とうとう谷崎潤一郎さんの「細雪」を読み終えました。文学的な論評は多くの先生方がすでに書かれているので私は別の視点から筋書き以外の感想を書きます。

当時と現在の社会事情、医療事情の違いが顕著なのに驚きました。
特に結婚に対する感覚は現在とはかなり違っていたこと。抗生剤がなかった時代なので感染症に罹れば対症療法以外には治療法がなかったこと。またビタミン剤などを家庭で普通に注射していたことなど驚きです。


当時は人脈と経済力がものをいう格差社会で上流階級は国立大病院での治療や民間病院への入院なども特権的に可能だったこと。これは華族制度が存在した時代で本の中でも三女の雪子の子爵家との縁組について描かれています。


この物語の4姉妹が上流家庭に属していると判断するのは現在の我々クラスの一般人の感想で作者自身の社会的地位からは平均的一般家庭の4姉妹の話のつもりで書かれているのかも知れないこと。というのは4姉妹は普通にピアノ、箏、日本舞踊、洋裁、英語、ドイツ語、フランス語などをたしなみ、歌舞伎、映画鑑賞、オリエンタルホテル、都ホテル、奈良ホテル、東京では帝国ホテルなどに泊まり、買い物は阪急、三越など利用していた。外出にはタクシーを使うことが日常として描かれている。


この物語の舞台は大阪、神戸、西宮、芦屋が中心なので私にとっては親しみ易すい。阪神国道線(戦後の一時期まであった国道を走っていた路面電車)、新京阪(現在の阪急京都線)、省線(JRの近郊路線)とか懐かしい鉄道名が出てきます。

また業平という地名が出てきますがこれは在原業平に関係した地名です。私が最近まで住んでいた大阪の松原市に阿保町というユニークな地名がありますがこれは平城天皇の皇子の阿保親王と呼ばれる方にちなんでいます。この人の子が在原業平です。松原には阿保神社、芦屋には阿保山親王寺があります。冗談みたいな繋がりです。

また神戸にトアロードと呼ばれる異人館街に続く道路がありますが小説の中では三女の雪子の見合いの場が当時あった東亜ホテルとなっています。これがトアロードの由来だと分かりました。

四女の妙子が習っていた舞踊の山村流は私が今住んでいる近くに存在します。私自身その舞踊を二度程見る機会があり素晴らしさをこのブログでも触れたことがありました。


色々書きましたが「関西愛に溢れた物語」が私の感想です。