Q.なぜ、レンゲは田んぼから消えたのか?(伊佐沼) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

 

2年弱ぶりに伊佐沼(川越市)に行ってまいりました。

本来この時期は東京湾のシギ・チドリを求めて干潟散策に努め、

一部の例外を除いてあまり内陸部には足を運ばないのですが、

こういうご時世では致し方ないでしょう。

 

なお、この日は最寄りの南古谷駅から徒歩で向かいました。

前回はバスでしたが、今回は約30分かけて徒歩で。

まあ、避けられる「密」は避けるというちょっとした努力です。

(窓の開いているバスにそこまで危険があるとも思えませんが)

道中はほとんど田畑だけですが、駅前の民家ではバラの植栽も(右)。

 

 

 

 

 

伊佐沼に到着。前回来たのは6月下旬ですので

季節としては2ヶ月弱も前倒しとなりました。

前回撮った時にはコアジサシとセイタカシギに遭遇していましたが

4月下旬と6月下旬では見られる鳥も大分異なります。

よって今回も無収穫を覚悟していたのですが……。

 

 

 

 

 

幸運にも、夏鳥であるコアジサシに会うことができました。

(上の写真で、流木に2羽とまっているのがわかるはずです)

 

例年、コアジサシといえば小田原の酒匂川河口域で

集団営巣している姿を撮影しています。もちろん、今年も行く予定です。

緊急事態宣言について、そもそもGW明けの解除はないと睨んでいましたが

5月末に関しては高確率で解除され、県外への移動もできるかと思われます。

コアジサシの観察期は6月以降。十分に間に合うはずです。

 

 

 

 

 

水面を走るように移動するカイツブリ

飛びそうに見えて飛ばないところがポイント。

 

 

 

 

 

 

逆に時期が早いことが幸い(?)したといいますか

この時はまだ冬鳥のカモたちが残っていました。

ヒドリガモ(右)やハシビロガモも見られましたが

特にコガモ(左)が多かったように感じます。

 

 

 

 

 

池の水面に浮かんだ何か(多分植物の種)を夫婦で食べるコガモ

この伊佐沼は釣り場として有名で、そのせいで水質があまりよくなく

岸辺に枯れた植物の枝などが浮かんで水面を覆っており

ビジュアル的には正直イマイチなのですが、それはあくまで人の都合であり

彼らにとっては然程気にすることでもないのかもしれません。

(というか下手に水面を掃除すると糧を奪うことになり、抗議される可能性も)

 

 

 

 

 

冬鳥といえば、こんな小鳥もまだ残っていました。

今冬全く出合う機会のなかったアトリです。今年は外れ年だった模様?

かなり逆光だったので思いきり明るさを上げてみましたが

色が大分飛んでしまったのはちと残念。

 

 

 

 

 

冬鳥がまだ残っている一方で、夏鳥も既に飛来していました。

田んぼをウロウロしているコチドリです。

干潟を好むシギ・チドリの中では、例外的に内陸を好む鳥。

一昨年撮影したセイタカシギも同じく内陸に飛来していたわけですが

残念ながらちょっと時期が早かったようです……。

(本来であればセイタカシギのメイン飛来地は干潟ですが)

 

 

 

 

 

 

伊佐沼はそこまで広い水場ではないため、

一周するのにも然程時間はかかりません(1時間あれば十分)。

池の北側には公園があり、左写真のように花壇のある所も。

モンキチョウ(右)ほか昆虫も多く飛来します。

 

こちらの公園には若干子供連れなどが集まっていましたが

密集しているというほどのものではなかったように感じます。

後述する伊佐沼公園に比べれば気にするほどのものでもなかったかなと。

あちらは遊具が多いため、一部に子供たちが集中していました。

(今はもしかしたら遊具が立入禁止になっているかもしれませんが)

 

ちなみに伊佐沼の周囲には田園地帯が広がっています。

6月になると一面水が張られ、2年前にはそこでセイタカシギを確認しています。

では、この時期の田んぼがどうなっているのかというと……。↓

 

 

 

 

 

ごく一部の田んぼのみではありますが、レンゲの花が開花しているところも。

この花、最近あまり目にする機会がないと思う方も多いのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

耕す前の田んぼに、このように昔ながらのレンゲ畑が広がっているところも。

このレンゲ、実はイネとほぼ同時期に大陸から渡ってきた外来種で

田んぼの休眠期に意図的に開花させ、耕す際にレンゲごと漉き込んで

肥料(いわゆる緑肥)にしてきたそうです。今回調べて初めて知りました。

(それ以前にイネとレンゲが外来種だと知らなかった人が多いかも)

