まず初めにこちらをご覧いただきたい。
(段落は空けているもののネタバレがあるので注意)
かの有名なバーテンダー系ADVの「VA-11 Hall-A」をご存じだろうか。
場末のバーの店員となって要望を聞き、望まれたカクテルを提供する下ネタマシマシの笑いあり涙ありのゲームである。
私もかつてめちゃくちゃハマり、続編をずっと待ち望んでいるゲームだ。
次にこれを見ていただきたい。
・販売サイト(Steam)
・公式サイト(システム面などはこっちのほうが詳しく載ってる)
シーシャ屋さんの店長になって、望まれたフレーバーのシーシャを提供するゲームだ。
笑いもあるし涙もあるゲームだ。
これ俺がほしかったやつじゃん!!!!
以下レビュー。ネタバレ要素は反転しておく。
★概要
余命僅かな主人公「炭木トオル」は、病人向けの特殊なプログラムによって、シーシャ屋「Hookah Haze」をオープンする。
彼の趣味であるアクアリウムを備えたその店は、秋葉原の寂れた郊外に、14日という短い期間だけ営業することになる。
穏やかな開店初日を迎えた店舗だったが、訪れた最初のお客様によって、店長もろとも大きく運命を変えられることになる。
これが我らが店長。名だたるヒロインを差し置いて、あまりにもキュートすぎると話題を掻っ攫う。
こちらは初めてのお客さん。こちらはヒロインの1人だが、エッジが効いたすさまじいデザイン。
内容としてはノベルゲームに近く、開店前に特定のシーシャをお勧めすると、そのフレーバーが好みなヒロインが来店する。
基本的にはヒロイン3人それぞれに来店してもらい、正しいシーシャを選択することで会話を進め、関係を深めていくことになる。
選択する項目としては、フレーバーの傾向と炭の量の2点となる。
これらの選択肢には必ずヒントが出るため、敢えて間違えない限りは正答できるはず。ただし病状の進行によって、ヒントとしての機能は……
また、要望に完全に沿えなくとも多少は問題なく、たいていの場合は詰まることなくストーリーが進行していく。
初回のチュートリアルもばっちり完備。ミニキャラもかわいいが過ぎるぞ。
そしてこれがフレーバー選択画面。3つのフレーバーを組み合わせることで、望んだ味を引き出す。
一度作成したものは画面右に表示されるほか、QUICK MIXで即座に作成することも可能。
また、求められたフレーバーは画面中央にあるようにヒントを出してくれる。
次にこれが炭の調整画面。煙の具合を調整するため、画面指示に合わせて量を調整しよう。
今と同じ量(標準の量)は3個。そこから多め、少なめといった指示で量を調整していく。
★グラフィック/BGM
グラフィックはドット絵風味の繊細なタッチが印象的。
表情豊かなキャラクター、店舗を彩るアクアリウムや備品の数々、革新的なUIデザインなど、どれをとっても魅力。
寒色系を中心としたサイバーパンク要素が強めな本作に、奇抜でありつつも統一感を持たせてくれる。
スイーツ系フレーバーを3個詰め込んだ「悪魔的ゼロカロリー」。
あくまでも味の印象を決めるデザインでしかないが、派手さとわかりやすさが共存しており、視覚的に楽しい。
BGMは、店内で流れているものを自分で設定できる。
設定したものは、ストーリーの進行中もは鳴り続けることになるが、どれもシックで雰囲気にマッチしている。
作中にはボイス付きの曲が流れることもあり、なんとサウンドプロデュース・作詞にはDECO*27氏、作曲・編曲にはtepe氏を起用。キャッチーなメロディラインを作風を乱さないまま詰め込んで、物語にさらなる彩を与えてくれる。
しかも歌うのは藍月なくる氏。オタクの夢見るドリームチームのような構成には笑いすら出た。
★キャラクター
数は少ないながらも、魅力たっぷりのキャラクターたち。
それぞれ方向性が大きく異なる性格とコンプレックスが丁寧に描かれる。
・愛上あむ
本作のメインヒロインかつ最初に訪れるお客様。
売上ナンバーワンを誇るコンカフェ店員で、自分の魅せ方を良く知っている。
モチーフはうさぎ。他者から見た評価を求めている描写が目立つ。
・明月院こころ
本作で2番目に訪れるであろうお客様。
非正規のショップ店員で、シーシャにも造詣が深い。
モチーフはきつね。話を進めていけばいくほど重いトラウマを持つ過去が明らかになる。
・古森くるみ
本作で3番目に訪れるであろうお客様。
