インターネットの電子図書館
私は幼少期から成人する頃までは活字中毒で
何年も毎日のように図書館に通い詰めて児童図書室の
棚の図書を片っ端から読破して、それに飽きてしまうと
司書のお姉さんに頼み込んで、当時2階の一般図書室に
入室許可をもらい、大人に混じり読むほどの本の虫だった。
遊ぶ友達はいないし、親からも外に出ていけと言われるし
持病があって病院通いしていた近くに図書館があったので、
出かける場所もないから、病院の受付手続きを済ますと
待合室代わりに図書館に立ち寄っていた。
本は友達で、目の前の嫌な事から逃れたい時は
本の中に入り込むと本の中の風変わりな登場人物達の
世界が広がるので、それを眺めて満足できていたのだと思う。
小学校入学した時から詩や作文、感想文など適当に書けば
学校新聞に載ったり表彰されたりしていたので、面白い文章を
書けば先生が褒めてくれるとわかって書いていたところがあった。
高校で、ある日「生きること」についてテーマを与えられて
作文を書くことを言われた。
1学年上の先輩が校舎から飛び降り自殺をしたことが発端だった。
本当に衝撃的な出来事で校内では色々な噂が立ち動揺していた。
先生方が危機感を感じて、学生達に「生きること」をテーマに
命の尊さを考えさせたかったのだと思う。
そういう時こそ、先生に気に入ってもらえるような素晴らし文章を
思いついて書けば良いものを、多感な思春期反抗期のど真ん中で
校舎から飛び降り自殺してしまった先輩の心情やら、仲良しだった
友達がうつ病を発症していたり、愛読書の太宰治に影響受けたりの
3拍子揃ってしまって、「死」を美徳と考えた文章を書いた記憶がある。
それで、現代国語の作文の先生に職員室に呼び出されて
放課中ずっと立たされて問答のようなことが続けられて
普段は優しいにこやかな丸顔の先生が、だんだん険しくなり
四角顔の怖い顔で、「あなたにとって本は毒にしかならないな。
今後いっさい小説などの本は読まないようにしなさい!」
「あなたみたいな人が本を読むと危なっかしくていけないわ」
初めて、優しい先生の真剣に怒る怖い顔を見て怖くなった。
それでもその時は、なんでそんなことを言われなくちゃいけないの、
先生が私から好きな物を奪う権利なんてないはずだと思ったし、
それまで、特別気にかけて下さっていた大好きな先生だったので
本を読むな、文章書くなと言われたのがショックで、かえって
反発するようになったと思う。その後に原稿依頼された時にも
わざわざひねくれた文章を書いて、印象を悪くしていった。
けれども、最近、若い芸能人の方々が次々と死に急ぐ姿を見ると
なんでこうもあっさりと命を絶ってしまうのかと虚しくなってくるし
昔、先生が険しい顔をして厳しくおっしゃったのが理解できる。
先生から見て、その当時の私は生きる屍のような無気力な表情で
「生きる」ことに対して前向きではないように見えていたので
目を覚ましなさいと心底から私を思って怒鳴ってくれたのだろう。
でも、その時は気づけなかった。
その時代の自分がどうだったのか、今となっては思い出せない。
ただ小説を読むと影響を受けやすく、ふと沈みがちになることが
あるのを感じてから20代以降は読書から卒業してしまった。
最近、無料で読める「青空文庫」というサイトを見つけて
著作権を失った文学が沢山出ているのを知ったので、
久しぶりに活字に触れてみたら、昔読み漁っていた頃の
面白さが少し甦って楽しかった。
感受性の不安定な高校時代からはもう40年以上も経過したので、
小説の虚構の世界に入り込んで迷い込むこともないだろう
と思うので、たまに暇ができた時に読もうかなと思う。