赤穂に来て一ヶ月 | 行雲流水~へき地の一人病理医の日常

行雲流水~へき地の一人病理医の日常

兵庫県の赤穂市民病院に勤務する病理医です。学士編入学を経て医学部に入学し、2004年卒業。病理専門医、細胞診専門医です。

 大変ご無沙汰しています。amebloにはまったく触れてもいなくて、メッセージやコメントなどみていませんでした。申し訳ありません。

 予定通り、3月末で近畿大病院を退職し、兵庫県赤穂市にある赤穂市民病院に異動しました。

 赤穂市民病院は、新快速の始発、終着駅の播州赤穂駅から徒歩20分。兵庫県からはへき地医療拠点病院に指定されている病院です。

 また、地域がん診療拠点病院にも指定されています。一言で言えば、赤穂市民病院は播磨地区西部や岡山県東備地区のがんの治療を担う病院です。

 地域がん診療拠点病院として認定される要件には、病理診断のことが多く挙げられています。ちょっと長いですが引用します。

「がん患者の病態に応じたより適切ながん医療を提供できるよう、キャ ンサーボード(手術、放射線診断、放射線治療、薬物療法、病理診断及 び緩和ケアに携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の専門を 異にする医師等によるがん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換 ・共有・検討・確認等するためのカンファレンスをいう。以下同じ。) を設置し、その実施主体を明らかにした上で、月1回以上開催するこ と。なお、キャンサーボードを開催するに当たっては、以下の点に留意 すること。
i キャンサーボードには治療法(手術療法、薬物療法、放射線療法 等)となり得る診療科の複数診療科の担当医師が参加すること。ま た、緩和ケア担当医師や病理医についても参加することが望まし い。」

術中迅速病理診断が可能な体制を確保すること。なお、当該体制は遠隔病理診断でも可とする。」

病理診断又は画像診断に関する依頼、手術、放射線治療、薬物療法又 は緩和ケアの提供に関する相談など、地域の医療機関の医師と診断及び 治療に関する相互的な連携協力体制・教育体制を整備すること。」

専従の病理診断に携わる常勤の医師を1人以上配置すること。なお、 当該病理診断には、病理解剖等の病理診断に係る周辺業務を含むものとする。」

 なお、専従とは「当該診療の実施日において、当該診療に専ら従事していることをいう。この場 合において、「専ら従事している」とは、その就業時間の少なくとも8割以上、 当該診療に従事していることをいう。」とのことです。

 長くてわかりにくいですが、地域のがん診療を担う拠点病院には、常勤の病理医が必要ということです。

 その常勤病理医として、私が赤穂市民病院に赴任したわけです。

 言ってしまえばへき地の病理医です。更にいうと、病理医の同僚はいないので、へき地の一人病理医ということになります。

 都会でも病理医は不足しているのに、なぜわざわざへき地?という疑問もわくと思いますが、前にも書いたとおり、2009年から2011年まで2年間、この病院に勤務していたことが大きな理由です。


 人口5万人を少し切った市ですが、全国的にも忠臣蔵で知られる赤穂藩があった場所ですから、歴史好きにはたまりません。

 赤穂の一人病理医です、といえば、ああ、あの赤穂ですか!と初対面の人にもすぐ分かってもらえますしね。そのあと病理医って何かを説明しないといけませんけど。

 へき地のがん診療連携拠点病院で一人で病理診断を担うという責任の重さに身が引き締まる思いがすると同時に、地域の方々の健康のために貢献できるということに、大きなやりがいを感じています。

 私の着任と同時に、病理診断科を開設していただきました。以前は病理科だったのですが、標榜科名にしていただきました。

 病院からも期待いただいているようで、ホームページや市の広報でも病理診断科開設を宣伝していただきました。


 一人で勤務なんて不安だし大変でしょう、と言われる方もいらっしゃると思いますが、10年前に勤務したときにはなかった遠隔病理診断(デジタル病理診断)が導入されていること、一人病理医支援のAI(人工知能)の開発が進んでいることが大きな安心材料です。


 こうした技術はへき地でこそ生きます。赤穂はまさに課題先進地なわけです。

 というわけで、まだ赴任一ヶ月ですが、非常に充実した日々を送っています。かつて勤めていた病院だし、ずっとアルバイトで通っていた病院なので、勝手知ったるという感じですが、8年ぶりの常勤ですから、人も場所も変わってます。とうがたった新人として雑巾がけからスタートです…大げさですね。


 赤穂生活も楽しく満喫しています。食べ物も美味しいです。

 仕事帰りにお城を散策するのも日課になっています。





 まだ一ヶ月なんで、これからが本番です。地域住民の皆様のために病理診断の質の向上に全力で取り組んでいきます。また、情報発信ももっとやっていきたいと思います。