忘れもしない、と言えばエピソードトークとしては多少の格好はつきそうですが、残念ながら長い年月を経て、だいぶ忘れかけている夏の記憶。
今から26年前の夏、インターハイ出場を賭けて戦う泉丘高校バスケ部のメンバーの中に、ひっそりと私の姿もありました。
当時はまだ北陸学院高校も金沢学院高校もまだ台頭していない時代。
私立は金沢高校の一強、公立では県立工業高校や七尾高校、小松明峰高校や金沢市立工業高校なんかと非常に実力が拮抗していた時代で、私達のチームも優勝を目指して日々の練習に励んでおりました。
「負けたら引退かー」
チームは強かったですが、私は専らベンチを温める控え選手。
出番と言えば、30点差くらいリードした場面で主力選手を温存させるために試合に出るか、あるいは勝利を諦めたとき、いわゆる敗戦処理的な役割で試合に出るかくらいの役割しかない選手でした。
そんな私でも、公式戦で唯一チームに貢献できたシーンがあります。
記憶は曖昧ですが、確か1回戦、高校のすぐ近くの体育館で試合があるということで、ビックリするくらい同級生たちが応援に駆けつけてくれたのです。
「今日はいつもより出番は早そうやなー、少しくらいいいところ見せれたらいいなー」
いつもはそんなこと考える余裕はありませんが、その日の対戦校はそんな感じの相手。
「前半の途中、もしくは後半開始くらいで俺らの出番になるやろうなー・・・」
勝ち負けの心配ではなく自分達の出番がどうなるかの心配で、妙に落ち着かない感じがありました。
「頑張れよー!!」
観客席からの声援も、緊張感を倍増させます。
試合開始。
前の大会でも得点を量産していたキャプテンと副キャプテンのダブルセンターがゴール下で激しいマークに合い、なかなか思うようなプレーをさせてもらえません。
こういう時は外のシューターが外から射抜いて良いリズムが出来るといいのですが、初戦独特の緊張感からくる硬さなのか、フリーで打たせてもらえるシュートがことごとく入りません。
とは言え、しっかりディフェンスは頑張れているので、相手のスコアも伸びていません。
負けることは全く心配はしていませんが、なかなか点の取れない展開でコートが非常に重苦しい雰囲気。
監督もイライラしているのが分かりますから(笑)、私たちもベンチから必死に声を出します。
「1本、落ち着いて!」
すると、思いもかけない声が監督からかかります。
「西野、○○と代われ!」
これには私もビックリしました。
「・・・は、い!」
まだ試合が始まって10分も経っていない時のこと、聞き間違いかと思って監督の顔を二度見しました(笑)。
こんなに早い時間帯に出場したのはあの試合しかありません。
後になって冷静に振り返れば分かるのですが、この時はとにかくセンターの2人が徹底マークに合っており、その分外のシューターはかなりフリーで打たせてもらえる状況。
ところが、いつもは得点を重ねるスタメンの選手たちがなかなかシュートが入らない。
控えメンバーの中では私はわりとシュート効率の良い方だったので、あれだけプレッシャーの少ない場面ならシュートを決める可能性は十分にある。
サッカーと違って何度も選手交代も出来ますし、ダメならダメでまたスタメンにすぐ戻せばいいやってくらいの考えだったのだと思います。
「空いたら思い切って打ってこい!」
頭が真っ白な状態で、監督のセリフだけ覚えてコートに入ります。
そして、最初の攻撃ですぐにボールが回ってきます。
相手チームも、私のことなんか誰も警戒していません。
フリースローライン少し後ろくらいでフリーでボールを受けた私は、監督の指示通りに思い切ってジャンプシュート。
あまり心の準備が出来ていなかったのが逆に良かったのかも知れません、無我夢中で放ったシュートはしっかりゴールをくぐり抜けてくれました。
更に幸運なことに、直後の攻撃の機会でも同じようなシチュエーションになり、2本連続でシュートを決めることができたのです!
