敬愛する親友よりウォークマンをプレゼントしていただきました。嬉しかった! 性能がすごく優れていますね。ハイレゾ音源のマイケル・ジャクソンからは息継ぎや吐息までもが聴こえてきます。通勤路の駅構内で『スリラー』を聴いていると、職場へか家路か、ひたすら急ぐ人の群れがゾンビに見えてくるのですから、すごいリアルサウンドです。
だって今夜はスリラー・ナイトさ
スリルいっぱいの夜だから君をきつく抱きしめて、
一緒に恐怖と闘おうじゃないか
ギィーと棺の蓋がひらきゾンビたち続出。恐怖におののく僕と君を大声で嘲笑うゾンビの親分。ユーモアと物語のアルバム『スリラー』は名作です! プロデューサーはクインシー・ジョーンズ。世界愛あふれるミュージック界の大親分はゾンビたちも愛して描きました。
手が届くブックエンドに文庫本を幾冊たてています。大学以来永きにわたり師事を仰いだ恩師がロシア文学のご専門であられたことから、迷ったり揺らいだりしたときに頁をひらくのはドストエフスキーです。なかでも短篇『ポボーク』はわたしが惹かれる幻想小説です。
周囲から精神が病んでいると冷ややかに揶揄される孤独な小説家。彼には不本意でつまらない仕事しかきません。或る日、彼は葬式にいった帰りに墓地へ赴きます。すると死者たちの「ポボーク、ポボーク」と囁きとも呟きともわからない不思議な声が聴こえてきます。声の主は死者たち。こぜわしく喧嘩したりお金や権威を威張ったり、生々しい苦しみにせめいでいます。しかしそれぞれ笑いに覆われているのです。孤独な小説家は墓地の去り際に死者たちへ「かわいい人たち」と。そしてまたこの墓地へ来ることを誓い、去ってゆきます。