【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ】お初➄ | シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ

シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ

シナリオ・センター大阪校代表取締役 小島与志絵 ペンネーム 島ちゑのブログです。

 situation comedyならぬsituation tragedy(悲劇)として考えてみると…

 庶民文化が栄えた元禄時代。現実でも浄瑠璃でも心中事件が続発し、演じられました。着地点が心中と定められたなかでのエンタティメント・シリーズ。構成の発想は? いかにお客さまに起承転結の承を楽しんでいただくかと云うことに尽きるでしょうね。本作りのヒントが得られそうです。

『曽根崎心中』。お初の脚にすがりつく、縁の下で裲襠に覆われた徳兵衛。お初の勝気さと徳兵衛の気弱さが、この不思議かつ立体感のある構図にシンボリックに表現され、同時にエロスとアガペーが交錯します。comedy reliefのお女中さんもしっかり効いてますね。

『冥途の飛脚』。梅川と忠兵衛は、忠兵衛の生まれ故郷、新口村へ。通り過ぎてゆく忠兵衛の父に梅川は素性を名乗れず、代わり身の親孝行を。そこには親子、男女の情愛がまじり、さらにヒューマニズムへ。観客の胸の芯へ迫ります。

『女殺油地獄』。与兵衛がお吉を殺す終盤。もみ合ううちに油壺が倒れてしまい、逃げ惑うては油に転び、追いかけては油に転び、油まみれになりながら殺害へ。愛憎がいかに不毛なものであるか? 楽しみつつも伝わってきます。

 注視すべきは、お客さまが楽しめる仕草、行動、仕掛けのみならず、そのシーンに物語の愛の個性がみごとに描出されていることです。描きたい愛の個性を熟考しましょう。

「前向きな消去法」と云う思考法をご存じですか? あれもこれもと思考を広げず、これは不要、これも不要とばっさり切り捨て、制限を己に課したなかで、いかに前向きに工夫するか?