 

上記の通り、最近では休眠期の田んぼでレンゲを見る機会はかなり減っています。

大きな原因の一つとされているのが、戦後に化学肥料の使用が増加したため

緑肥としてわざわざレンゲを育てる必要がなくなったということ。

(戦前は化学肥料が貴重でなかなか入手できなかったそうです)

実際、これが主要因だという記述がWeb上の方々に書かれてあります。

 

しかし気になるのが、近年有機栽培が広く採用されるようになったにも拘らず

依然としてレンゲの遭遇率が低いということ。田んぼでこれを育てる農家も

相変わらず少ないままのようです。「それはなぜ?」と追究してみると……。↓

 

 

「レンゲを漉き込むより市販の有機肥料を使った方が効率がいい」

「いちいちレンゲの種を蒔くコストがもったいない(人も少ないし)」

「田んぼで花咲かせても自己満で誰も得しないと思われている」

「そもそもレンゲの種が入手しにくい(楽天でも売っていますが)」

 

 

ほか、色々と想像できる「理由」はありますが(あくまで憶測です)

とどのつまりは農家の都合ということでしょう。爆  笑

化学肥料の多用は土のためにもあまりお勧めできませんが

それ以上のことはあんま外野が要求しちゃいけないかなと。

ただでさえ人材不足しているんだし、収穫量が何より大事でしょうしね。

 

ただし、収穫量を主目的としていない里山系の公園の田んぼでは

来園者に花を楽しんでもらいつつ、昔の農法を学んでもらう手法として有効かも。

加えてレンゲは蜜源植物としても優秀なため、公園内でミツバチを飼う際には

ハチミツ採集の強い味方にもなってくれるはずです。

 

 

 

 

 

さて、帰る前に上でちらと触れた伊佐沼公園へ。

沼の西側に位置しており、ごくシンプルな市民公園という印象ですが

ちょうどツツジが満開になっていました。

 

 

 

 

 

 

花ある所には、昆虫もどこからともなく訪れるもの。

クマバチ(左)とニッポンヒゲナガハナバチ(右)です。

クマバチはここ2週間くらいで急激に増えてきた印象がありますが

ここから秋辺りまで結構長~いお付き合いになります。

(ニッポンryの方はそろそろお別れです)

 

 

 

 

 

飛んでホバリングしているクマバチを、粘って撮影。

イマイチな写りですが、顔に黄色い部分があるのがわかります。

これはオスの特徴。要するに毒針は持っていないということです。

 

 

 

 

 

ちなみにツツジも蜜源植物として有効であり、ミツバチもよく飛来します。

ここの界隈では異様にニホンミツバチの数が多かった気がしますね。

(ただし一般に養蜂で使われるのはセイヨウミツバチです)

 

 

 

 

 

同じくツツジの花を訪れていたホソハリカメムシ

名前の通り、肩のあたりが針状に尖っています。

印象に残りにくいので新顔かと思いきや

過去にちゃんと撮影記録がありました。

 

 

 

コアジサシには会えたものの、やはりセイタカシギを確認できなかったのが残念。

6月になったらもう一度訪ねてみようかとも考えていますが

緊急事態宣言が明けたらさっさと他県に逃げるかもしれません(爆)。

特に当初からの予定だったウミウシ捜索ができていないことで相当フラストレーションが溜まっていますので(呪)

 

 

 

 

 

戸田公園に帰還後、パティスリーローブでまたケーキを購入。

こどもの日仕様ですが、買ったのは38歳のおっさんです

 

 

 

 

【今日のカワセミ君】

伊佐沼で撮影。上記の通り水質はイマイチですが

カワセミがいるということはそこまで悲観するほどでもないのかも。

遠距離で陰になっていたため、写りの方はイマイチです。

 

 

 

【4/29 伊佐沼で撮影した生きもの】

鳥類・・・アトリ、オオバン、カイツブリ、カルガモ、カワウ、カワセミ、カワラヒワ、キジバト、コアジサシ、コガモ、コチドリ、セグロセキレイ、ツバメ、ハクセキレイ、ハシビロガモ、バン、ヒドリガモ、ヒバリ、ムクドリ

昆虫類・・・アオスジアゲハ、アメンボ、クマバチ、ナナホシテントウ、ニッポンヒゲナガハナバチ、ニホンミツバチ、ハグロケバエ、ベニシジミ、ホソハリカメムシ、モンキチョウ、ヤマトシジミ

その他・・・アカミミガメ、アメリカザリガニ、タニシ