曲の演奏前には蓋が閉じられている

蓋を開ける時にしっかりと腕を伸ばす

演奏を始める

 

95歳で、今なお海外ツアーの演奏活動を行う

ピアニストのメナヘム・プレスラーさんは

演奏前にステージ上で不思議な儀式を行う。

 

数曲が終わると杖をついて舞台そでに歩いて行き、

しばらくすると舞台に登場する。

その時、必ずピアノの蓋は閉じられていて、

プレスラーさん自身が手を伸ばしてピアノの蓋を

開けて、呼吸を整えてから演奏を始める。

 

さて、これは儀式なのか知恵なのか、、、

 

私も巨匠の儀式をマネして試してみたところ、、

この儀式、合理的に手早く確実に良い音色を生み出す

知恵ではないかと感じた。

 

ピアニストは、各国各地で様々な環境に対応しながら

その場で初めて出会うピアノに馴染まなければならない。

どういう状況であっても同じような一番良い状態で演奏する

ために思いついた重要な段取りが、多くの人の目には

老いた巨匠の演奏前の儀式のように魅了する。

 

私が巨匠のマネをして試してみた感想として、

鍵盤に手を置いた時の腕の抜け加減が良くって

はじめの一音から腕がリラックスしているので

イメージした音がそのまま出てきて驚いた。

またペダルに足がかかった時に、どう踏んでも

濁らない状態が整っていて凄いと思った。

 

今までフォルテッシモの音を出す時のタイミングが

毎度、だいじょうぶか?と思うことがあったけれども

その心配も失敗もなくなった。

 

結局、ピアノ椅子に座った自分とピアノとの距離感が狭まり

肘の曲げが90度に近づくとフォルテッシモが弱くなるけれども

その距離感が広くなり腕の抜けを充分にキープする事ができれば

フォルテッシモはしっかりとした指圧が入れられるので

思いの丈を込めやすく、リラックス状態でたっぷり呼吸できる。

 

ピアノと自分との位置関係の重要さ

私は95歳巨匠ピアニストからそれを学んだ。

どんなベテランのピアノの先生に毎週学んでいても

そんなことまでは教えてくれない。

自分でピアノとの距離感やピアノ椅子の高さの

丁度良いところを探すのは当前だけれども

正しく探し出せていなかった。

その位置関係は良い音色を出す条件としては

結構、重要なことと気づいた。

 

このピアノと自分の位置関係を知ったことは私にとって

今までしっくりといかなかったこと、失敗続きだったことが

全てクリアできるぐらいに凄いことで、この先、

自分がステージに立っても失敗しないで演奏できる

安心を得たぐらいに思えた。