奥秩父のキャンプ場は生きものの宝庫(ネイチャーランド浦山) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

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雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

先日の奥秩父編の続きです。

ニホンザルと遭遇した場所からさらに山奥へ進んだ先、

行き止まりにあるデイキャンプ場がこのネイチャーランド浦山です。

奥まった山中ながらも駐車場はありバーベキューのできる施設ですが、

「ネイチャー」という単語の示す通り自然体験・探索にもピッタリ。

エリア内をぐるりと巡るだけでも、山中ならではの多彩な生きものに遭遇できます。




 

敷地内の林。真夏ならカブトムシやクワガタなども期待できそうですね。

下草も豊富で緑の濃いゾーンですが、それだけにハチやヘビなども出やすいのでその点は注意。

右は、林内で遭遇したヤマカガシ。顔だけ出しています。




小川も流れています。近くの川から水を引き込んでいる模様。

澄んだ流水は、トンボなどの小動物を育む源です。

あくまで小さな流れですので魚はおらず、カワセミなどはさすがに来ません。

すぐ近くに渓流があるので、探すならそちらの方で。




様々な背丈の草むら。こうして高低差をつくることでそれぞれの環境に適した生きものが棲み、

生物多様性が向上します。北本自然観察公園など、多様性を重視する自然公園では既に

当然の如く採用されている草刈り手法ですね。



草の少ない、小石の広がる空間も。上の草むらに比べると植物はまばらですが、

これはこれで乾燥した場所を好む生きもの(クルマバッタモドキなど)には貴重な空間。

初夏に紹介した希少種のキバネツノトンボなんかも、こういう環境を好む種ですね。


どうもこのことがあまり深く認識されていないようで、

写真のような荒地は真っ先に開発対象にされている感があります。

森だけ守れば良いってもんじゃないんですけどね……これは前にも書いた気がしますが。




草むらで交尾中のカノコガ。ガにしてもチョウにしても、

大体こうやってお尻だけくっつけて互いに違う方向を向くスタイルですね。




 

このネイチャーランドにはトンボも多いのですが、そのほとんどが写真のミヤマアカネです。

首都圏では狭山丘陵まで行かないと撮影できなかったのですが、ここでは数え切れないほど。

ミヤマ(深山)の名の通り、こうした山奥ではメジャーな存在ということか……。

以前も書きました通り、翅の茶色い帯が見分けのポイントです。




上にも書きましたが、すぐ近くに川が流れています。

かなり流れが急ですし、すぐそこは滝ですので水遊びは危険。

あくまで渓流景観を楽しむだけに留めておきましょう。



すぐ下流に滝がある一方、上流にもまた大きな滝が!

激しい水しぶきを上げる滝景観は必見でしょう。

その水音は、ネイチャーランドのどこにいても聞こえてくるほどです。




 

河原に咲いていた花に、先日紹介したミドリヒョウモンが多数飛来していました。

本種もまたミヤマアカネ同様に、奥秩父ではごくメジャーな種のようです。





前回の記事でお見せしたアオバセセリは、ここで撮影したものです。

同じ花で蜜を吸っていました。ちょくちょく移動するので撮るのに苦労しましたが。



 

ちなみに、上の河原の写真の中にアベック(古)がいるのがわかると思いますが、

近くで私が岩陰を弄っていたところ、突然デカいトカゲが飛び出してきましてね。

あろうことか超特急で彼女の方に走り出したものだから、悲鳴をあげられてさあ大変。

彼氏の方に因縁でもつけられるかと思いきや、あいにく笑うだけで特におとがめなしでした。


驚かせてサーセンと思いつつ、トカゲを追いかけて撮影を続ける私も大概かと……。

とりあえず、一番の被害者が寝床(?)を荒らされたトカゲであることは間違いないか。




一方、渓流ならではの生きものにも遭遇。

黒くて地味な外見の鳥ですが、これはカワガラス。河川の上流域に暮らす鳥です。

名前はあくまでカラスに似ているからというだけで、カラスの仲間ではありません。


遭遇率 … 2

インパクト … 3

美しさ … 2

俊敏性 … 5


急流に飛び込んで水生昆虫や小魚などを捕らえる鳥ですが、

カワセミのように頭からきれいにダイブすることは滅多になく、お尻から派手に飛び込みます。

スタイルなど気にせず、とにかくなりふり構わず水に入って獲物をとる……といった感じ。

水中の生きものの少ない上流域では、そうでもしないと食事にありつけないのかもしれません。



西武秩父からネイチャーランドまで、途中バスを使いつつも結構な距離を歩きましたが、

それに見合っただけの収穫はありました。アオバセセリ、カワガラス、ニホンザル、ミドリヒョウモン

いずれもこの日初めて撮影できた新顔。また、緑のコカマキリミヤマアカネの群れなど、

下界(爆)では滅多に出会うチャンスのないものにも遭遇しました。


なお、先日火曜日(23日)に再度足を運びましたが、そちらでも色々面白いものが撮れました。

詳しくはまた後日ご紹介いたします。



≪9/7 西武秩父~ネイチャーランド浦山で撮影した生きもの≫

鳥類・・・カワガラス、トビ、ヒヨドリ、ヤマガラ

昆虫類・・・アオバセセリ、アキアカネ、イチモンジセセリ、ウラギンシジミ、オオカマキリ、カノコガ、キタキチョウ、キマダラセセリ、クマバチ、クルマバッタモドキ、コカマキリ、コミスジ、セスジツユムシ、ツバメシジミ、ツマグロオオヨコバイ、ツユムシ、トックリバチの一種、ヒナバッタ、ヒメウラナミジャノメ、ベッコウハゴロモ、ミドリヒョウモン、ミヤマアカネ、ヤマトシジミ、ヤマトシリアゲ

その他・・・ニホンザル、ニホントカゲ、ヤマカガシ