将を射んとすれば

まず馬ごと一刀両断。


私の好きな両津勘吉氏のお言葉です。


というわけで(わけがわからない)

最近の日本のエアロビクス事情を偵察ようと

近所のジムに出かけました。

いや、ズンバもいいんですけど

私の本分はエアロですから。


来月の誕生日を機に禁煙して

生活を健康的なものに改めたいとかなんとか

それを言い訳に今月一杯は

自堕落な日々を送ることに余念がないらしい

実弟(文系)をお供にしまして

(身内が相手なだけに悪口に遠慮がない私)

ジムの受付で体験入会の手続き。


で、別に弟には何の恨みもないわけですが

エアロのことなんて

何も知らない彼の無知をいいことに

「いいぜ、エアロは。男の挑戦だぜ。

まあ根性のないやつには無理だけどな。

だからお前にも無理かもな。

あれって割と知力も必要とするし。

じゃあお姉ちゃんが踊っている間、

君はランニングマシーンで遊んでいるといいよ。

うん、それがいいよ、身の程は知っておかないと!

君にエアロの味はわかるまいよ!」


弟、うっかりエアロ参戦宣言


あら、そうお?

じゃあ一緒に仲良く踊りましょうね!

と手に手をとって(表現に誇張アリ)

スタジオに足を踏み入れましたところ。


「・・・お姉ちゃん?先程貴方、

エアロは男の挑戦とかおっしゃっていましたが

・・・ここ、参加者は奥様方ばかりじゃないっ?

何なのこの女性比率の高さ!

というか、男は俺だけじゃないですか!」

「他の男の人はそのうち来るんじゃないの?

気にするな、床で腹筋でもして落ち着け」

「待って、しかもこのエアロ『中級』って書いてある!」

「だって『初級』じゃ私がつまらないんだもん、

大丈夫、インストラクターのお姉さんには

お前が初心者だって伝えておいたから」

「い、いつの間に・・・つか、俺、やっぱり

素直にランニングマシーンで走ろうかなあ・・・」


弟の気持ちもわからないではなかったのです。

でもね、男子たるもの

前言をそう簡単に翻してはいかんと思うし

・・・嘘です、ただ姉として

インストラクターの動きについていけず

ヘロヘロになって泣きを入れる

弟の姿を見てみたかったんです。


「ああ、そうですか、敵前逃亡ですか、

いや私は去る者は追いませんよ。

そういえば昔、もう10年前かなあ、

私はもうひとりの弟(体育会系)と

エアロのクラスに出たことがあったんですよ。

あいつもエアロなんて初体験だったけど

それなりに喰らい付いてきたわけですよ。

ステップなんて何一つ踏めないのに

恐れず怯まず投げ出さず・・・

何て形容するのかしらね、ああいうの

・・・潔いっていうのかしらね!

まあ兄弟ってのは似ないものだしね、うん」

「・・・何言ってるんですか、

俺だって別に逃げませんよ、踊りますよ、

・・・畜生、覚えてろ」


そうそう、弟なんて

姉の口先にはどうしたって適わないくらいで

丁度いいのよ!


そうこうしているうちにクラスが開始されました。


いや、やはり

東京のエアロはレベルが高いね!

スコットランドの近所のジムのアレとは

比べ物にならないよ、うん!

エジンバラやグラスゴーのジムは

またそれなりに違うらしいけどなあ・・・

私の住んでいるところは田舎だし・・・


ぴょんぴょん踊りながら

そんなことを考えていたのですが

ふと気がついて鏡で弟の姿を確かめると。


こいつ・・・ついてきているぜ・・・!


私も根性が捻じ曲がっているものですから

前もって『ステップタッチ』も『グレープバイン』も

何もかも弟には教えていなかったのですが

・・・それなのにこいつ、それなりに踊れているぜ!

生意気だ!


そういえばこの弟は

運動はそれほど得手とはしていないのですが

某楽器を長くやっているのですよ。

なのでイントラが

「次、ニーアップリピーター!」

とか叫ぶと、一瞬完全に動きを見失うものの

「はい、ここで三拍子!」とか

「マンボ、チャチャチャ!」とか

「カウント5で方向転換!」とか

そういう指示には

変に自信を持ってついてくるのです。


ええーっ!このクラス

『中級』とはいえ振り付け的には

『上級』に位置づけられる複雑さだぜ!

初心者が踊れちゃ駄目だと思うんですけど!


てか、お姉ちゃんはそういう君を見たくて

エアロに誘ったわけではないのだが!

(我ながらどこまで性根がひねているのか)


釈然としない思いを抱えつつも

その後筋トレとストレッチを済ませ

「じゃあそれぞれお風呂のあと5時に集合ね」

といったん弟と別れまして。


5時に待ち合わせ場所の受付に行きますと

弟は係の方に熱心な勧誘を受けていました。

その隣に私も腰を下ろしたのですが

係の方は私の顔を見ると説明を打ち切り

「では、そういうことで。

ご入会のご決断をお待ちしております、

本日はありがとうございました!」


え、どうして私の事は勧誘してくれないんですか。


「お前さては

お姉ちゃんが海外住まいだってばらしたな」

と帰り道に弟を問い詰めたところ

「どうして俺がそんなこと言うんですか。

俺に説明はじゅうぶんしたから

お姉ちゃんにこれ以上話をする必要はない

ってそういう向こうの判断だったんでしょ」

「その判断は変じゃないか?

ああいう場所に成人二人が連れ立って来たら

それぞれを勧誘するのが営業の筋だろう」


「・・・言いたくないけど

ジムの人は俺たちを夫婦だと思っていたんだよ」

「・・・そういう気持ちの悪い冗談は止せ!」

「冗談じゃないよ、だって俺たち苗字が同じで

住所も同じじゃん、で、親しそうでしょ、

あ、これは年上女房だなって思われたんだよ」


と、年上女房・・・!


私は本気で目の前が暗くなりましたよ。


あのなあ、こんな顔の似た夫婦がいるものか!

(私と弟は嫌になるほど同じ顔の作りをしています)

・・・この怒りをぶつけるべき相手は誰なんでしょう、

弟でしょうか、それともジムの受付でしょうか。


『ステップタッチ』『グレープバイン』

『ニーアップリピーター』は

エアロの基本ステップの名前です

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ちなみにエアロを踊る私の姿を見て弟いわく

「採点:90点です。

運動音痴の癖にちゃんと踊れています、

ある意味驚きました。

マイナス10点がどこから来たかというと

それは服装です、貴方お腹出しすぎ」



・・・だってさ・・・

運動用のシャツなんて

持って来なかったんだもん・・・!



まあ見苦しい腹回りではあったよな、

弟よ申し訳ない