3月の最終日、私は30歳になった。
理想の30歳には、なれていなかったな、と思った。
男性として愛していて、人としても尊敬できる人と結婚できたことはいい。
さらに、その人との間に、男の子と女の子を1人ずつ授かって、いまのところ無事に、生み育てられていることも。
でも。
私は私として、理想的な30歳になれているだろうか。
仕事は、散々だった。
いま思えば、未熟な論理を振り回して文句ばかり言い、何も貢献できていなかった。
企業風土もあるのだろうけれど、産休に入るときも、誰にも、「戻ってきたらまた一緒にがんばろう」みたいなことは言われなかった。
当然といえば当然。
でも、その程度の出来と向き合い方だったと、見せつけられた想いだった。
会社に戻る私は、もう若手ではない。
どれだけのことができるのか。
いやそもそも、私はあの場所で何を目指しているのか?
母でも妻でも会社員でもない、一人の女性としては、どうだろう?
30歳の、一人の女性。
自分が思う30歳と比べると、私はまだまだ、大人であることを受け入れきれていない気がした。
いまでこそ落ち着いているけれど、一人目の子どもを産んで一年間、私は、自分が母親であるということから常に逃げ出したかった。
その頃は、妻であるということからも逃げ出したかった。
自分のキャパを知らなくて、できることに最善を尽くせなかった。
30歳になるころには、自分のことをよく知っていて、幸せを受け取れ、穏やかな希望を持ち、自然体でいられると思っていたのに。
20代の終わり、私は自分のことをとことん考える機会を持った。
MYコンパス・アカデミー
ここでは、自分が自分の人生を歩むための芯を探し、それに沿って行動していくというステップを、同じ悩みを持った仲間と一緒に進めていく。
言葉にしたことのなかった「私」の、私個人の想いが、誰かからの問いで形になっていく。
だからそのコースが終わる頃には、ある程度、自分のコンパスを見出だせていた。
でもあれは、もしかして、20代の私ではなかったか。
いま見ても、あまりしっくり来ないのだ。
30歳になってから、しばらくこれが理由でもやもやとしていた。
たしかに、芯の芯は、変わらない。
愛するもの、大切にしたいこと。
でも、表に出る部分は、年齢と共に、変わるのかもしれない。
それがいまのところの結論だ。
いまの私は、30代へと、理想の大人の女性へと、脱皮中。
コンパスを見つける術はもう知っているから、怖いとは、感じていない。