2009年4月29日記事再更新




オリバー・ストーン監督  1945年9月15日生まれ


20の質問に、丁寧に答えていた。



世界のできごと



Q1  作品ブッシュ (映画) について、何を描きたかったのか?


ブッシュについて批判が多い。

ブッシュ氏の気持ちになって描いてみた。

彼は自分のやっている行いは正しい、

素晴らしいと感じていたので、どうしようもない。


一部の人はブッシュに同情していた。

彼は自分を見失った、道に迷ってしまったと思った人もいるだろう。


私の場合は、同情というよりは、感情移入といった方が合っている。


彼は2000年~2008年で、私を最も動揺させる大統領だったと思う。

イェール大学で1年一緒だったが、私はその後にベトナムに行った。

ニクソン、ケネディ大統領についても映画を製作してきたが、彼らは

アメリカの象徴的な存在になった過去の大統領だ。


ただ、ブッシュ氏に関しては、今後も娘や孫が語り続ける時代の人物だろう。

今現在も、テロとの戦いは、まだ続いている。


憲法の改正があったが、大統領は「テロとの戦い」という名目があれば、

好き勝手ができるという状況になったわけである。

どんな理由からでも、アメリカ人は逮捕できるようになったのが、

本当に深刻な問題だと思っている。





Q2 オバマ大統領といえば、称賛されて大統領になり、ブッシュ政権からは、

  さまざまな物事を受け継いだが、全体からみての仕事ぶりは?


彼を応援している。 投票もした。

オバマ氏が上院議員時代に初めて会ったが、彼には好感を持った。

まあ、ブッシュ大統領とは違い、彼は分析力があり思考がはっきしとしている。


ただ、落胆する部分もある。

外交政策に関していえば、アフガニスタンについては再考するべきであり、

「テロとの戦い作戦」は、即座にやめるべきである。


不法に、長い間、人々を拘束している。

グアンタナモでもラグラン、カブールでも・・。

100日間で、私が期待したほどのことはできていないと思う。


オバマ氏は、幻想を抱いている。  誰とでも友達になれると・・。

クリントン大統領もそうだったと思う。

とにかく、権限を持っていたら、それを使うということが大事だ。

今、人々からの支持があるのだから。


銀行は、銀行や金融のものではなく、一般の国民達のものである。





Q3  経済の混乱が起きて、人々はオリバー監督作品「1987年、ウォール街

   について語っていたが、あれは予言的だと感じたか?


本当に悲しいことだが、、、  あの映画を作った時も状況が悪かった。

あれから20年も経ったので、何か転換点があったかと思ったのに、

クリントン政権時代に、グリーンスパン議長はバブルを許した。


テクノロジーバブルが住宅バブルになり、いくつものことが繰り返された。

そして状況は悪化しただけだ。グリーンスパン氏は予測するべきだったと思う。

基本的な数学をやったことのある人間であれば、予測のつくことだった。

バブルがはじけてしまうところまで、やってしまったのだ。


企業は生存できるかということだが、公平なマーケットであれば機能するだろう。

自由マーケットでなくだが・・。公平であれば、クリーンでも金儲けはできるだろう。





Q4 民間企業は支持するが、政府は指導力を発揮しなければならないと思うが?


では、「貪欲が善」という考え方は、心配ないか?

AIGなど金儲けをして、色々と逃れている人々がいる。

そうした法の抜け道をいくような悪い連中はいる。

もっと幅広く見なくてはいけない。


オバマ大統領はよくやっているとは思うが、まだ充分ではなく実現していない。

トークショーに出ているような暇はないはずで、とにかく信念を貫き、

民主党の支持を得て、やるべきことを実現しなくてはいけない。

共和党は、助けてはくれないよ。





Q5 ベトナム戦争で、オリバー監督も戦われたが、プラトーン

   どの程度、あなたの個人的な経験を基盤にしているのか?


そうですね、 50%~60%ぐらいかな。

これは戦争に関して、どう感じたかということである。


まるで、自分が自分と闘っているようだった。

左が右なのではないか?といった感じがしていた。


私は、4つの部隊で、3つの戦争部隊にいた。

文化戦争だと感じた。


それは、アメリカでも存在したと思うが、強硬派vs和解派だったわけだ。

ベトナム人と和解し、民間人を殺すのをやめようと思い始めた人もいた。





Q6 実に多くの兵士が戦地で戦うことで心の傷を負っているが、

   あなたも何らかの心の傷を負うことになったか?


