米CIA秘密収容所があったとされる国々(世界の国際機関や人権団体調べ)

タイ、アフガニスタン、ヨルダン、ルーマニア、リトアニア、ポーランド、モロッコ


CIA秘密収容所問題

2001年の米中枢同時テロ後、CIAは世界各地の秘密収容所にテロ容疑者として

外国人を拘束し、水責めなどの拷問を伴う「過酷な尋問」を行った。

06年に当時のブッシュ米大統領が存在を認め、07年には欧州会議の法律問題・

人権委員会がポーランドやルーマニアに存在したとする報告書をまとめたが、

米政府は所在地など詳細をいっさい明らかにしていない。


秘密収容所  遠い解明

オバマ米大統領は2009年1月の就任直後、ブッシュ政権下で米中央情報局(CIA)

が「テロ容疑者」に拷問を行っていた秘密収容所を廃止した。同時に、秘密収容所の

収容者を移送したキューバ・グアンタナモ米海軍基地内施設の1年以内の閉鎖を

約束したが、就任2年を過ぎても閉鎖のめどは立たず、過去の秘密収容所の

実態解明も進まない。

主要施策の公約違反は来年の大統領選挙に向けた大きな不安材料となりそうだ。



移送先 グアンタナモ閉鎖難航

■中枢

ポーランドの検察当局が捜査を進める同国内のCIA元秘密収容所には、02年3月に

パキスタンで捕まったパレスチナ人、アブ・ブベイダ収容者が拘束されていた。


弁護人のマルグリース氏(50)は本紙の取材に「彼の尋問方法をめぐっては、

ホワイトハウスで(大統領が関与する)議論になった」と説明。

米政府にとって同収容者が”重要容疑者”であったことを指摘した。


ブッシュ前大統領は昨年秋に出版した回想録「決断のとき」の中で同収容者に言及。

拘束当日に当時のテネットCIA長官から報告を受け、その後自ら「水責め」など

「過酷な尋問手法」を指示したと明かしている。


サウジアラビア生まれのアブ・ズベイダ収容者を、国際テロ組織アルカイダを率いる

ビンラディン容疑者の「側近中の側近」とみなしていたからだ、


CIA監察局が04年にまとめ、09年に公開された内部調査報告書は、塗りつぶされた

部分が多く、収容場所さえ不明だが、02年8月、少なくとも83回の水責めを同収容者に

行ったと記していた。


しかし、今ではテロ行為への関与はなかったとみられており、追訴されないままに

グアンタナモでの長期拘束が続く。



■偽装

秘密収容所について米政府は具体的な情報を明かさず、所在地などの実態は闇の中だ。

ただ、ポーランド当局は「ヘルシンキ人権財団」あての書簡で、CIA関係とみられる企業が

運行して02年12月5日にポーランド北東部に到着した航空機について着陸時は

乗員4人、乗客8人が搭乗していたが、離陸時は乗員4人のみだったと確認。

同容疑者が同国内の秘密収容所に移送された有力な裏付けとなった。

もっとも飛行ルートの正確な割り出しには大きな困難が伴う。


欧州会議の法律問題・人権委員会の報告は「CIA機の飛行データは追跡ができぬよう

意図的に偽装が行われている」と強調。同収容者の弁護団も「同機は同年12月4日、

関西空港に着陸したが、飛行計画では成田着と虚偽記載されていた」と明かした。


■取引

国際機関や人権団体などが、CIA秘密収容所の所在地と指摘してきたのは、

ポーランド、ルーマニア、リトアニア、モロッコ、タイなど。

旧東欧諸国などが目立つが、マルグリース氏は「西欧諸国に比べ、『法の支配』が

厳しくなく、長く秘密を保てるという期待が米国側にあったのではないか」とみる。


もちろん、相手国は「見返り」として米国からの何らかの支援を当てにしたはずだ。

同じ手法は、オバマ政権の外交にも見え隠れする。内部告発サイト「ウィキリークス」

が、昨年11月に公開した米外交公電には、グアンタナモ閉鎖に向け収容所の移送を

進めるため、オバマ政権がスロベニアに、首脳会談の開催と引きかえに収容者

