいのだそうです。

でもそんなことを言われても

私は味を確かめたりはしませんよ!


イチイの実の詰まった袋は

夫の自室の窓辺に置かれました。


数日後。


窓辺に・・・腐海が発生しましてね・・・


「妻、ごめんなさい、

本当にいまさらなんですけど、

このイチイの実の袋、

冷蔵庫で保管していいですか!」

「素直な回答は

『絶対嫌です』なんだけどな・・・

君があまりにも可哀想だから

今回だけは特別に許可してあげます」


現在わが家の冷蔵庫には

毒物兼腐敗物が貯蔵されています。


それって一般家庭としてどうなんですか。


姫様の腐海遊びにも

本当に困ったもんじゃ!


『ナウシカ』を読んだことのない方には

なんのこっちゃなオチで申し訳ありません

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