なぜカンボジアか…。
その中で、病理医がいないと、検診後の診断、治療がままならないということで、病理医の育成が急務になりました。
そこで、病理医育成のコースが立ちあがりました。一期生が3年の養成課程を終え、二期生を募集しているとのことです。
国立国際医療研究センターフェースブックページより引用します。
「近年、カンボジアでは疾病構造の変化と、医療技術の進歩により、より質の高い診断を求めるために病理診断に対する需要が高まってきました。しかし、カンボジアの病理の現状として、1400万人の人口の国内にいる病理医は現役でわずか4名、病理検査の可能な公立病院は3施設しかありません。病理技師は15名程度いますが、技師学校では病理を学ぶ機会がなく、職場で仕事を覚えている現状です。大学側としても、国内で教育を行うための教員の人材不足に悩まされています。 そこで我々は、2017年より医療技術等国際展開推進事業を活用して「カンボジア病理人材育成・体制整備事業」を開始し、病理専門医と技師の技術指導や講義、本邦研修などを行い、カンボジア病理のシステム強化に携わってきました。」
病理医育成事業に携わっているのが、私と同じ近畿大学に所属している若狭朋子先生であり、その関係で、近畿大学がカンボジアの健康科学大学と協力協定を結びました。
そこで、近畿大学の病理医として私に白羽の矢が立ち、若狭先生とともにカンボジアに行ったわけです。
私に課させた任務は、カンボジア人医師、臨床検査技師たちに、免疫染色のベーシックを講義するということ。
免疫染色の専門家でもない私がそんな講義できるのか…。大いに悩みましたが、まだ限定的な免疫染色しかできないカンボジアで、免疫学の基礎も含めた免疫染色の理論を教えればよいと言われ、それならばと引き受けた次第です。
というわけで30度を超える乾期のプノンペンにやってきました。まず驚いたのは交通。車、バイクなどが、信号もない道路を巧みに走っていること。日本の援助だそうですが、日本そっくりの信号機もあちこちにできてはいましたが、まだ一部にとどまっています。
日本の支援が入っているのは3つの病院で、その一つのクメールソビエト友好病院の病理部門の様子。3病院はそれぞれ異なっていますが、日本の臨床検査技師の方々の指導で、作成する標本の質が上がってきているとのことでした。
私の講義の様子。2時間英語でやりました。なお、カンボジアはクメール語が第一言語で、第一外国語がフランス語。英語は第二外国語なんですが、ここにきている人の多くが英語もある程度できます。なお私の第二外国語はロシア語ですが、挨拶程度しかできません…。
詳細はいずれどこかにきちんと書きますが、ここはざっくばらんに感想などを。
カンボジアの病理医たちは非常に熱心に病理診断技術の向上に取り組んでいました。このコースは倍率も高かったそうで、カンボジアのエリート中のエリートが選ばれていたのでしょう。彼ら、彼女らがいればカンボジアの病理診断の発展は間違いなしでしょう。
とはいえ綺麗事ばかりは言えなくて、まだまだ課題は山積みです。質の良い標本を作り、質の良い染色をし、質のよい診断をする。どのステップにも課題があり、国際基準には達していません。
カルテが存在しないカンボジアの医療の中で、どうやって正確な臨床情報を知ることができるのか、厳しい現実があります。
いま二期生を選定中とのことですが、今後も長く継続して支援していく必要があります。
しかし、継続して支援していくには、財源を継続して確保する必要があります。関係者の皆様のご支援をお願いしたい次第です。