ええ、まあ・・。 

政治的な見解が変わったと思う。

戦争をきっかけに、さまざまな政治信条というものが変わる。

私達は、現実を学んだ。


イラクでも、冨を築く者がいた。 汚職まみれの組織や村もあった。

多くの村を破壊したり、爆発物も過度に使っていたし、

また、ナパームも使っており、多くの人を殺害していた。

本当に悲惨な結果を招いたが、しかし、それを阻止することはできなかった。


冷戦が長きに渡って続いたが、ケネディ大統領は、そのことがわかっていたという。




Q7 ケネディ大統領の死については・・?


まあ、それは生まれた時から、全てのことが関係あると思う。


 

世界のできごと



Q8  監督は、コロンビアのジャングルで人質の解放 に尽力したことがあるが、

    それは、どのようなことがあったのか?


今は、チャベス大統領に関するドキュメンタリーを手がけているが、

実際のところ、あの地域の大統領7人にインタビューを試みたが、

全員が、チャベス大統領を支持すると表明している。


アメリカは批判しているが、それも全て撮影している。


マスコミには二重基準があり、衝撃的なまでに間違っていると思う。

そのため、現実の別のバージョンを見せたいと考えている。


コロンビア革命軍 という組織があるが、チャベス大統領は、

決して革命軍を支持したわけではないと思う。


彼は、政府と革命軍との間で交渉を進めようとした。

しかしながら、バイデン副大統領によってテロリスト呼ばわりされた。

そしてオバマ氏も、大統領就任1週間前にチャベス大統領が

テロリストを輸出していると発言したが、それは間違っている。


チャベス氏は、テロになど関心がない。 合法的な人物である。

国民投票のリコールなども起きていたが、すべてルール通りに行動する男だ。

そこは、ブッシュ前大統領とは違っている。





Q9  なぜ、監督は人質の解放に参加したのか?


あれは、見事に調整されたものだった。

チャベス大統領は、人質の両親に説得されて関与することになった。

交渉のすえ、まもなく解放というところまできていた。


私は、コロンビアの村にいたのだ。

赤十字もいたし、アルゼンチンやフランスの監視団も、そこにいた。

すべてうまくいっていたのだ。


ただ、私は・・ こう考えている。

当時のブッシュ大統領がコロンビアの大統領に連絡を取ったのだ。

二人はいい関係にあった。 陰謀があった。


コロンビアの大統領が、それを台無しにしたのだろう。

人質のいる現場に向かおうとしたところに、激しい爆撃があったという。

コロンビア政府は、チャベス大統領に評価を与えたくはなかったのだろう。


チャベス氏が人質を救ったという印象を持たれたくはなかった。

2週間後ぐらいには、人質は解放された。


コロンビア政府側は、チャベス大統領がこの件で評価されることは

回避したいと考えたことは確かである。


チャベス大統領が、平和の使者であることは確かだと思う。





Q10 映画制作者として、この世界での生き残りには何が重要でしょうか?


精神性というものが大切でしょう。

内面からのエネルギー、知恵というものが出てくる。


時間がかかるものである。人生で実験そのものである。





Q11 監督はNY大学で、マーティン・スコセッシ氏 から何を学んだか?


マーティン氏は、当時、まだ20代でエネルギッシュな若者だったよ。長髪だった。

クレイジーな映画をテレビを見ていた。当時は、まだビデオがなかったのでね。


その情熱を、私達に与えてくれた。





Q12 あなたのスタイルについて、派手ですね。様々のことが同時進行している。

   それが長年に渡り、どう移り変わってきたと感じるか?


私の本質そのものではないかと思っている。

「天と地」のような、穏やかな作品も手がけているので映画次第だろう。


ケネディ大統領の暗殺だったら、もう一度、考え直してもらいたい。

同じところから、別の視点から見てもらいたい。それがカギだと思う。





Q13  「ブッシュ」は、香港のグループが資金を提供しているが、

     なぜ、アジアに資金提供を求めたのか?


私ではなく、プロデューサーが資金があると話していた。

海外で私の作品が公開されている。


香港のおかげだ。香港なくして、この作品は作れなかっただろう。





Q14  アジアの映画産業は、どのように評価できるか?


