今年のドラフトは難しいと常々言い続けてきた。上位で指名したい馬がほとんどいない中、下位では獲ってみたい穴馬がゴロゴロいる極端なピラミッド型の指名馬リストを見るたび、すべては1位で欲しい馬が獲れるか否かが、ドラフトの精神的な勝者と敗者の明暗を分けると考えていた。
運命の6月26日。
私が狙ったのはゴールデンチケット。ドラフトへ向けて「09年ダービーへの道」と題したコラムを6回ほど掲載したなかで、私が新種牡馬キングカメハメハの産駒で唯一、気に入った好馬体であり、“編集Sのススメでネットで検索したある1頭だけは父に似たインパクトがあった。もし指名するなら、この馬かもしれない”と、やんわりと上位指名を匂わせたのである。
編集Sもすでに別団体のPOGで1位指名で獲得しており、共有している情報でも絶賛する声ばかり。特に森厩舎情報に信頼をおける人物からの「かなりいい。クラシック候補」のプッシュは強烈で、加えて私のデータでも「母出産年齢10歳」「3月生まれ」「社台F」「母父サンデーサイレンス」とクラシックを勝つための条件を満たしており、心は決まった。
しかし、ここで問題が発生した。ドラフト数日前になり、昨年、同じ森厩舎の皐月賞馬キャプテントゥーレを1位で競合し、私に抽選勝ちした阿部ちゃんが、この馬を狙っているような発言をしてきたのである。懸命に表情を隠した私の心をどこまで読まれたかは分からないが、「新種牡馬を1位指名するなんてリスクでしかない」と、きっぱりと牽制球は投げておいた。
その甲斐があってか、当日は1位指名で一本釣りできた。当日欠席の阿部ちゃんの代理指名をしていたフッキーによると、阿部ちゃんは2位でこの馬を用意していたらしい。ホント、紙一重の強奪劇だった。
ちなみに、阿部ちゃんの1位はタクティクス。実はこの馬が異常人気で、参加11人中5人が指名し、のっけから“祭り”が発生した。そして、その祭りを制したのが欠席のため残りクジとなった阿部ちゃんだったのだ。しぶとい男である。
さて、1位でゴールデンチケット獲得に成功し、チーム「3冠日」でブエナビスタとプルシアンオリーブを兄弟馬優先ルールの1、2位で手に入れた私は、この時点ですでに「心の勝ち組」になった。あとは趣味に走るか実益に走るか。2位でリストアップしていたのはスペシャルウィーク産駒の素質馬ダノンファントムと、1位でGチケットが獲れなかった場合のアグネスタキオン産駒の即戦力バンガロール。というわけで、自然な流れで当初の予定通りファントムを狙ってみた。ところが、やすと抽選になってしまい、結果は「ハズレ」。加えてバンガも2位でまさかまさかの3人が競合し、ここで消えてしまった。
一気に上位候補が消えたショックはあったが、嬉しい誤算は藤沢和厩舎の大物クンが何頭も残っていたこと。リストの“1位で消える馬”の欄から生き残っていたアムールマルルーをハズレ2位で獲得できてしまったのだ。エレクトロキューショニストの弟で藤沢師&山本英俊オーナーの「カジノ・コンビ」が来年のフランス遠征を視野に入れている超良血。やっぱりこの馬を獲るのは、カジノドライヴで大きすぎる夢を見続けている私しかいなかったということか。これも何かの縁。ユーロ圏でどんどん稼いでもらおう。
3位以下は無抽選だったので簡単に触れておこう。
SCH
①ゴールデンチケット 牡 栗・森
(キングカメハメハ×アグネスショコラ)
②アムールマルルー 牡 美・藤沢和
(Monteu×Elbaaha)
③タイトルパート 牝 栗・鮫島
(アグネスタキオン×タイトルド)
④リビングストン 牡 栗・池江寿
(タニノギムレット×リビングデイライツ)
⑤デラックス 牡 栗・音無
(アグネスタキオン×モットヒカリヲ)
⑥Daisies And Nitesの2006 牡 栗・森
(Speightstown×Daisies And Nites)
3冠日
①ブエナビスタ 牝 栗・松田博
(スペシャルウィーク×ビワハイジ)
②プルシアンオリーブ 牡 栗・松田国
(マンハッタンカフェ×オリーブクラウン)
③ローズバンク 牝 栗・小崎
(トウカイテイオー×バンクシアローズ)
④ケイアイダイコク 牡 栗・白井
(Decarchy×Cantina)