あまり名の知れていない企業所属の人形作家で、ナッツが大好き。
モチーフはくま。描写から見てわかるように、コミュニケーションが非常に苦手。
・炭木トオル
本作の主人公である「Hookah Haze」の店長。
ヒロインを凌駕するほどのヒロインパワーを見せつけてプレイヤーを虜にする魔性。
過去の経験から並々ならぬ厭世観を持ち、そこからくる諦観が如実に露呈している。
自己評価があまりにも低く、ヒロインたちの精神的支柱となるのに自分を卑下する描写はある意味恐怖。
ヒロインたち3人のHappy Endを見た後に現れるTRUE ROUTEでは、本編とは違うストーリーが描かれる。
その中で登場する「諦め」を意味する選択肢の出現回数から見てもわかる通り、生きる気力を完全に失っている。
この性格に切り込めるだけの人間関係の構築によって未練を作ることで、本当に欲しかった未来への道が拓ける。
★システム
各ヒロインごとに3種類のエンディングが設定されており、クリア後に顛末が描かれる仕組みとなっている。
エンディング分岐の仕組みは、
・選択肢が出る最後のイベント会話で成功
→最初に成功したヒロインとのHappy End確定
(確定した後は別のヒロインと会話が発生しなくなる)
・選択肢が出る最後のイベント会話で失敗
→失敗した時点でそのヒロインとのBad End確定
(同じ周回中に2人まで可能 3人行うと別Endに)
・選択肢が出る最後のイベントが出ない
→イベント時のフレーバー選択・炭選択を間違えると発生
または14日間までに一定以上ヒロインと会話していない
(何もしなければ基本コレ)
となっており、エンディングリストの9個はこの方法で埋めることが可能。
残りの3個はトオル主体のエンディングとなっており、
・14日間で3人のBad End条件を満たす
・14日間で3人の誰ともHappy Endの条件を満たさない
・TRUE ROUTEでエンディングを迎える(True End)
という条件で埋めることが可能。
要するに店長もヒロインじゃねーか。
攻略のポイントとしては、早めに好きなフレーバーを判別して、開店前のオススメフレーバーを適切なものに合わせること。
(要するに複数のヒロインが同じ日に来店するように考えること)
5日目くらいまでは1日1人のペースで間に合うが、それ以降はイベント回数が足りなくなる可能性がある。
所狭しと並ばずに、画面にギュっと詰め込まれたUIも本作の魅力。
ヒロインたちの話を聞きながら、片手間にネオンカラーを変えたり店内BGMを変えたり……といった操作が画面遷移なしに可能となっている。
例えば、PS4コントローラーを使用していれば、十字キーはネオン操作、右スティックがBGM操作(押し込みで決定)、各種ボタンがメッセージ送りやオート切替対応、といった形で操作ができる。
最初のうちに慣れてしまえば簡単に思えるが、初見だと戸惑うかもしれない。慣れてくると楽しい。
また、通常の会話パート以外でも、各ヒロインたちがリアクションをくれるSNS機能もある。
こちらから自由に返答することはできないものの、キャラクターの性格を補完するような仕組みになっていて秀逸。
名前じゃなく「Hookah Haze店長」というアカウント名なのが生来の生真面目さを伺わせる。
★総括
詳細までは語られないながらも想像意欲を搔き立てる世界観の徹底と、短いながらも適度に補完して綺麗にまとめ上げたストーリー。
均整の取れたキャラクターたちの関係を描きながら、システム面や選択肢によって悩みや葛藤を演出する神ゲー。
BGMも良い、キャラクター像もブレがなく、何より店長の葛藤がすさまじく伝わりやすく描かれていて満足。
UIは独特で、SNSで通知が来た際には画面左下のパッドにちらりと映してくれる、そんな僅かな温かみがクセになる作品。
話としてはかなり重ためだが、キャラクターが気に入ったり、公式サイトを見て雰囲気が好きだと思ったのなら損はしないゲームといえる。
シーシャを知らない人向けの解説も充実していたり、以前発生した会話を引用する際はわざわざ回想シーンまで入れてくれたりと、システムづくりも丁寧。
知らないうちに何より求めている「創作物だからこそ許されるハッピーエンド」を正しく描いてくれたのも非常に好感が持てる。
現実に疲れてしまったら、秋葉原のどこかにある「Hookah Haze」に足を運んでみるのも良いかもしれない。
おわり