この週末の競馬番組はディープインパクトの追悼特集だらけだったが、昔の映像を見ていて改めて思い出したことがある。それは、2戦目の若駒Sを実家のテレビで見ていた時のこと。ワタシの自信満々な態度とは対照的に最後方からゆったりした競馬になったディープを、一緒にいた家族はすごく疑いの目で見ていた。が、直線で先行馬を一気にとらえ、さらに5馬身突き放してゴールすると、一同が「スゴい」「強い」と驚きの声を上げた。
大レースの馬券を買う程度のウチの家族が、レースを見て驚いたのは、エアグルーヴがいちょうSで致命的な不利を跳ね返して勝利したとき以来。そのエアグルーヴはのちに牝馬による17年ぶりの天皇賞制覇を成し遂げ、“女の時代”を象徴する女傑へと成長した。
スーパーホースの条件とは、競馬の素人さんにも強いと認めさせるレースができることではないか。オグリキャップのような生い立ちのドラマやキタサンブラックのような馬主の存在が背景にある馬は別として、強い馬のなかからさらなる高見に行くための切符は、速い、強いの上を行く、「あっ」とか「えっ」という誰にでも分かる驚きにあると思う。
ディープが最初の2戦で演じた逆転劇は、ひとつのレースそのものがまるで「池井戸作品」のような痛快さがあり、それでいてクラシックでも勝ち続けるのだから「水戸黄門」のような安心感があった。時代は平成不況から景気回復に向かう時期。最高のタイミングで現れた逆転の英雄は、圧倒的な支持を受けながら、無敗の3冠馬の肩書きとともにそのまま時代を象徴するスーパーホースへと駆け上がっていった。