【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】若い人へ心のひろいおばあちゃん | シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you 島ちゑ

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シナリオ・センター大阪校代表取締役 小島与志絵 ペンネーム 島ちゑのブログです。

 60歳にしかみえない88歳のおばあちゃん。毎朝起きるとすぐに体操をして、外出のときには口紅をひきます。大学の寮の受付の仕事をされています。若い人の奇抜なファッションを不満に思う親戚の人がいても、おばあちゃんは「若いんだから人生を楽しんでいいじゃない」と微笑みます。その彼女に悲しい過去が。1944年、彼女の目の前で両親が赤軍(ロシア軍)に殺されました。お父さんが占領軍(ドイツ軍)事務所の秘書をしていたから。その後、彼女は村長の息子と恋に落ちましたが、両親のいきさつを理由に反対され、汽車に乗せられ引き離されました。彼女は汽車から飛びおりて恋人のいる故郷へ戻ろうとしましたが、それでも引き離されました。その後、過酷な炭鉱での仕事をしていたときに、やさしい男性と出会い、嫁ぎ、幸せに暮らしました。おばあちゃんが人生の輝けるときのたいせつさを識っていらっしゃるからこその寛容な心。

                   オリガ・ホメンコ氏著
        『ウクライナから愛をこめて』(群像社)より

 こまやかに人物を描かれている著者の慈愛に満ちた視線から母国愛がひしひしと伝わります。
 
 このおばあちゃんのお名前はマリーナさん。ふんわり可愛らしいお名前。さまざまなことをくぐりぬけ、おだやかに心ひろく生きていらっしゃるマリーナさんが暮らすウクライナにまたしても戦火が。侵攻から一年が経ちました。

 黒木和雄監督の『TOMORROW 明日』(原作・井上光晴『明日―1945年8月8日・長崎』)。明日、長崎に原爆が投下される前日の市井の人の生きる姿を描いた映画です。黒木監督には課外講座へお越しいただき、勇気をもって描くことのたいせつさをお話しいただきました。

 日本にもマリーナおばあちゃんが。戦争によって否応なく人生に影を背負わされた方々が。