高橋事件弁護団広報2015年2月16日:テレビ朝日・フジテレビの虚偽報道について | 空気を読まずに生きる

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弁護士 趙 誠峰(第二東京弁護士会・Kollectアーツ法律事務所)の情報発信。

裁判員、刑事司法、ロースクールなどを事務所の意向に関係なく語る。https://kollect-arts.jp/

高橋事件弁護団からの広報です。

本日行われた廣瀬健一氏の証人尋問について、テレビ朝日は次のように報道しました:廣瀬氏は「事件前日に井上嘉浩死刑囚(45)から『サリンをまく量を増やす、一人1リットルだ』と説明があった時、高橋被告もその場にいたと証言しました。広瀬死刑囚はサリン散布後、足が痙攣(けいれん)したために薬を打ってもらいましたが、高橋被告も同じように薬を打っていたと振り返りました。さらに、高橋被告が犯行後にテレビの報道を見ながら『やりましたね』と発言したと証言しました」と。http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000044605.html

この報道は全く事実に反します。廣瀬氏はそのような証言をしていません。
彼の証言は次のようなものです:

1)井上嘉浩氏は渋谷のマンションで「部屋に散らばっている人」に向かって「一人1リットル」と言った。廣瀬氏は、その中に高橋克也氏がいたとは証言していません。
2)事件後ニュースを見ていて、井上氏が林泰男氏に向かって「イシディンナ師(林泰男氏のこと)、やりましたね」と言ったと証言しました。高橋氏が言ったなどとは彼は証言していません。
3)事件後自分は林郁夫氏にパムを打ってもらった。林泰男氏も打ってもらったかもしれない、と証言しました。高橋氏が打ってもらったなどとは全然証言していません。

本日まで約1ヶ月間この事件の公判についてマスコミは誤った報道を毎日のように繰り返し行っています。専門家が「VXは液体であり、揮発性はない」と証言しているのに、いまだに「VXガス事件」などと報じている新聞もあります。これが日本の裁判報道の現実です。午前中の検察官の尋問を聞いただけで、バタバタと慌ただしく法廷を抜けだした記者が記事を書いているわけですから、誤報だらけなのは仕方がないと思います。いちいちクレームをつけていったらキリがありません。われわれは日本のマスコミがこの事件のような刑事裁判について公正な報道をすることはほとんど全く期待できないと諦めています。

しかし、せっかく裁判所が一般市民の入場を制限してまでして、マスコミのために多数の特別席を用意しているのですから、証言を傍聴した報道機関には責任ある報道をしていただきたいと思います。われわれは諦めてはいますが、許してはいません。念のため。

高橋克也氏の弁護人を代表して、
弁護士 高野隆

追伸:
フジテレビは、廣瀬氏が「高橋被告の車のなかでサリンを撒く話をした」と証言した、と報じました。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00286491.html
これも事実ではありません。廣瀬氏はそのような証言をしていません。
本当にきりがありません。

マスコミ報道について言いたいことは腐るほどあるのですが、あまりにもひどいので広報にしました。