⑤サンクデトワール 牡 美・萩原
(マンハッタンカフェ×ダンスーズデトワール)
⑥アルモン 牡 栗・昆
(Maria‘sMon×サマーヴォヤージュ)
3位タイトルパートは、ギャロップPOGのDVDを見た時に“ある1頭の牝馬に目が止まった。情報でもなかなかの評価を得ていた良血お嬢様である。これを一目ぼれと思って指名すべきか否か。指名寸前まで悩んでみたい”と書いた牝馬だ。立ち姿もよかったが、それ以上に引き上げていくときの歩き出し方にグッと惹かれるものがあった。この出会いは大切にすべきだろう。桜花賞が是が非でも欲しい私としては、すでにこの時点で指名は決めていた。
4位リビングストンは、青本に「ノーザンファーム空港でスタッフにウオッカと呼ばれています」なんていう池江寿師の発言が大きく載ってしまったため、ミーハー指名のように思われがちだが、母系は私が以前から注目しているグリーンポーラの一族で、これまでもこの母系を指名しながら抽選で負けたりと縁がなく、ようやくここで手に入れることができたのだ。現時点では左トモの飛節に腫れが出て調教が控えめになっているようだが、父がタニノギムレットで当初から秋入厩→秋後半デビューの予定だったので問題はないはず。夢はダービーだ。
5位デラックスは、アグネスタキオン牡馬を欲しいというだけのお遊び指名。阪神2週目デビューという情報があったにもかかわらず、調教の動きがひと息なようで、現在は放牧になっているが、タキオン産駒はあまり早くから短い距離を使い込まないほうがいいのはこれまでの経験で学習済み。祖母が「メロンパン」で母が「モットヒカリヲ」で同馬が「デラックス」という“小田切馬”らしい珍名3代の面白さを、何とかターフで表現してもらいたいものである。スケールだけは名前の通りでっかくいこうじゃないか。
6位のスパイスタウン産駒は、1位のGチケットと同じ森厩舎の帯同指名。せっかく森厩舎に注目するなら、もう1頭くらい持っておいたほうがいいというわけで、厩舎筋の情報から“「仕上がり早で早い時期から活躍するタイプ」(師)。小倉か新潟でデビュー”という2歳戦向きのこの馬を確保した。
チーム「3冠日」では3位でローズバンクを指名。函館2週目にデビューし、8着に敗れているので大げさな表現は控えるが、いい馬である。
4、6位はフッキーのプッシュで、5位サンクデトワールは編集Sにお付き合いの余りもの指名なので、理由は割愛する。
【ドラフトを終えて】
指名馬66頭の内訳は①キンカメ11頭②タキオン9頭③クリスエス6頭④スペシャル4頭。種牡馬の勢力図は大方の予想通りだが、今年の特徴は即戦力に人気が集中したこと。昨年、インフルエンザ騒動による早め始動馬の有利さを目の当たりにした影響だろう。また、新種牡馬のキングカメハメハとネオユニヴァースの未知数な部分が、参加者の期待以上に不安を駆り立てた部分もあったようだ。そのため、新馬戦が始まってわずか2週にもかかわらず、すでに8頭がデビューし、4頭が勝ち名乗りを上げた。これは少人数POGとしては異常な数字である。
私の場合、昨年は負け組になってしまったものの、有馬ルールのためこの秋はカジノドライヴやユキチャンの活躍が見込める立場にある。早い時期の小金稼ぎみたいな活躍は不必要で、上位指名馬にはできれば秋後半あたりのデビューで確実に王道を歩んで欲しいという思いが強い。あせらず、のんびりいこうじゃないか。
【ローズバンクがデビュー】
チーム「3冠日」の先頭バッターであるローズバンクが28日の函館新馬戦(芝1200)でデビューし、8着に終わった。PO馬のデビュー戦結果としてはかなり辛い着順ではあるが、この馬に限れば“上々の内容”といえる。距離不足の1200㍍戦でスタートまずまずも、次から次へと外から来られての後方追走で、直線でも外に持ち出せない厳しい展開。それでも道中のバネの効いたフォームでの前向きな走りは好感が持てたし、上がりもオンフルールと並んで最速の34秒8なら未来は明るい。パドックの映像を見る限り、やはり父トウカイテイオーをほうふつさせる力強い踏み込みをしており、これから馬体が締まり、レースを覚え、距離を延ばしていけば、間違いなくオープン馬へと育つだろう。私にとってはかなり収穫の多い1敗だった。