8分の6拍子の唱歌 早春賦

ピアノ伴奏

 

早春賦

作詞:吉丸一昌
作曲:中田 章

春の名のみの 風の寒さや
谷のうぐいす 歌はおもえど
時にあらずと 声もたてず
時にあらずと 声もたてず

氷とけさり 葦はつのぐむ
さては時ぞと 思うあやにく
今日もきのうも 雪の空
今日もきのうも 雪の空

春と聞かねば 知らでありしを
聴けばせかるる 胸の思いを
いかにせよとの このごろか
いかにせよとの このごろか

 

 

 

私達60代中心に演奏を楽しむシニアバンドの

演奏ジャンルは幅広くオールラウンドで、

ロック、歌謡曲、フォーク、童謡・唱歌もありで、

誰かから「この曲はどうでしょうか?」と

リクエストがかかって、楽譜さえ見つかれば、

「いいですよ、演奏してみましょうか?!」

と、決定して実践的に演奏しているので、

演歌のリクエストも、楽譜さえあれば断らない。

 

最近、唱歌『早春賦』のリクエストがかかり、

楽譜があったので伴奏可能で演奏リストに加えて

練習を始めると「8分の6拍子」だった。

 

大正時代て、大正浪漫という言葉があるけれども

西洋文化を日本にも取り入れて新風を吹かそうと

勢いのあった時代で、作曲者の試みや新時代の息吹を

感じる先駆的でモダンな音楽作品だと思う。

 

音楽の向こう側には時代背景があるので、

その時代について考えるのも必要になることがあり

想像し音色の工夫して反映させて演奏することはある。

 

だから、「8分の6拍子」という拍子には、

作曲家が込めた特別な意図があるのを感じた。


 

動画サイトを確認してみたところ・・

プロの声楽家も「4分の3拍子」で歌唱していて

「8分の6拍子」で歌唱する作品は見当たらずに、

難しい曲だなと感じた。

 

リクエストをくれた知人に

「4分の3拍子で演奏していましたか?」

「8分の6拍子で演奏していましたか?」

と尋ねてみると「わかりません」と回答で、

少し困惑していらっしゃったので、

私はマズい事を質問したようだった。

 

けれども、とても重要なことで、

音符の長さの3拍分は同じだけれども

4分の3拍子は、4分音符=1拍+1拍+1拍=3拍

8分の6拍子は、8分音符=1.5拍+1.5拍=2拍

 

明らかに刻み方が違っていて

8分の6拍子=1小節を2拍として数える。

 

だから、3拍子のワルツのような演奏ではなく

1拍が1.5拍の2拍子で刻むのが正しい。

 

イントロは8分の6拍子なのに、

歌い始めると3拍子に聞こえやすい作品なので

2拍子とわかる刻みで演奏しなくてはならない。

 

私がそこにこだわる理由は、

それを汲み取って演奏することが、この作品の

作曲家に対する敬意ではないのかなと思うから。
 

大正時代の音楽作品を、楽譜から作曲家の意図を

読み解いて、それに基づき再現することに

価値があると思う。