近くに降りられないビオトープの長所・短所(境川遊水地公園) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。


湘南台駅側から境川遊水池公園へ。
途中、カワセミをモチーフとしたタイル画を見かけました。
方々で見かけるようになった今でもなお、清らかな水辺の象徴です。





ここの公園には3つの遊水地があります。
湘南台から来ると、まず境川最上流に隣接する今田遊水池に到着します。
実はここ、最も最近整備された遊水池でして、
それゆえに植物もあまり繁茂しておりません。

また、写真のように柵が設けられてはいるものの
この柵に近づくことすらできなかったりします。





人が近づかないゆえでしょうか、
警戒心の強いオカヨシガモが集団で飛来していました。
のんびり浮かんでいましたが、上記の通りかなりの距離がありますため
あまり満足な写りとはいきませんでした。








同じ遊水池にて。
死んだ魚らしきものをがっちりと押さえているトビ
……いや、もしかしたら自分で狩ったのかもしれませんが
ミサゴじゃなくてこれはトビですし……ねぇ……(ゲス顔)。








そのトビの近くにはアオサギの姿が。
まさか上の魚はコイツからかっぱらったものじゃあるまいな?





さて、上の遊水池はいわゆるビオトープとして管理されており、
人が立ち入ることのできない生きものの暮らす場となっています。
(ここでは基本「遊水池=ビオトープ」と考えてOKです)

この公園にある遊水池は全部で3つ。
上流より順に、今田遊水池下飯田遊水池俣野遊水池となっています。
上記の通り、今田遊水池は離れた上方から見下ろせるのみで接近不可能。
下飯田・俣野はそれぞれ柵こそあるものの、せいぜい数m程度の距離なので
場所や運にもよりますが結構鮮明に鳥を撮ることができます。





電線に止まるモズ
この写真を拡大するとわかるかと思いますが、既に雨が降り始めており
とても傘ナシでは歩けないレベルでした。
本来であればこんな時は散策自体を切り上げるべきなのでしょうが
折角ここまで来てしまったわけですし、もう少し歩いてみることに。





今田遊水池と下飯田遊水池の境目に位置する橋。
この橋の上からは、かなり高い確率でカワセミが見られます。





こちらは俣野遊水池近く。
写真左の柵の向こう側が遊水池、すなわちビオトープです。

雨だったため、この日は野球している少年の姿もありませんでした。





ヨシの茎をかじり切り、獲物となる虫を探すメジロ
シジュウカラ、オオジュリンなんかもよくやる食事手法です。
いつぞやと同様に目つきが厳しいですね。




 
俣野遊水池に現れたアオジ(左)とバン(右)。
面積の最も狭い俣野遊水池ですが、鳥までの距離はもっとも近く
バードウォッチングには適しています。





管理センターからは、最も巨大な下飯田遊水池が望めます。
もっとも距離がありすぎるし、ここに三脚立てるわけにも行きませんので
バードウォッチャーが常駐するということはさすがにありません(汗)

ん? 窓の外をよくよく見てみると……。





オオバンの群れが陸に上がり、食事をしていました。
この公園では3つの遊水池共通でよく見られる光景です。








おっと、キジ♂が現れました。
四季を通じて常駐しているとはいえ、よく出るのは春。
こんな冬場に見かけるのは少し稀なことだったりします。

四六時中人の通る公園だけに、ここの個体は警戒心が薄め。
間違いなく私の姿は見えていたはずですが、こちらを注視することもなく
平然と地面で食事をとっておりました。

カワセミ、ノスリ、アオサギなどと同様、
見慣れていてもやはりその都度撮ってしまう鳥ですね。







天王森泉公園の野草園にて。
フクジュソウとスイセンが見頃でした。
まだミスミソウあたりは開花していませんでしたが
先週散策しに行った野川公園では既に咲いている株もありました。
バラやサクラ同様、やはり全体的に植物の開花期が前倒しになっています。







決して珍しいわけではない(貴重というわけではない)
キチョウの存在を知らせる看板がありました。
以前は見かけなかった気がしますので、今年の秋~冬に取り付けられたのかも。
生きものに対する関心の高まりを感じますね。



さて、生きものへの関心の高まりの象徴といえばやはりビオトープ。
上記の通り、ここ境川遊水地公園のビオトープはいずれも立ち入りを制限し
今田遊水池に至っては近づくこともできません。

ビオトープのある公園は多々ありますが、近づけるか否かは場所によります。
それぞれ長所・短所がありますが、一長一短でどちらが良いとは言い切れません。
以下、ちょっとまとめてみました。



【ビオトープに近づけないことによるメリット】
1.野鳥や小動物を刺激しないため、より多くの生きものを誘致できる。
2.ゴミの散乱などを軽減できるので、管理作業がしやすくなる。
3.植物を採集されにくい。
4.餌やりができないので、より自然に近い形で生きものが暮らせる

【ビオトープに近づけないことによるデメリット】
A.生きものまでの距離が遠すぎて単純に観察がしにくい。
B.自然を身近に感じにくいため、利用者の愛着がわかない。
C.利用者の目が行き届かないことにより、管理者の責任感が薄くなる恐れがある。
D.人がいないせいで逆に治安が悪化する可能性がある(ホームレスの侵入など)。


デメリットのCについては一見こじつけのように見えるかもしれませんが
実はこれ、ビオトープ全般において言えることです。
自然地の管理をするのもやはり“人間”ですので、人目につかなくなれば
どうしても管理にほころびが生じ、雑な部分が出やすくなるのです。
また、多摩川河口域の件を考えるとDもかなり深刻です。

生きものへの影響を最優先するなら接近を強く制限する方が良いのでしょうが、
やはりここは人のために作られた公園。“共生”もまた同レベルに考えねばなりません。
そもそも自然公園とは、人が自然を身近に感じ、
特に子供たちを対象に自然への興味を促すことが目的にあって然るべきもの。
そのためには、ビオトープが人のいる空間から大きく隔てられていてはいけないと、
個人的にはそう考えております。あくまで私見ですので、参考までに。



【今日のカワセミ君】

水門近くの河原に現れました。
こんな小さな石からでは水中の魚は見えませんので
すぐに別の高い足場に移動してしまいました。



【2/5 境川遊水地公園で捕獲した生きもの】
アオサギ、アオジ、オオバン、オカヨシガモ、カイツブリ、カルガモ、カワウ、カワセミ、カワラヒワ、キジ、キジバト、コガモ、コサギ、コチドリ、シジュウカラ、ツグミ、トビ、ハクセキレイ、ハシビロガモ、バン、ヒヨドリ、ホオジロ、メジロ、モズ

※雨天で傘持ちだったゆえ、今回はポケモンの記録はありません。