例外規定適用検討 1兆円越す見通し


政府は20日、東京電力福島第一原発の事故について、原子力事業者による損害賠償を

定めた「原子力損害賠償法(原賠法)」の例外規定を始めて適用し、被害者の損害を国が

賠償する方向で検討に入った。


補償対象は、避難と屋内退避指示が出た住民約22万人のほか、営業に支障が出た企業や

風評被害を受けた農家なども含まれ、政府内には国の賠償総額は1兆円を超えるとの見方が

出ている。


原賠法は原発や核燃料加工施設で起きた事故について、原子力事業者に賠償責任を課している。


ただ「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」による場合は例外として、政府が

「必要な措置を講じる」と定めている。


マグニチュード(M)9.0を記録した東日本大震災による揺れや津波は原発設計上の想定を

越えており、文部科学省や財務省は例外想定を定用せざるを得ないとの判断に傾いた。


本来は東電が行うべき賠償を国が肩代わりすることになる。


東電も賠償責任を免れないとみられるが、国との費用分担は法律上明確ではない。

国による損害賠償の財源には税金の投入が避けられず、東電との分担も焦点になりそうだ。


原賠法に基づく損害賠償は、1999年に起きた茨城県東海村の臨界事故を受けて、

事業者のJOCなどが賠償した例しかなく、例外規定の適用はない。


福島第一原発事故の場合、最終的に必要な賠償額は現時点では不明だが、

東海村の臨界事故の事例では、半径350m以内に避難指示が出て、

賠償総額は約150億円に上った。



2011(H23)年3月21日 中日新聞