日本への年末年始里帰り、

わが夫婦はいつもの通り

エールフランス航空を利用しました。

23時25分パリ発、JALとの共同運航便です。


機内に乗り込むと

制服を着た客室乗務員の皆様が

「ボンソワール、マダーム」

「こんばんは」

とフランス語と日本語で

交互に挨拶してくださいます。


さて、全員の搭乗が完了し

乗客人数のカウントも終了した様子なのに

何故か飛行機が動かない。

そこへ機長のアナウンス。


「えー、現在機体が凍結しましたため

離陸を見合わせております。

解凍が済み次第離陸いたします。

なお解凍作業に際しましては

大きな音・振動が客室の皆様にも

感じられることと思いますが、どうかご心配なく」


巨大なドライヤーみたいな機械が

外で唸りをあげておりました・・・

あんな目にあったのは初めてです、

っていうか飛行機って凍るものだったんですね!


そんなわけで

離陸予定時間を1時間ほど過ぎても

飛行機はまだ滑走路を離れませんで。

時間を潰すためか客室乗務員さんが

お客にウェットティッシュを配り始めました。


「お客様、お手ふきでございます」

「ムシューシルヴプレー」

みたいなことを言いながら

機体の前のほうから

きれいな日本人の乗務員さんがやって来まして。


「お客様、お手ふきでございます」

と私に微笑んだ後、

夫(英国人)に目をやりにっこりと

「どうぞ、お手ふきでございます(日本語)」


乗務員さんが行き過ぎた後

夫は小首をかしげて

「何故日本語だったのかな?

僕がフランス人に間違えられるってのは

理解できるんだけど・・・

僕、日本人にみえるかしら?」


「・・・ほら、私の隣に座っているし、

日本語が話せる欧州人に見えたんでしょう」

「そういえば飛行機に乗り込むとき、

僕、明らかにフランス人の乗務員さんに

片言の日本語で

『コンバンワー』とも言われた気が・・・」

「それは偶然じゃないか?」


そんなくだらないことを言いつつ

手を拭いた後、夫は新聞を読もうとしました。

しかし頭上の読書灯がつかない。


「・・・あれ?これ、壊れているのかな?」

「・・・おかしいね、私の席の読書灯もつかないけど

他の席ではちゃんとついているみたいだしね」

「僕、尋ねてみようと思います」


そこに先程とは違う乗務員さん(やはり日本人)が

すっと通りかかったので夫は彼女を呼びとめ

「すみません、

僕の席の読書灯がつかないんですが、

これは故障ですか?(英語)」


乗務員さんは夫の席の読書灯ボタンを

何度か押した後、夫の目を真っ直ぐ見て

「お客様申し訳ありません、

こちらは一度リセットしないと

使用していただけません。

リセットは離陸後になってしまいますので

それまでは申し訳ないのですが

読書灯をお使いいただくことが出来ません。

まことに申し訳ありません、ご理解ください

と、たいへんはきはきと

日本語で説明してくださいました。


あんなにきょとんとした夫の顔、

私は久々に見ましたよ。


後から聞きましたら

夫は彼女が何を言ったか

ほとんど聞き取れなかったそうですが、

それでも文中に何度か登場した

「申し訳ありません」だけは理解できたそうで、

「えーと・・・じゃあ僕、

今は読書灯が使えないんですか?(英語)」

「はい、飛行機が離陸いたしましたら

機内全席をリセットいたしますので、

それからはお使いいただけると思うんですが

それまでは無理、ということになります(日本語)」


・・・乗務員さん、何故そこで

その会話のおかしさに気づかない。


想定外の事態にぽかんとしているわが夫を見て

乗務員さんは不安げに私を振り返りました。

お嬢さん・・・

貴方、もしかして『天然』とかよく言われます?


「あー・・・わかりました、

彼には私からもう一度説明します。

離陸までは読書灯は使えないってことですね」

「その通りです、申し訳ありません」


彼女が立ち去った後

夫は心の底から混乱した表情で

「・・・ねえ、彼女は何故日本語で・・・?

僕、ちゃんと英語で質問をしましたよね?」

「ええ、貴方は英語を話していました」

「で、彼女は僕の質問内容を

ちゃんと理解していましたよね?

つまり彼女は英語を使える人ですよね?」

「そう推察されますね」

「じゃあどうして

日本語で僕に答えるんですかっ!」


そんなの私にもわかりませんよ!


「エールフランスはフランス企業だから

これは英国人いじめなのかしら・・・」

被害妄想も大概にしようぜ、このご時世

航空会社も客の選り好みは出来んだろ」

「いじめじゃないとしたらアレは何?

新種のジョークですかっ?」


さあ・・・

しかし本当にあれは何だったのでしょう。


嫌がらせではないと思うんですよ。


結局離陸しても

我々の席の読書灯は直らなかったのですが

この乗務員さんはそのことについて

何度も謝罪してくれた後

「読書灯がどうしても必要でしたら、

空いているお席をお探しします!」

流暢な日本語で提案してくれまして・・・

ええ、夫の目を真っ直ぐに見詰めながら・・・


そしてその後のミールサービスでも何故か

「お魚にしますかお肉にしますか」

「お飲み物は何がよろしいですか」

をすべて日本語で尋ねられていたわが夫。


本当にあれは何だったのでしょうか。


私が気づいていないだけで

夫ってもしかして日本人顔なのかなあ?



あれが冗談だとしたら

フランスジョークの奥は深いんだぜ

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つまりこういうことです

パリ発ヘルシンキ行きのフィンランド航空に乗って

乗務員さんに英語で質問をしたら

何故かフィンランド語で答えられてしまったような・・・


横から見ているぶんには楽しい混乱でした


それにしても本当に何だったんだ