「すみません、それ・・」
ぼそぼそと小さな声だった。
「え?」
「これ」
剛は眼鏡に手を伸ばした。
「あ、こ・・」
眼鏡をさしだす。
剛は眼鏡を取ると、軽く頭を下げてその場を離れた。
「梨英?」
真子が呼んでいる。それでも、頭はほかのこと。
剛が見た時変な顔をしていなかっただろうか、前髪はひどくなかっただろうか。
鏡を取りだして、見る。
剛は、どう思ったのだろうか。
八組のホームルームが終わる。さらに廊下は騒がしさを増した。
けれどどこかその人波に接する体の内側で、思いはぐるぐると行きつく場所を探していた。