地元紙でのインタビューということで、シゲーリンもつい本音を漏らしてしまったのでしょうか。
財政については「(諸外国から)破綻はないと信頼してもらっている。」
消費税の引き上げについては「前回8%に上げた際、消費がぐっと落ちた。」
と漏らすだなんて。
とは言え、発言の真意が今一つ掴みきれないのも事実。
財政破綻については続く発言として「経済がしっかりしており、社会保障の充実度に比べ税金を十分に取っていないと見られているからだ。」と述べていますが、これは、”いざとなれば、徴税余地が充分に残されているから(財政が)信認されている”と言いたいのでしょうか?
でも、そうなると、「増税して徴税余地が無くなれば無くなるほど、財政の信認は低下する」という意味にもなると思うのですが。
確かに、記事タイトルにあるように社会保障制度の見直しは必要でしょう。
ただし、その見直しは、負担割合の見直しではなく、むしろ受益(サービス)の見直しが求められているのではないでしょうか。
『再考・医療費適正化』(印南 一路著)によれば、
数ある医療費増要因のうちで最大かつ安定的なものは医師数であり、社会の高齢化は主因ではないと指摘されています。
(突き詰めて言えば、医療行政の過度な自由化による制限のない医師数の増加および医師数の著しい地域間格差(大都市には過剰に、地方は過疎に)が要因であるそう。)
財務省が真に”持続的な社会保障制度の構築”を目指しているならば、消費増税よりも、まず真っ先に医師の都道府県別定数制の導入など医療制度改革に乗り出すべきでは?
それもせずに、負担を際限なく求めるのはお門違いも甚だしい。
(以下抜粋)
愛媛新聞(9月11日)
霞が関の群像 愛媛ゆかりの官僚に聞く
(3)財務省主計局長 岡本薫明氏(新居浜出身) 社会保障の見直し必要
―日本の財政の現状は。
当初予算の規模は1990年度の66兆2千億円から2017年度で97兆5千億円に増えた。制度が決まっている社会保障が約20兆円、借金返済費用が約10兆円増える一方、地方交付税交付金や公共事業などの経費は横ばいで、固定費の割合が大きくなっている。
歳入の公債金(国債発行額)も90年度の5兆6千億円から17年度は34兆4千億円となった。将来に資産が残る建設国債も含まれるが(歳入を穴埋めする)赤字国債の割合がとても大きい。国と地方の借金が計1千兆円を超えている。対国内総生産(GDP)比の債務残高は主要国の中で高く、財政破綻寸前に追い込まれたギリシャより高い。
―財政破綻の恐れは。
(諸外国から)破綻はないと信頼してもらっている。経済がしっかりしており、社会保障の充実度に比べ税金を十分に取っていないと見られているからだ。
―社会保障費の増大にどう対応していくか。
英国の公的医療は基本的に自己負担不要だが、かかりつけ医が決まっており、手術は順番待ち。日本はどの病院に何回行ってもよく、かかった分だけ保険請求がある。介護も初期段階で負担が少なくて済む各種サービスがある。国民には非常に使い勝手がいいが、高齢化に伴い今後、費用が急激に増えていく。年齢に応じ負担割合を変える制度を作った時代から社会構造が変化しており、受益と負担の見直しが必要だ。経済的余裕がある高齢者には若い人と同水準の負担を求めてもいいのではないか。
―19年10月に消費税率を10%に引き上げる予定だ。
消費税は全額社会保障の財源になる。引き上げないと制度を保てない。前回8%に上げた際、消費がぐっと落ちた。よく検証し、10%に上げる際は経済や生活に極力影響がないよう準備せねばならない。予定通り引き上げてほしいが、最終判断は政治だ。
―財政のあるべき姿は。
旧大蔵省に入った1983年ごろは「財政非常事態宣言」が出ていた。国債残高が100兆円になり、赤字国債は将来に負担しか生まないとして赤字国債脱却を掲げていた。経済危機や金融危機を乗り越える必要はあるが、ここ20年、財政規律が緩んできている。昔に比べ赤字国債が問題だと言われなくなった。財務省は厳しいことを言うと見られているが、将来世代へのつけ回しはやめねばならない。
【おかもと・しげあき】新居浜市出身。愛光高、東大卒。1983年大蔵省入省。財務省主計局次長や官房長などを経て2017年7月から現職。