演奏者によって速度にばらつきのある作品で

私自身は6分半ぐらいが心地良く感じるけれども、実際に

ステージで演奏してみるとたっぷり弾きすぎて遅くなりやすい。

 

5分に近づくと少々急ぎ足に聴こえる。

 

 これは8分51秒で、目を閉じて聴くと眠てしまいそうな速度で

1音ずつを確かめすぎると演奏が丁寧になり速度が落ちる。

 

 

生徒さんのレッスンがある日は集中して練習するのが難しい。

今日生徒さんがインフルエンザで休みの時間ができたので

今週火曜~木曜までの3日間で譜読みを完了しておいた。

 

この作品、バラード調でたっぷり演奏するので

演奏は6分半ほどなのに、譜面はたった4ページしかない。

それも16小節~48小節=後半84小節~最後は同じなので

3ページ分の運指を覚え込ませれば良いので負担が少ない。

 

ゆったりな作品ではあるけれども、始まりが遅すぎると

最後まで間延びして修正が利かず、ただ退屈な曲になってしまう。

丁度良い速度というのが難しいけれども、呼吸、間の取り方、

内声の旋律を効果的に浮かびあがらせるなど工夫して

自分の表現を楽しめる作品である。

 

私にとっての、この作品の心地良い仕上がり時間は6分半前後で

5分に近づくとせっかちに、7分に近づくと退屈に感じるようになる。

日頃は6分半くらいで演奏しているのに、脈拍が落ち着かなくなると、

せっかちか退屈のどちらかの演奏に陥りやすい。

一度失敗経験があるので、今回はとにかく速度を綿密に計測して

狂わないようにする。

 

57小節目~63小節 (サビ手前の和音部分)

右手も左手もピアニッシモで和音をおさえるところで、

右手は一番上の音譜の旋律を響かせる。

さて、左手和音をどう扱うと良いかが考えどころで、、、、

一番下のベース音をガイドにするか、それとも

和音全体を響かせるか、試してみたくなるところ。

 

piu lento(さらに遅く)と表示はあるけれども、

あまり意識するとまったりとブレーキがかかりすぎて

次の小節の展開につながらなくなることがある。

嵐の前の静けさのような場面。

 

この直後テンポが戻り、小さな波が押し寄せてくる。

左手から右手に渡らせるアルペジオの中に

サビのメロディが隠れていて、これから何かが

始まるようなミステリアスな感覚に陥り、

泥沼の渦中にいるような気分になる。

 

さらに、もっとドラマティックな展開が待ち受けており

大きな波が押し寄せてきて、大きなうねりの渦にのまれていく。

 

音譜を読みながらサスペンス劇場を妄想しては

崖っぷちに立たされたスリリングな気分を味わって楽しむ。

 

 

このOp118は、ブラームスが亡くなる2年前の1893年

59歳の時に完成してシューマンの妻クララに献呈された作品で

演奏してみると、センチメンタルでせつない想いが伝わってくる。

 

私は、この作品の中のアルペジオは時間を示しているように感じていて、

アルペジオ(旋律)の下に置かれる和音は、ひた隠しのブラームスの感情を

表す暗号のようにみえるから、クララには理解できる何かが隠されている

ような気がしてしまい、音譜を読み解いてみたくなる。

 

何しろ、この作品はブラームスの想いが溢れていて

おもしろい作品だなと感じる。

 

クラシック作品ではあるけれども、ライブハウスなどで

BGMに演奏しても喜ばれそうな曲で、そんな時の

レパートリーに加えておきたい作品。