次に、死刑存置派の反発を見てみよう。


「死刑ないし死刑制度は強力な犯罪抑止力を持つ。」

死刑が犯罪抑止力を持つという証拠は無いとか、いや有るのだとか、二つの言説がある。

死刑が犯罪抑止力を全く持たないというのは考えにくい。

ついカッとなって、こんな人間はどうなっても構わないという感情が込み上げてくれば、人を傷付けようとする手が止まらず、殺してしまうかも知れないだろう。私個人のことで恐縮だが、人を殺したら自分もその場で死ね、と、子供の頃父親に躾けられたものだが、自分が死にたくなければ他人を殺せないので、人を殺すことは私にとって、大それた事だからなかなか出来ない……というだけでなく、絶対に出来ない事だ。死刑制度は、これと同じ機能を持ち得るだろう。但し、「ついカッとなって人ひとり殺した」ぐらいでは、日本では死刑にならない。

残念ながら、死刑判決を下されるような凶悪犯には、死刑制度は全く、あるいは殆ど、効果がないと思われる。何故なら、彼らは極めて身勝手な人間だからだ。唖然とするくらい身勝手だ。己の未来に対しても驚くほど甘い認識しか持たない。殺人が処罰の対象になるという事は分かっているくせに、自分が処罰されるという事を予想しない。