試合中に自分のプレーに歓声が上がることなんて1度もなかった私ですから、このときのみんなの声は今でも脳裏に焼き付いております。
「いいぞ、いいぞ、トモオ!」
珍しいメンバーがシュートを決めると一段と大きな声援が上がるものですが、この時スタンドで声を張り上げてくれた後輩の声なんかも、しっかり覚えています。
その後、すぐに相手ディフェンスがきつくなったこともあり、1回パスミスをした時点ですぐに交代。
その後の展開はよく覚えておりませんが、前半で苦戦していたのが嘘のように、おそらく30点差か40点差くらいをつけて圧勝。
私も本来の役割に戻って、主力選手を温存させるための時間に再びコートに戻ったハズですが、その後のゲームの記憶は全くありません。
覚えていることと言えば、
「さんきゅ!あの2本で楽になったな!」
試合後に、キャプテンに感謝の言葉をもらえたこと。
こんなことも、後にも先にもこの試合しかありません。
間違いなく、チームの試合としてはほとんど記憶に残っていない1回戦での出来事。
しかし、紛れもない私のベストゲーム。
その後もこっそり似たような場面で使ってもらえるようにと一生懸命に練習には取り組みましたが、こんな偶然は2度はやって来ず。
残された仕事はやっぱりいつもの主力温存と敗戦処理だけでしたけれど、それでもキラリと輝く一瞬の記憶が、今でも自分の大切な一部になってくれています。

今日はパソコンで朝から高校野球観戦。
負けたら引退という緊張感の中、Y君が今日の試合もスタメン出場。
私とは違い、去年からずっとチームの中心メンバーとして頑張ってきた選手です。
初戦にもヒットを打っていましたが、引き続き、今日も最初の打席で見事にレフト前に強い打球を放ちます。
相手選手が前に突っ込みダイビングキャッチを試みるも、打球はワンバウンドツーバウンドして後ろに逸れます。
センターが素早くカバーをしたように見えましたが、ここでY君は思い切って2塁を狙います!
素晴らしい球が返ってきましたが、間一髪Y君の足が勝ってツーベースヒットに!
私も思わず手をたたいて喜びました。
そして、解説の方が
「いやー、いい判断でしたね!思い切った走塁、素晴らしいですね!」
みたいにY君の思い切ったプレーを褒めてくれました。
その瞬間に、思わず涙が込み上げてきちゃいました(笑)
どういう心情だったのかもよく分かりませんが、とにかく精一杯頑張っているプレーに感動しちゃったのです。
後続も続いて、Y君は先取点のホームを踏みます。
2点先制し流れは完全にこっちのものかと思いましたが、すぐに相手も打ち返してきて最後は力負け・・・。
「もう1回勝ちたいですねー」
願いはかなわなかったものの、あのツーベースはきっと一生の宝物になることでしょう。
本当にお疲れさまでした!
「相手強かったです!」
感心したのは、試合を終えたY君が、今日もいつも通りに塾に来たこと。
「あれ!?何で来とるん!?」
同級生にもビックリされていました。
そして、何と何と、学校にいた同級生たちみんなで視聴覚室で試合観戦をしてくれていたとのこと!
なかなか先生も粋なことをしてくれます。
これは選手にとっては本当に嬉しいこと。
「ヒットの時めっちゃ盛り上がったよー、○○君なんて立ち上がってガッツポーズしとったし!MVPやろ!って(笑)」
少し照れ臭そうに、でも嬉しそうに笑うY君の姿をみると、なんだかホッとします。
一生懸命に続けてきたことが、ちょっとでも報われる瞬間。
負けたという事実なんかでは覆されない、もっと価値のあること。
「応援ありがとうございました!」
「おう!」
野球での戦いは終わりましたが、まだまだ受験の戦いは続きます。
「まだまだ応援は続くけどな!」
いい笑顔で帰って行きました。
受験の戦いが終わった時も、今日のような笑顔が溢れますように。
しっかりね、まだまだ応援させてもらいますね。
Y君のおかげで、色んなことを思い出した1日でした。
まだまだね、終わりじゃないからね。
いったん休憩して、大事なものは胸にしまって、また戦い始めましょうね。
きっと、たくさんのことを学んだハズだから。
次の戦いに、活かしていきましょね。
いったんお疲れ様!また頑張るぞ!!
西野でした。