2009.6.22

  ヘンリー・キッシンジャー
世界のできごと

世界のできごと



このところの不安定な北朝鮮の動きについて、ヘンリー・キッシンジャー米元国務長官 が、

アメリカをはじめ、各国がどう対応するのが好ましいのか見解を示した。


北朝鮮の今以上の核武装でアメリカが最も恐れているのは、

どうやら北朝鮮に対してではなさそうだ。

日本の核武装、軍事的解決に走ることが危険と感じているようだ。


北朝鮮のそれを認めることは、韓国や日本に核を保有させることになり、

核武装することにつがなる。それを最も懸念している。

経済力のある日本の暴走を、最も恐れているということかもしれない。


面白いのは、5番目の設問だ。

アメリカは圧力をかけすぎず、北朝鮮の政権が権力が弱くなった時を狙い

転覆させようとしているとも思えるような発言をしている。

アメリカの真意が読み取れる。

1.北朝鮮の地下核実験についてどう思うか?

これ以上、核兵器を持ち続けようとするならば、政権自体が崩壊してしまうかもしれない。

北東アジア全体にとっての大きな問題だ。これは大きな勢力図の変化になっていくだろうが

中国にとって、最大の関心事であるはずだ。




2.外交的な努力で核兵器の放棄を求めているが、今以上の核兵器を持ってしまったら

  国が崩壊するということか?

そうですね。

この政権の大きな成功は、核開発を宣伝できるということだろう。




3.一方で、北朝鮮の人々は、想像できないような貧困生活を送っている。

  それでも、核武装を認めるようにと北朝鮮は求めているが、核拡散にとって

  大きな懸念材料になってうえに、難民問題など、さまざまな問題を抱えていると思うが?


国際情勢に関わっている者ならわかると思うが、この国が核兵器の開発をすることは、

こういう不拡散の条約の中でできない国に対して、あまりにも影響が大きすぎる。




4.中国が懸念していることは、圧力をかけすぎて北朝鮮国家が崩壊し難民を大量に

  出してしまうことだ。また、その他の国に核の拡散がが起きてしまうことなどが

  考えられるが、北朝鮮に圧力をかけるのは正しいことなのか?


圧力をかけるだけでは効果を生まない。

韓国や日本までに核が渡り、核の保有国が増えてしまう。

これは、良い方向であるとは、決していえない。


アメリカと中国、ロシア、韓国なども加わって充分な事前調整を行い、

北東アジアの安全保障会議を行って解決するべきだと思う。


北朝鮮に対して核放棄を求めて努力していくことが大切である。

そして、北朝鮮はアメリカ軍の攻撃を恐れなくても良いと

そういったことを納得させなくてはいけない。




5.中国に対して北朝鮮に圧力を与えるようにと求める声が高まっているが、

  日本や韓国は、安全保障上の何らかのアレンジをするべきではないかと

  言っているが、これは交渉する必要があるのか?

  北朝鮮に対する圧力が足りなければ、日本や韓国は核武装することになって

  いくのか?


裏では、このトップの権力が強ければ崩壊は免れるかもしれないが、そうさせないための

慎重なアプローチが必要になってくるだろう。 私の分析によれば、その方向が良さそうだ。




6.中国から見て、北朝鮮への見方は変わってきていると思うか?

  世界を介しての中国の見方だが、長期的な利益を考えれば、中国が北朝鮮の問題を

解決しなければならないことは変わらない。

包括的な戦略的な考え方で物事を進めていくべきだと思うが、まずは情勢を冷却化する

ことが、中国にとっての第一の役割だろう。




7.その利益は他の国々とも共通のものなのか?
北東アジアの平和と安定が保たれるという点においては、利益は共通のものであるといえる。

核の不拡散を守るという事。北朝鮮は非常に好戦的な国なので、そういった目標を忘れずに

中国は影響力を活かしていくべきであり、国際社会は、こういった試練の挑戦を受けるなかで、

冷静に対処するべきではないか。




8.中国は、これまでのところ内向きな見方をしているが、国際社会の中で、

  広範な責任を持っていると気づいているといえるのか?
  アメリカの安全保障にフリーライドしようとしている。自分達で安全保障をしないと、

  とても劇的な政策上の主導権を持っているとは言いがたいようだが?


どこででも同時に安全保障の責任をもっていこうというのは、アメリカ特有の考え方である。

中国にとっては、それが大きな利益をもたらさないだろう。中国は、戦略的には世界の隅々に

進出しているが・・・。


今回のことは、国境で起きている問題なので、中国は関与せざるを得ないのだろう。




9.ワシントンポストのB氏は、アメリカと中国の利益は相反すると言っているが?

B氏は、中国や北朝鮮を民主化しようと、あまりにも誇大に考えすぎているのであろう。

中国に対して強硬派に出ようとでも考えているのではないか。




10.北朝鮮は、アメリカと中国を対立させるために、アメリカを引き出したいのでは

   ないかと見ている人たちもいるようだが?


中国と対立することは、アメリカの戦略とは言えないと思う。

また、川を挟んで中国と北朝鮮が対立することもなければ、

北朝鮮がアメリカに協力することも考えていないだろう。


もしアメリカが北朝鮮をパラダイスにしようと望んだら、韓国や日本は

どう思うかということである。そういったことは、頭に浮かぶことはない。


中国と北朝鮮との国境沿いについては、今後10年間でアメリカと中国の関係が発展し

そちらの情勢もかわってくるだろう。もちろん、どのような国でもアジアを支配する者は

あまりにも強大な試練に直面するだろう。


北朝鮮は、アメリカを引き出したいと考えている。中国との同盟関係は冷たいと

感じている。それで、二カ国交渉の席に米国務長官や特使を引き出したいと

考えているのであれば、北朝鮮は考え違いをしている。




11.ロシアとの関係もあるが?

   ロシアとアメリカが協力的な関係を持つにはどうしたら良いのか?

   ヒラリー国務長官がロシアに働きかけを行い努力をしているが、これまでの

   ところ、それほどの成果はないようだが、どのようにロシアを引き出すことが

   できるのか?


国のアイデンティティーを歴史的にみると、どのように築いてきたのか

がポイントになるだろう。その活動は、現在もまだ継続している。


この20年間で、ロシアは300年の歴史を失った。

ロシアは攻撃的な面もあり、一方で不安定な面もある。

従って、ロシアは歴史によって、時にはおぼつかない足取りで

アメリカとの良いバートナーシップを築こうと努力してきたと思う。




12.しかし、今回のことで協力をして手を携えていくことはできるのか?

ロシアと一緒にやっていくためには、ロシアの複雑な部分を理解しなくてはいけない。

プーチン首相、メドベージェフ大統領、オバマ大統領のロンドンでの様子をみた限りの

印象ではパートナーシップを組んでいくことは可能であると感じた。


表面には見えてこないかもしれないが、北朝鮮問題は中国が試されており、

イランの問題はアメリカが試されていると考えている。



日本が核保有すれば、世界でもっとも危険な国家としてみなされることは間違さそうだ。


2009.6.1