ポリーニは、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ(OPP.101,106,109~111)の再録音を完成させているが、その中でも白眉なのはこのハンマークラヴィーアだと思う。80歳という年齢を感じさせない見事な演奏だ。再録音であるが、45年前の旧録音と比べても、まったく遜色がない。敢えて言わせてもらえば、旧録音よりも優れた演奏であると言っても過言ではないと思う。少くともMQAフォーマットによる録音が、音質上の優位を際立たせているのは疑うべくもない。

寛容な人間にも、いろいろなタイプがあると思う。中には寛容な人間になどなりたくもないのに、やむを得ず寛容になっている人がいる。言わば自分の意志に反して寛容なのである。別の言葉で言えば、彼は無気力で面倒くさがり屋なのである。煮え切らないお人好しにすぎない愚物であると言ってもよい。こういうタイプの人間をあまり見かけないのは、こういう性質の人は、遅かれ早かれ病気であると見なされ、社会から隔絶してしまうからである。そして、目的のためには手段を選ばず的な治療を受けて、とにもかくにも社会に復帰するのである。我々が目にするのは、こう言った事実上の廃人なのである。