受け入れを求めた経緯が記されていた。


一方で、拷問を容認した前政権高官らに対する責任追及も停滞したままだ。


アブ・ズベイダ収容者の欧州の弁護人、コスタス氏は言う。

「ブッシュ政権と世界中の同調者が『拷問廃絶への闘い』を10年後退させたが、

今度はオバマ政権とその仲間が『(責任)不問』の時代をもたらそうとしている」


2011年(H23年)1月31日中日新聞 嶋田昭浩記者


-----------------------------------------------------------------------


2008年12月にオバマ氏は大統領に就任してから、最初にグアンタナモ収容所の

閉鎖に言及し、2009年4月頃から前ブッシュ政権の行ってきた拷問の事実について

発表しはじめた時期がある。


同年4月にブッシュ前政権を拷問容疑で刑事追訴すると発表したが、その1カ月後には

トーンダウンしてしまい、今となっては、そんな話もあったかと忘れられるほどの程度の

ものになってしまった。


私も2009年4月23日にそれを記事にしたが、その時かぎりである。


ブッシュ政権下において、CIAは拷問や暗殺などが許されていたかといえば、

予算の問題もあり議会で案が通過しなければ、それ以上の行為を行っては

行けないことになっており、過剰な行為そのものは議会で容認するはずもなく、

ブッシュ前大統領の決断ではなく、チェイニー前副大統領の独断で行われて

いたのではないかと疑惑があがっていた。


最近でも、当時、チェイニー副大統領の補佐をしていた数名の部下が

チェイニー氏に裏切られたと怒りをあらわにCNNのザ・シチュエーション

ルームで告白していた姿を見たことがある。


ブッシュ前大統領は、著書の中で自分の権限で行ったと書いていたというが

それを信じる側近はどれほどいるのか。ブッシュ前大統領不在の場所で

大きな決断は行われてきたというのが大方の見方になっている。


そして、チェイニー大統領はCIAではなくCIAの委託した民間人が行った行為

として、政府もCIAも関与していないと否定している。




2009年4月23日記事(再)

ブッシュ前政権拷問容認で刑事訴追の可能性

ブッシュ前政権で、苛酷な拷問を容認した責任者に対して刑事責任を問う可能性が出てきた。

実際に尋問、拷問に関わった人々に対しては法的な承認を得ているので訴追しないとしている。


拷問に関する機密文書の見直し作業を行ううちに、オバマ大統領は刑事訴追をしなければ

ならない状況に追い込まれたらしい。情報公開法という法にのっとり公開義務が生じたのだ。


この機密文書は、いかに法律を破るかのマニュアルであった。


刑事裁判によって、今後、どのように尋問したのか、その経緯が明かされることになるが、

拷問などを行っていたのはCIAではなかったようだ。CIAが尋問を委託した民間人だったという。

ということで、訴追の可能性があるのはCIAではなく、CIAの委託した民間人になる。


2006年、2007年の頃に、上院情報委員会の中で、議員は、軍の規則に基づいて

尋問を行うようにと法案に署名をしたが、ブッシュ大統領によって拒否されたという。

その時に、民間に尋問を委託するということになったようだが、議員達は、

それに反対するものが多かった。


拷問などの行為については、内容が詳しく明かされることなく、多くの政府関係者が

知らないところで行われていたようだ。


チェイニー前副大統領は、拷問により得られた情報によって、アメリカの多くの国民は

テロから免れることができたので、成果があがったと反論している。


また、拷問によるメリットも機密メモの中にはあったはずなので、民主党にとって都合の良い

部分だけど公表するのではなく、そういったメリットなども公表するべきだと要請している。