その人を知ったのは、私が入社する数ヵ月前の新聞に、その人の名前と書いた小説が掲載されていたからだ。
正直、やられたなあ、と思った。
学生時代の私は、実は小説家を目指していて、ゆくゆくは地元の歴史を題材に子ども向けの物語を書きたいな、と思っていた。
もう、やってる人いたんだ…。
その作品は、明確に子ども向けではなかったけれど、郷土史研究家の老爺と少年の交流を描いた、とても穏やかで美しい物語だった。
私には、こういう感性も、これより素敵な文章を書ける才能も、ない…。
しかもこの人、私の入社する会社にいるという。
私には、ムリだ。
と思って、なぜかその直後、その人の名字と、自分の名前をくっつけてみていた。
そしてまたなぜか、一度はそうなるような気がした。
結局なったのだけど。