中国がこれから変遷していくのではないだろうか。

多くの劇場ができており、デジタル技術も進化している。


30000スクリーンほど提供することができると・・。

人口が多いので、多くの劇場を提供することができるだろう。


私は映画は映画館で観るべきものだと考えている。

すべてDVD、コンピュータで見るべきではないと考えている。





Q15 なぜ、マスコミを怖がっている?


これまで、マスコミに批判され続けた。すっかり打ちのめされた

大丈夫だが・・

今、2つのドキュメンタリー作品に取り組んでいる。


1つは、チャベス大統領について。

そして、もう1本は歴史について描いている。


まだ伝えられていない歴史について。

同じような事実関係を把握しながら、別の視点から伝えようとしている。

考えさせようとしているが、2年前から取り組んでいるものだ。


子供たちの為に何かを残したいと思っているが、このようなドキュメンタリーで

変えられる。アメリカの歴史を学ぶことができるのではないかと考えている。



世界のできごと




Q16  あなたの全ての作品では麻薬が使われている。監督自身も麻薬体験がある。

    映画産業に入った際に、コカインの問題があった。

    しかしながらスカーフェイス の脚本で克服したが、その当時を振り返ってどうか?


今の若い世代と、昔では、麻薬に対する考え方も違うと思うが、

私は、1960年代までは麻薬などに手を出したことがなかった。


いつのまにか、大麻などに手を出していた。

ジミ・ヘンドリックス ビートルズ ジム・モリソン などの音楽を

手がけていたし、 ベトナム戦争にも行っていた。


兵士の半分くらいは、このようなことに手を出していた。

その多くは黒人だった。  また別のカルチャーも学んだ。

プラトーンの作品の中でも、それを描いたことがある。


私には、大麻をしている人の方が人間的に思えた。

一概には言えないが、酒を飲む人の方が人を殺しているだった。

そういったように、長所短所があったと思う。


コカインは、本当に悲惨だった。


スカーフェイスを手がけたときに、はっきりと伝えた。

スカーフェイスで、はっきりと克服することができたが、

そのあたりでは、さまざまな問題はあった。


でも、つまるところ・・・・・今は、こういう結果だ。

バランスが取れた。

常に考えたのだ。


法律というのは、愚かに思える。 

少し変かもしれないが・・


( 戦争で人を殺そうと思ったら、麻薬や酒にでも溺れなくちゃ

  やってられないというようにも聞こえた。)




Q17  ドアーズ が公開されたが、作品が批判されている。

     ドアーズのキーボード奏者マンザレクなども批判しているが?

     最初から、批判されるとわかっていたのか?


いや、まさか批判されるとは思っていなかった。

あの映画、いい映画だったよと、今でも言われている。


私は、あの時代をとらえたと思っている。

そもそも、マンザレクは最初から問題があったのだ。

というのも、私は彼のアイディアを採用しなかったからだ。


だから、彼は、最初から私を恨んでいるのだろう。

もちろん、言う権利はあると思っている。


しかし、他の元メンバーであるロビー・クリーガーや、

ジョン・デンスモアなどにも参加してもらった。

そして、きちんと裏づけを取っていた。




Q18  主演のヴァル・キルマー はどうだったか?


当時がひどかったよ。でも、最近は、まともになってきたね。

アレキサンダーも参加させた。


バル・キルマーには、180度の転換をさせたが、

あの時は、怪物のようで大変だったよ。




Q19 JFK によって、論争が起きるとわかっていたはずですよね?


そんなことはない。

私は、このような法令委員会の偽善を明らかにしたので、

感謝されるかと思っていたんだ。


私は、その頃はまだ若かったので、体制というものを

あまりよくは理解していなかった。


でも、新聞社を支配しているんだよ。

たとえば、ワシントンポストやニューヨークタイムズなんかもそうだ。

多くのテレビ局も支配しているし、だから戦ったよ。


私たちは、作品のために徹底的にリサーチを行った。

私は、実に多くの証人たちに話を聞いた。


実際に話を聞いてみたし、現場にも行った。

事件の時の現場にもいた。FBIの事情聴取も受けた。

でっちあげたものではない裏づけのあるものと考えている。


結局、オズワルドには無理だったと思う。




Q20  監督は、常に論争を巻き起こしたいと考えているのか?


いや、そんなことはない。

いつも笑顔を浮かべているよ。


怒りばかりでは、何も成し遂げられない。

できるだけ、怒りをコントロールするべきであり、

建設的な目的で使うべきだよ。


2009.4.29